11月8日の皆既月食・天王星食(掩蔽)

11月8日は好天に恵まれた所が多かった様で、Twitterやブログなどには美しい月食の画像や天王星食の様子が数多くアップされていました。もちろん私も撮影を行い、撮影したserファイル数は70、容量は120GBになりました。
さっさと処理したいとは思っていましたがなかなか手が付かず、やっと先日処理が一通り終わりました。といっても、全データの半分程度が終わっただけすが、一旦ここでブログにまとめておこうと思います。

準備

昨年の月食は、EVOGUIDE 50ED+バロー+ASI533MCPで撮影しました。この構成だと月全体がちょうどいい大きさに写ります。今回は天王星食もあるので、これに加えて、眼視や天王星食のクローズアップ撮影もやりたいと思っていました。そこで、以下の構成で臨みました。

  • 月全体の撮影: EVOGUIDE 50ED+2.5xバロー+フラットナー, ASI533MCP, スカイメモS
  • 眼視&クローズアップ撮影: MAK127(+フリップミラー), ASI224MC, AZ-GTi

こう書くと不足しているものは無いように見えますが、実は三脚を1つしか持っていません。以前からDSOと惑星の撮影を並行して行いたいと思って目を付けていた三脚があったので、これを機会に購入しました。

これでやっと2台展開ができる様になりました。

あとは場所です。月食の開始時点では月は東の空で高度も低いので、自宅ベランダからでは建物に隠れて見えません。見え始めるのは18:50頃からなので、既にだいぶ欠けた状態です。マンションの屋上に行けば何とか最初から見えなくもないのですが、屋上だと色々制約もあり2台分の機材となるとちょっと難しい状況です。今回は2台体制を優先し、最初の約40分は諦めてベランダで観測・撮影を行うことにしました。

MAK127とASI224MC, AZ-GTiの組み合わせは、いつも惑星を撮影しているので事前準備な特に不要です。EVOGUIDE 50EDとASI533MCP, スカイメモS もDSO撮影でいつも使っていますが、今回は時間が早いので極軸合わせを当日行うのは難しそうです。そこで、前日までに一度極軸を合わせておいて、当日は三脚の位置を同じところにすることで対応しました。
あと、天体の高度が高すぎると上の階のベランダに遮られてしまうので、この極軸合わせの際に月食終了まで月が見える三脚の高さを確認して、スカイメモS用の三脚は固定したまま保管しておきました。

当日の観測・撮影

月食が始まる直前の18:00頃に一旦機材をベランダに出しておいて鏡筒の温度を馴らしておき、既に月食が始まっている18:30頃から機材を設営、予測通り18:50頃から欠けた月が見えてきたので、さっそく観測&撮影の開始です。

18:53:38に撮影した画像が以下になります。

EVOGUIDE 50ED+2.5xバロー+フラットナー, ASI533MCP, UV/IR cut, スカイメモS
ROI 2256x 2256, Gain 250, 露出 7.8ms, 220フレームを50%スタック
AutoStakkert3, AstroSurface, GIMP で処理

昨年の月食は撮影のみでしたが、今回はMAK127で眼視もできたのが非常に良かったです。欠け際や影の部分だけでなく、明るい部分も飽和せずに全部がはっきりと見えます。やはり、目と脳の処理に勝てる撮像系はないと思います。色も思ったより豊富で、見ていて飽きません。

そして、19:17頃に皆既食の状態になりました。以下は19:17:10に撮影したものです。

EVOGUIDE 50ED+2.5xバロー+フラットナー, ASI533MCP, UV/IR cut, スカイメモS
ROI 2256x 2256, Gain 400, 露出 250ms, 50フレームを100%スタック

眼視ではもっと色が複雑だった様な気がします。画像だと色数が減っている感じがしますね。

このあと、食の最大頃の画像を撮ろうと思っていましたが、時間をちゃんと覚えてなかったので適当に19:54:41と20:08:11に撮影していました。前者はなぜか20フレームと少なかったので、20:08のものを掲載します。

EVOGUIDE 50ED+2.5xバロー+フラットナー, ASI533MCP, UV/IR cut, スカイメモS
ROI 3008 x 2256, Gain 400, 露出 500ms, 41フレームを100%スタック

眼視だともう少し暗い感じでしたが、綺麗な色なので少し明るめに仕上げてみました。また、天王星も近づいてきたので、ROIを3008x2256の横長にしました。

そして、皆既終了頃(20:42:15撮影)の画像です。

EVOGUIDE 50ED+2.5xバロー+フラットナー, ASI533MCP, UV/IR cut, スカイメモS
ROI 2256x 2256, Gain 350, 露出 300ms, 62フレームを100%スタック

天王星

Stellariumで見ると天王星食の開始は20:39:22頃です。ただ、後になって気付いたのですが、Stellariumで通常表示していると星は等級に応じて多少大きめに表示されているので少し早い時間になってしまいます。

左の画像だと天王星が隠れ始めている様に見えますが、天王星の大きさが分かるまでに拡大してみると(右画像)まだ隠れる前だという事が分かります。実際は20:39:43頃で20秒ほどしか違いませんが、これが出現の時のちょっとした失敗につながりました。

それは一旦置いておいて、まずは動画ご覧ください。前半の15秒くらいが潜入、以降が出現で、倍速にしてあります。

MAK127, ASI224MC, UV/IR cut, AZ-GTi
潜入: Gain 300, 露出 200ms, 20:39:37~20:40:06, 148frames
出現: Gain 350, 露出 100ms, 21:22:30~21:23:04, 170frames
SER player で色調調整を行いAVI出力、XMediaRecodeでMP4変換

月面が非常に暗かったので、天王星が少し露出オーバーになる位で撮影しました。それでも月面が暗かったので若干ガンマを変えて暗い部分を持ち上げたので、天王星の色が薄くなってしまいました。

出現の部分ですが、画面が大きく動いてしまい天王星の位置がだいぶ端になっています。さらには途中少しボケる場面も…
この原因の1つが前述の20秒の差です。この撮影はMAK127で行っていて眼視も並行して行っていたので、潜入時の天王星の位置をAZ-GTiで追いかけているわけではありません。出現前は眼視した際に月全体が見える状態でしかも月追尾なので、出現時刻が近づいたところでカメラに切り替え、Stellariumの画像を頼りに構図を決めます。ただ、天王星を画面中心にすると、月の影になってない部分も画面に入ってしまうので、そうならない様に天王星が画面の少し下側になる様にしていました。

そして、21:22には見え始めると思って21:21ちょい前から撮影開始したのですが、21:22を過ぎても天王星が姿を現しません。数秒の誤差はあると思っていましたが10数秒過ぎても出てこないので、場所を間違えたと思って位置を動かしてしまったのです。結局殆ど間違ってなかったのですが、ちょうど出現する前後で大きく画面が揺れてしまいました。更に運悪くそのタイミングで妻がベランダに出てきたため、振動と室内の温かい空気が外に出てきたことにより数秒間大きくボケてしまったという訳です。
とはいえ、なんとか出現の様子も撮れているし、出現直後の様子を妻にも眼視でみてもらって非常に喜んでくれたのでヨシとします。こういうハプニングも良い思い出ですね。

ちなみに、serファイルのタイムスタンプとStellariumの時刻を見比べてみましたが、誤差は3秒未満の様です。PCの時刻の誤差や画像のボケなどで境界が多少分かり難いなどもあるので、どこまで誤差と言えるか分かりませんが、かなり正確だと思いました。

あと、動画をスタックした画像も掲載しておきます。

スタックした画像ですが、潜入の画像に関しては無理やり暗い部分を炙り出したら天王星の衛星が見えました。かなり粗い画像で枚数も少ないですが、動画にしてみたのでこちらもご覧ください。

月食の終わり

部分食が終わってまだ半影食の時間帯だと思いますが、最後にMAK127とASI533MCPの組み合わせで4枚モザイク合成した満月を撮影しました。

22:35:57~22:38:19 に撮影: MAK127, ASI533MCP, UV/IR cut, AZ-GTi
Gain 100, 露出 4ms, 300フレームを50%スタック ×4枚をモザイク合成
AutoStakkert3, AstroSurface, 自作ソフト, GIMP で処理

太陽と地球(光源と観察地点)がほぼ同じ位置なので、月面上に影が全くない画像になるだろうと思って撮ったのですが、日ごろ良く見ているブログに半影食中でも既に影が分かるという記述がありました。
その記事を読んだときはまだ処理してなかったので早速処理してみると、確かに右側にクレーターの影がありました。ほんの少しずれただけで影が出来るんですね。ちょっと驚きでした。

最後に、現時点で26枚ほど処理した月食画像を動画にしてみたのでご覧ください。なお、撮影時刻は等間隔ではありません。

まとめ

今回の皆既月食は、天文に復帰して初めてちゃんと見ることが出来た月食でした。昨年の5月26日は曇って部分月食状態を数分見られただけで、昨年11月19日は皆既月食ではありませんでしたが、この日も前半は雲何度も通り過ぎてピントがちゃんと合わせられないままの撮影でした。

それらからすると、今回は天気も申し分なく撮影もまともにできました。もちろん全てがうまく行った訳ではなく、長くなるので記載しなかった失敗も多々あります。それは後日記事にするとして、今回は眼視も行えて画像では分からなかった色彩豊かな月食を見ることができました。また、何といっても天王星掩蔽を見ることが出来て、非常に楽しい月食でした。

その分たくさん撮影してしまったので、つい2か月前に買った2TBの外付けHDDが残り112GBになってしまいました。まだ処理してない画像も(今回の月食だけでなく先月撮影した惑星画像も)あるので、早めに処理してデータ整理しないと今後の撮影に差し支えるのですが、暫くは今回の月食天王星食の余韻に浸っておきたい気分です(正確に言うと単に面倒なだけです)。いっそのことHDDを増設しようかな!?