Sky-Watcher EVOGUIDE 50EDのフラットナーをプチ改造

ここ1ケ月ほどは天候が今一つで、天気が良い日に限って仕事疲れていたり所用が入ったりという状況でした。そのため前回・前々回と記事にした様に、天文活動としては月食の処理をやっていました。処理と言ってもプログラムを組んでいた時間が長く若干飽きてきたこともあり、趣向を変えて主題のフラットナーに少し手を加えたので、今回はその内容について記載します。

EVOGUIDE 50ED+フラットナーの構成はフィルターの設置場所に悩む

フラットナー購入以前はASI224MCで撮影していて、1/3”という小型センサーなのでフラットナー不要で1.25″のノーズピース先端にフィルターを付けていました。

M51(左)、M65, M66, NGC3628(右):2020/1/6 @実家(鹿児島)
EVOGUIDE 50ED, ASI224MC, UV/IR-Cut, AZ-GTi, Gain=420, Exp=10s
左:撮影時刻 5:15, 30frameのライブスタック画像×4をDSSでスタック
右:撮影時刻 5:58, 30frameのライブスタック画像×3をDSSでスタック
Starnet++, GIMP で処理

その後、2020年8月にASI533MCPを購入。EVOGUIDE 50EDと組み合わせてみると、周辺の星像が大きく崩れフラットナーが必須となりました。しかし、当時はまだフラットナーが発売されておらず、2か月ほど経った頃発売となり即購入しました。

M33:2020/8/29 1:01撮影 @自宅近くの公園
EVOGUIDE 50ED, ASI533MCP, UV/IR-Cut, AZ-GTi
Gain=300, Temp=-5℃, Exp=40s
10frameのライブスタック画像×3をDSSでスタック、GIMP で処理

そしてフラットナーを購入したあと、フィルターの設置場所で少し悩むことになります。

このフラットナーの推奨バックフォーカスは17.5mmです。一方、ASI533MCPのフランジバックは6.5mmで11mmのT2アダプターを付けると17.5mmとなり、フラットナーのバックフォーカスと一致します。そのため、フラットナーとカメラの間にフィルターを入れるとバックフォーカスが合いません。17.5mmは“推奨”なので多少の誤差は大丈夫かもしれませんが、せっかく推奨値で接続できているので敢えてこの場所にフィルターを入れるのも考え物です。
またフラットナー購入当時は、OPTOLONGのUHCフィルターとUV/IRカットを重ねてQBPフィルター代わりに使っており、被写体によってはUV/IRカットのみでも撮影するため、フィルターワークに伴いバックフォーカスも変わる状況なのでこの位置にフィルターを入れるのは避けていました。

で、どこに入れていたかというと、フラットナーの前玉の前です。前玉の枠の内径が1.25″フィルターのネジ径よりやや大きいので、枠の内側に厚紙を貼り付け、そこにフィルターをねじ込んでいました。以下がその写真です。

材料は紙ですが、UV/IRカットフィルターを付けた右の写真を見てもらうと、ちゃんとねじ込めていることが分かると思います。そして、多少のことでは外れません。

ところが、2021年の冬にレナード彗星撮影のためCBPを購入(一緒にQBPも購入)して状況が変わりました。今までのフィルターとネジの規格が違うため、ちゃんとねじ込めなかったのです。以下の左の写真はCBPフィルターを無理やりねじ込んで斜めになった状態です。右の写真は分かりやすい様にM42-1.25″変換アダプターにUV/IRカットとCBPを付けた時の比較で、CBPが最後までねじ込めてないのが分かると思います。

写真左の様に斜めになるだけでなく、ねじ込み量が少なく時々鏡筒の中にフィルターが落ちることもあったので、対策としてPlayerOneの 1.25″延長筒を購入し、以下の様にEVOGUIDE 50ED本体の後部(フラットナーの前)にフィルター+延長筒を差し込み固定して使ってみました。

つい先日シュミットさんのブログに掲載された方法ですね。フィルター位置がかなり前側になりますが、ブログにもある様にASI533MPCでは周辺のケラレは特に気になりませんでした。

数か月これで使っていましたが、また元のフラットナー前面に戻すことになります。
というのも、一晩に複数の被写体を撮影することも多く、その際フィルターを交換することがあります。ちょうど冬だったため、寒いベランダで作業するにはこの方法だと手数が多く、元のやり方の方が楽だったというのが理由です。
ただ、前述の様にQBPやCBPが少ししかねじ込めないので、仕方なくレンズ枠に張り付けた紙を薄く剥がしてちゃんとねじ込めるようにしました。QBPとCBPの使用頻度が高かったのでそうしたのですが、そうすると今度はUV/IRカットに対しては緩くなってしまい、こちらが鏡筒の中に落ちることが度々ありました。

今回の改造

前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。
上記の状態で1年ほどだましだまし使っていましたが、ここの所の天候不順で時間も出来たため、思い切って改造に踏み切りました。やったことは単純で、1.25″延長筒の先端を切り出して今まで紙を貼っていた場所に貼り付けただけです。…と、一文で書くと簡単ですが、十分な工具を持ってない私にとっては完成までに3日をかけた大仕事でした。

作業中の写真を撮っておけばよかったのですが、なかなか疲れる作業でそんな余裕はありませんでした。そのため絵で補足します。

上図左の切断は金ノコで30分以上かかりました。延長筒を固定する手段がなく手で押さえて切ったので、金ノコを持っている手だけでなく押さえている手もかなり疲れました。
そして一番大変だったのが削りです。ヤスリで削ったのですが思った以上の削り量(1mm弱)で、これに3日ほどかかりました。3日と言っても、こちらも切り出した延長筒を固定している手にもかなり負担がかかるので1日に40~50分くらいしか作業できず、かけた時間はトータル2時間ちょっとです。参考ですが、残った延長筒は短くなったもののまだ使えます(上図右)。

そして、出来上がりの写真が以下になります。

切り取った延長筒とフラットナー前玉の枠は、エポキシ系の接着剤で固定しています。写真右の様にQBPやCBP(写真はCBP)は途中までしかねじ込めませんが簡単には外れません。勿論、UV/IRカットはちゃんと根元までねじ込めます。

出来上がってみると、元からこんな構造であったかの様な出来栄えで(自画自賛)、アルミの粉まみれになった甲斐がありました。最初から前玉の枠の内側に1.25″のネジを組み込んでくれれば良いのに.. とも思うのですが、きっともう少し大きいセンサーを使う場合はケラレてしまうのでしょうね。

フラットナーのバックフォーカス最適化

以前の記事で、周辺の星像改善のためバックフォーカスを幾つか変えて様子を見るという事を書きました。

r77-maabow.hatenablog.com

この記事以降特にこの件については触れてなかったので、ついでという訳ではありませんが今回の記事に書いておきます。

以下の画像は、昨年8月から10月にかけて撮影したもので、バックフォーカスはそれぞれ推奨の17.5mm、+0.5mm、+1mm、+2mm、+2.5mm、+3mmです。

被写体が同じではないので少し見づらいですが、最後の+3mmが一番良い様です。よく見ると右側の星像がまだ少し放射状に伸びている様に見えるので、もう少し遠ざけても良いのかもしれません。しかし、これ以上はスペーサなどでは調整できず、延長筒では長すぎるという領域になるので、+3mmで運用することにしました。

+3mmとなる構成は以下の通りです。

最適なバックフォーカスを決めるまで2か月ほどかかりましたが、ようやく周辺像がかなりましになりました。因みに、この個体は+3mmが最適でしたが、仮に+2mm~2.5mm程度が最適であったならば、カメラ側に入れたM42→1.25″アダプターにフィルターを入れるという手もあったでしょうね。

まとめ

以前の記事にも記載した様に、EVOGUIDE 50EDはDOSの撮影だけでなく、月の撮影から眼視に至るまで非常に重宝している鏡筒です。昨年バックフォーカスの最適化を行い、今回のプチ改造でフィルターを安心して設置できる様になりました。本来はガイド鏡で価格的に割安感のある鏡筒ですが、こうやって手をかけていくと愛着が湧いてきます。これからも、この鏡筒には頑張ってもらおうと思います。