銀河祭りのあとは球状星団

ここ3回の記事で春の銀河祭りについて書きました。

自宅ベランダからは北側の空が見えないので、春の銀河祭りといえば主にしし座、おとめ座、かみの毛座あたりの系外銀河が撮影対象となります。ベランダからの視界の関係でこれらが西に傾いてから撮影を行っていますが、被写体の高度が更に下がり撮影出来なくなる時間帯から薄明までの間は必然的に銀河以外の被写体を撮ることになります。

そして撮影したものが、タイトルに記載した様に球状星団になります。昨年も同じ時期に球状星団を撮っているので、出来るだけ初めての被写体を狙いました。メジャーなものは既に撮影済みのため、今回は小ぶりなものが多く少し地味ですが最後までご覧ください。

参考までに、昨年の記事は以下になります。

r77-maabow.hatenablog.com

使用機材

前回までの記事と全く同じですが、一応、使った機材を記載しておきます。

  • 鏡筒: Sky-Watcher MAK127
  • 補正光学系: Kenko クローズアップレンズ AC4+AC5 (4月下旬まで使用)
         : SIGHTRONレデューサー0.75x (4末から使用)
  • カメラ: ZWO ASI533MC Pro
  • 架台: Sky-Watcher Star Adventurer GTi
  • ガイド鏡, カメラ: Askar FMA135, ASI 224MC

被写体と撮影条件など

今回も、昨年の記事と同様に撮影した複数の球状星団を1つの画像にまとめて掲載しますので、撮影条件などを表にしておきます。

※M15の画像は2日分を全てスタックしたので、実際の総露光時間は1時間32分です。

なお、上表のうちM5とM15は昨年も撮影していますが、4月末から使い始めたレデューサーの星像確認のため今回も撮影しました。それ以外の7つが初撮影の被写体になります。

撮影した画像

前述の使用機材に記載した様に、撮影時期により補正光学系(レデューサー)が異なり合成焦点距離が若干違うため、同一焦点距離相当になる様に個々の画像を拡大または縮小しています。また、各画像はトリミング(ASI533MCPフル画面3008x3008から1800x1800を抽出)したものを1つの画像にまとめ、更に全体を1920x1920にリサイズしています。

今回撮影した球状星団
何れも、DSS, Siril, GraXpert, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

やはり球状星団は、並べてみると各々に個性が分かり面白いです。

大きさに関して言えば、M5とM22はかなり大きく、次がM15で、それ以外はかなり小さいですね。星の集まり具合にもそれぞれ特徴があり、M107やM71は密度が低いのがよく分かります。特にM71は散開星団かな?と思えるほど密度が低く見えます。
あと、天の川に近いM22, M69, M70,M71は、周りに星が多いのも特徴といえば特徴でしょうか。

なお、昨年の記事に書いた様にこれらの画像が大きさを正しく表しているとは限りませんが、実際の視直径の大小とも概ね一致しているので相対的に見る分には問題ないはずです。

しかし、M70とM71だけは状況が違います。StellariumによるとM70が8'00"、M71の視直径は7'12"で、数値上はM71の方が小さいはずなのにこの画像をみる限りM70の方が小さく見えます。元々どこまでが球状星団に含まれる星かが分かり難いというのもありますが、M71の密度が低いため逆転して見えるのではないかと思います。

色にも特徴はありそうですが、大きさと同じくこの画像が実際の色を表しているとは言えません。更には使用したフィルターが被写体によって違うので、相対的な差を表しているかも若干疑問が残ります。そのため、色についてはあくまで参考程度にご覧いただければと思います。

M5の大きさについて

昨年の記事に、「M5はStellariumに掲載されている画像が自分で撮ったものより大きい」と書きました。その時の比較画像が以下です。

M5: 左:ステラリウムの画像、 右:2023/5/3と5/26に撮影したもの

ご覧の様に、右の画像がかなり小さく見えると思います。

そして、今回撮影した画像を同様に比較してみると以下の様になりました。

M5: 左:ステラリウムの画像、 右:2024/5/3に撮影したもの

どうでしょう。昨年に比べて今年撮った画像の方がよりStellariumのものに近づいている様に見えますよね。多分、今回は透明度が良い日に撮ったので周辺の暗い星々が昨年より多く写ったのでしょう。それでもStellariumの画像と比べると小さく見えるので、もし機会があれば撮り増ししてもっと大きく見える様になるか試してみたいと思います。

更に散光星雲も撮影

5月18に、少し試したいことがありEVOGUIDE 50EDにバローレンズを付けて撮影していました。しかし、目的の被写体の方向が曇っていて撮れず、雲がない方向にたまたまあったM6とM7を撮りました。タイトルには「球状星団」と書きましたが、銀河の後に撮ったのは同じということで、これらも掲載しておきます。

M6(左) M7(右): 2024/5/18 2:45(M6), 2:28(M5)  @自宅ベランダ
EVOGUIDE 50ED+Kasai 2.5xBarlow, ASI533MC Pro , UV/IR-Cut, SA-GTi
Temp.=-10℃, Gain=250, Exp.=45s, 20frames (15mn)
DSS, Siril, GraXpert, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, Fitswork4, GIMP で処理

どちらも高度が低く南中時でも20度前後なので、撮影開始後しばらくするとガイド星が近くの電線や遠方の木に隠れてしまい、それぞれ15分しか撮影できませんでした。それでも、かなり明るい被写体なので短い露光時間でもそれなりに写りますね。

因みに、周辺の星像は伸びてしまっているのは、フラットナーを付けていないからです。バローが無い状態の画面中央付近を使うことになるのでフラットナーは要らないかも?と思っていましたが、そう甘くはなかった様です。

まとめ

春の銀河を撮影した後、薄明までの時間に撮った球状星団(と散開星団)を紹介しました。

昨年の記事にも書いた様に、球状星団は単独で見て楽しむだけでなく並べて見ることで楽しみがあります。特に比較的視直径が小さいものは単独で見るとあまり見栄えはしませんが、並べて見ることで個々の特徴が見えてきて楽しいですね。

そして、今回初めて撮ったメシエ天体も多いということで、昨年の記事に載せた撮影済みメシエ天体一覧も載せておきます。

昨年は75個撮影済みだったものが、今回までの撮影で89個になりました。赤枠で示したものが昨年からの増加分で、銀河7つ, 球状星団5つ, 散開星団2つです。何れもこの記事を含め過去4回の記事で紹介したものが殆どで、やはり銀河と球状星団を多く撮るこの時期に初撮影となる天体が増えます。

春の銀河はまた来シーズンですが、今シーズン中に撮れるものは出来るだけ撮影してこの表を埋めていきたいと思います。