梅雨の晴れ間の撮影(その3) - MAK127で球状星団など -

前々回・前回の記事の続きで、今回が最後です。

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今回は、MAK127で撮影した球状星団や惑星について紹介します。

M55、M53

まずは球状星団です。

この時期に球状星団と言えば、ヘルクレス座のM13を撮影される方が多いのではないでしょうか。しかし、自宅のベランダからは高度が高く上の階のベランダに隠れてしまい、撮影対象とはなりません。そのため、ベランダから見える過去に撮影していないものを選びました。

M55: 撮影2023/6/17 2:26 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi
 FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=64s, 36frames (38min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

M53: 撮影2023/6/17 23:06 @自宅ベランダ
MAK127 + Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi
 FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 62frames (46.5min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

巷では、針で突いた様な微細な星が密集している球状星団の素晴らしい作品を見かけますが、その様な作品とは程遠く星像が肥大してしまっています。前回も記載した様に Star Adventurer GTiには荷が重い超焦点撮影という事に加え、今回は高度も低くシーイングの影響も加わっているかもしれません。いずれにしても手持ちの機材では高精細な球状星団は望めませんが、遠目に見ればそれらしく見えるので球状星団はお気に入りの被写体です。今後もちょくちょく撮影したいと思っています。

あと、この2つの球状星団の大きさが全然違うので、その旨を以前ツイートしました。

ツイッターだと文字制限があるのでここで補足ですが、この2つの画像は僅かに表示倍率が違います。後々記事にするかと思いますが、実は2月ころからMAK127とクロースアップレンズを組合せに対して、バックフォーカスの最適化を行っている最中です。この2つの撮影の間でバックフォーカスを少し変えたので焦点距離が僅かに変動していて、プレートソルブの情報からすると倍率はM55の画像が3%ほど大きい様です。星団の大きさの差からすると誤差レベルですが、一応記載しておきます。

M83

M83は2月と4月にも撮影していて、今回は3回目です。

2月の撮影は、短い露光時間にも関わらず透明度が高かったためか結構淡い部分まで写ったものの、シーイングがかなり悪かった上にピントも少しボケていてボテボテの画像でした。そのリベンジとして4月に撮影したのですが、この日も露光時間が十分取れず且つ霞んだ空で周辺の淡い腕が殆ど写りませんでした。
今回の撮影ではCBPフィルターを付けて撮影したため4月よりはだいぶマシにはなったものの、やはり露光時間が短くて今一つ淡い部分が出ません。

露光時間が短いのは、機材のセットアップ(主に極軸合わせ)に時間がかかったり、ちょっとした機材トラブルなどが起きたりしたためです。そこは今後改善しようとは思いますが、なにせ南天で高度が低い天体なので今回が撮影できる最後の時期でした。今シーズンはこれ以上撮り増しできないため、とりあえずの成果物としてこの3回の撮影結果を使って仕上げたものが以下になります。

M83: 撮影2023/2/26, 2023/4/29, 2023/6/16 @自宅ベランダ
・2023/2/26 3:31 MAK127+close-up lens No.4, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
Temp.=-10℃, Gain=350, Exposure=30s, 52frames (26min) 
・2023/4/29 01:01 MAK127+close-up lens No.5, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=-5℃, Gain=250, Exposure=32s, 55frames (29.3min) 
・2023/6/16 21:56 MAK127+close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP, SA-GTi
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=32s, 54frames (28.8min)
DSS(改造版), 自作スタックソフト, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

上述した様に、バックフォーカスの最適化を行っているため撮影日によって焦点距離が違うので、全てのRAW画像をDSSで一度にスタックすることが出来ません。そのため3者をDSSで個別にスタックしておいて、4月分と6月分を自作スタックソフトで更にスタックして通常処理。その処理画像に、2月分を星無し画像にしてGIMPで手動位置合わせしてブレンドしてみました。

そうすることで、星はボケていない状態で淡い部分もそれなりに炙り出せた画像になったと思います。露光時間はトータル1時間半程度になりますが、それだけの画像になっているかは疑問です。しかし、色々小細工してこの位の画像にはなったので、そこそこ満足しています。

金星、木星土星

最後に惑星です。元々MAK127は1,500mmという長焦点の鏡筒なので、本来の被写体と言って良いかもしれません。

金星: 撮影2023/6/16 20:15 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=150, Exposure=4ms, 6500frames 50% Stack×3を加重平均
AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

金星は4月頃から時々撮影していますが、模様が出ないのでいつもこんな処理で良いのか?と疑問を持ちながら処理しています。

木星: 撮影2023/6/17 03:58 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms, 4000frames 50% Stack×4をデローテーション
AutoStakkert, AstroSurface, WinJUPOS, GIMP で処理

木星は今回が今シーズン初撮影です。

まだこの時期は、薄明が始まる頃になっても家のベランダからだと建物に隠れてまだ見えません。しかし、貴重な晴れ間なのでどうしても見たくて薄明開始から一時間ほど待ってやっと見ることができました。空はだいぶ明るくなっていたのですが、大赤斑が見えたので撮影も行ったという訳です。
明るくなってからの撮影という事もあり、細かいディテールまでは出てないのは仕方ありません。シーズン初撮影で大赤斑が見えているのでヨシとしましょう。

土星: 撮影2023/6/18 03:03 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=400, Exposure=40ms, 8000frames 50% Stack と
Gain=470, Exposure=25ms, 8000frames 50% Stack を加算平均
AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

土星は先月今シーズン初撮影を行ったとき、輪の傾きがかなり浅くなっていてびっくりしました。今回は17日と18日の2回撮影し、シーイングが少し良かった18日のものを掲載しています。

まとめ

この撮影以降、この記事を書いている7月2日より前はずっと天気が悪くまともな撮影ができていません。梅雨なので当たり前なのですが、その梅雨の最中に2日間も快晴が続きそれが新月期且つ週末だったという事を考えると、この2日間は奇跡の晴天といっても良いかもしれません。おかげで、DSOを2つの鏡筒で撮影するだけでなく、惑星の撮影や眼視も楽しむことができました。

記事を書き始めた先週時点では撮影後の画像処理もあって結構お腹いっぱいだったのに、1週間たった現時点ではまたお腹が空いてきました。奇跡の晴天がまた来て欲しいというのは無理だとしても、できるだけ早く梅雨明けして欲しいものです。