自宅ベランダからM31を撮る
M31は、自宅のベランダからだと撮れそうで撮れない天体です。昨年末、手持ち機材を組み合わせてこの撮影に成功したので、今回はこの時の機材と結果画像を紹介したいと思います。
ベランダからの見え方
以下は自宅のベランダを上から見た図で、通常は赤い三角形で示したところに三脚を置いています。M31はオレンジの矢印で示した様に、建物や上の階のベランダに隠れて見えません。
以下は西側を見たときの様子をStellariumでシミュレーションしたものです。
こちらの図にも、M31の動きをオレンジの矢印で示してみました。見ての通り、屋根と壁に隠れてしまうのが分かると思います。
そして、三脚を西側に寄せる(最初の図で青い三角形で示した位置にする)と多少北側の視界が広がり、以下の写真の様にM31が見えてきます。
写真の様に2台の鏡筒を並べると西(左)側の鏡筒からだと見える様になります。しかし東(右)側の鏡筒からは見えないので、オートガイドしようとすると撮影鏡筒またはガイド鏡のどちらか一方しかM31は見えません。
ノータッチガイドだと撮影できるものの、そうすると1フレームの露出時間が短くなり、また、鏡筒がもう少し西側にないとM31が見えている時間も短くて総露光時間も稼げません。
そのため、一昨年スカイメモSを購入したあとEVOGUIDE 50EDと組み合わせてメジャーな天体を撮影していたのですが、M31は撮影することが出来ませんでした。
では、M31を自宅から撮ったことがないかというと、北側の部屋にある花台窓手すりから撮影したことがあります。花台窓手すりからの撮影については、以下の記事を参照してください。
以下は、花台窓手すりから撮影した画像です。
この撮影の場合、スペースの関係上機材はFMA135+AZ-GTiに限定されてしまいます。焦点距離が135mmなので、1インチのASI533MCPと組み合せるとこの様に少し小さく写ります。また、AZ-GTiは経緯台なので(赤道儀化していないので)視野回転があり1フレーム当たりの露出を長くできず、ゲインが高いことが影響してノイズが目立つので強めの強調処理は行えません。
もう少し大きく且つ1フレーム当たりの露出を長くしたいとなるとEVOGUIDE 50ED+赤道儀となるので、どうしてもベランダからの撮影が必要となり、以前から何とかしたいと考えていました。
M31撮影の機材構成
今回、以下の機材構成とすることで、ようやく撮影が可能になりました。
メイン鏡筒・ガイド鏡筒を、スカイメモS の赤緯体として購入したEQM-35Pro用L型微動雲台に載せ、それを赤道儀に載せるという構成です。こうすると、メイン鏡筒とガイド鏡筒の両方が西側にかなりシフトするので、どちらの鏡筒からもM31を捉えることが出来ます。
昨年12月初旬にこの機材構成で初めて撮影し、L型微動雲台と鏡筒2本が架台やベランダの手すりと干渉しないかなど色々と事前確認を行いました。そのため、その日は40分程しか撮影できませんでしたが、この構成だとM31は最大で2時間ちょっとの撮影が可能です。
L型微動雲台はスカイメモS と一緒に2022年の5月に購入、そのあと昨年1月にStar Adventurer GTi(SA-GTi)を購入して機材が揃ったことで、やっとM31をオートガイドで撮影することが出来ました。
結果画像
やっぱり画面一杯に広がる銀河は良いですね。
今まで撮影出来なかった反動からか、3日がかりで4時間という自分としてはかなり長い露光時間となりました。SetllariumでEVOGUIDE 50ED+ASI533MCPの写野を確認すると周辺の淡い腕の部分が少しはみ出る様ですが、光害のためかこれだけ時間をかけてもそこまでは表現できていません。それでも、自宅からこれだけ写せれば十分満足です。
M31以外の被写体
この構成にして視界が北西に広がったことで、今までM31と同じ様に写せなかった天体が撮影できそうです。例えば、カリフォルニア星雲や勾玉星雲などです。他にM13も見えるようにはなりますが、EVOGUIDE 50EDだとちょっと焦点距離が短いですかね。これらの被写体も、随時撮影していきたいと思います。
あと、この機材構成だと鏡筒が西側にシフトするので、ベランダの屋根との位置関係から西側に傾いた被写体の高度が高い時間から撮影できるようになりました。高い高度での撮影は、光害の影響が多少減ることと、1回(1日)当たりの露光時間が長くできるという2つの点で有利です。そのため、今まで撮影したことがある被写体を、この構成で撮り直すのもよさそうです。
ということで、いくつか撮影したものの中から1つ紹介します。
くらげ星雲はこの構成でなくても撮影は出来るので、以前撮影しています。そのときは、高度が低い状態からの撮影だったというだけでなく経緯台だったこともあり露光時間はあまり長くありませんでした。
しかし、今回は赤道儀でしかも高い高度の状態から撮影したので、露光時間を長くすることができました(本当は1.5時間露光で他の天体を撮るつもりでしたが、寒かったのでそのまま撮り続けたというのが実情です)。そのおかげか、クラゲの頭のアミアミが表現できました。
まとめ
機材構成を少し工夫したことでベランダでの西側の視野が広がり、以前はFMA135+経緯台でしか撮影出来なかった被写体がEVOGUIDE 50ED+赤道儀で撮影出来るようになりました。また、被写体によっては高度が高い時間帯から撮影ができます。
今後、撮影できなかった被写体はもちろん、過去に撮影した被写体につてもこの機材構成で撮ってみたいと思います。