出遅れた春の銀河祭り

春の銀河祭りにはかなり出遅れた感はありますが、5月後半に系外銀河の撮影を行いました。撮影したと言っても、自宅ベランダからどの辺の被写体が狙えるかの確認を兼ねたものなので、露光時間は1時間程度です。また、5月末には満月に近い月がある中の撮影となりました。

そのため画質は今一つですが、6月1日に九州南部は梅雨入りしていつ追加撮影やら撮り直しが出来るか分からないので、ひとまず記事にしておこうと思います。

撮影した被写体

自宅は西向きで北側の角部屋です。ベランダの北側に機材を設置すれば、北天の被写体体が撮影出来ます。

引っ越す前は南向きの物件で、北天の被写体はベランダではなく北側の部屋の花台窓手すりから撮るしかなく、奥行が50cmしかないため短焦点のFMA135でしか使えませんでした。
今回は長焦点で北側の天体が撮れるという事で、短焦点でしか撮ったことがないM81, M106, M51, M101、1度も撮ったことの無いNGC5907, M56、合計6つの系外銀河を撮影しました。

撮影

機材はMAK127+0.7x Reducer、ASI533MCP、UV/IR-Cut、Star Adventurer GTiで、FMA135+ASI224MCでPHD2によるガイドを行っています。カメラの設定は、全て Gain=250, Exposure=90s, Brightness=10, Temperature=0℃です。
撮影した日や露光時間などを以下の表に纏めておきます。

画像処理はDSS, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP を使っています。

結果

M81

撮影したのは49フレームでしたが、途中から電線に隠れてしまったのでスタックしたのは41フレームです。

M81

M81はだいぶ前に実家でEVOGUIDE 50EDを使って撮っています。それと比べると大迫力ですね。1時間程度の露光時間ではまだノイズが目立つので、デノイズかなり誤魔化しています。もっと時間をかけて撮影したいところです。

M58

こちらは途中で冷却用のバッテリーが空になり、一旦中断しACアダプターからの給電に切り替えたこともあって、撮影したのは48フレームですが温度が上がったものを除いた43フレームで処理しました。

M58

小ぶりながらも綺麗な渦巻の銀河ですね。時間をかけるともっとディテールが出そうですが、この天体はどちらかと言うとメシエ天体コンプリート目的で撮ったので当面追加撮影はしないかも。

M101

撮影中に星像が少しボケているのに気づいて、途中でピントを合わせ直しています。この日は深夜に気温が下がってきたので、温度変化によるピントズレが起きていた様です。今回はピントがズレた9フレームも含め、撮影した40フレーム全てをスタックしています。

M106

こちらも、M81と同様非常に迫力ある画像になりました。中央と周辺で明るさが違うので処理が難しいですね。

NGC5907

NGC5907は4月22日に超新星SN2026kidが発見されており、早めに撮らねばと思っていました。
この日は雲が多く夜一時的に晴れ間が広がったので機材をセットしたものの、途中から雲に隠されてしまい14フレーム撮影したうち使えたのは8フレームだけでした。

NGC5907

処理してみると、短い露光時間の割には良く写っているのに驚きました。もちろん、超新星SN2026kidもしっかり写っていました。

M51

月齢13.3とかなり明るい月が出ている中での撮影でした。前出のM106とRAWファイルを比較するとバックグラウンドが2.5倍ほど明るくなっていました。その影響だと思いますが、色ムラやノイズの処理に少し手間取りました。

M51

画質はともかく、こちらもEVOGUIDE 50EDでしか撮ったことがなかったので、迫力ある画像になり満足しています。

M101

M51と同様月明かりの中での撮影でした。StellariumによるとM101は7.9等級ですが表面輝度は14.86と掲載した銀河の中では一番暗いためか、今回最も処理に苦労しました。

M101

全体的にノイズが多いため、淡い部分が炙り出せないだけでなく色もおかしくなっています。やはり月の影響が大きかったようです。

Stellariumの風景作り

冒頭に今回の撮影は「自宅ベランダからどの辺の被写体が狙えるかの確認を兼ねたもの」と書きましたが、撮影した状況を反映してこんなものを作っています。

Stellariumに追加している風景

Stellariumに風景を追加する方法は以前記事にしいます。

r77-maabow.hatenablog.com

今回もベランダから見える風景を追加していて、被写体が「導入できた」とか「電線で隠れた」などの状況を元に、壁や屋根(上階のベランダ)や電線の位置などを微調整しています。今回掲載した以外にも幾つかの天体も撮影していてその結果を反映中で、完成すればどの天体が何時頃からどれくらい露光できるかシミュレートできるようになります。引っ越し後まだ4ヶ月なので、今後の撮影プランを考える際に重宝するはずです。

まとめ

5月後半になって、ようやく系外銀河の撮影を行いました。引っ越す前は撮れなかった北側の銀河長焦点のMAK127(レデューサーとの組合せでFL=1,020mm)で撮影出来る様になり、迫力のある結果を得ることが出来ました。

嬉しくて雲が多い日や月明かりの中でも撮影してしまいましたが、流石に月が明るい中で撮ったものは画質が今一つなので、撮り直しをしたいと思っています。また、それ以外のものも露光時間が1時間程度なので、追加撮影をしたいところです。とは言え、梅雨入りしてしまったのでしばらくはお預けですね。

さそり座アンタレス付近と青い馬頭星雲

前回の記事でみなみじゅうじ座のγ星(ガクルックス)の撮影ついて記載しました。その日は引き続きケンタウルス座のω星団とさそり座のアンタレス付近(いわゆるカラフルタウン)を撮影し、Xにポストしています。

このポストに書いた様に、アンタレス付近は僅か16分の露光時間でしたが今までで一番よい写りです。この公園は鹿児島市の中心部から10km程度離れていて、光害マップによるとBortle scale 4.8(SQM 20.71)です。以前住んでいた所と比べるとかなり暗い空で、そのおかげで良く写ったのだと思いました。

この時はガクルックス撮影がメインで短時間しか撮れなかったので日を改めて撮影を行い、加えて短時間でこれだけ写るのなら今まで撮影したことのないIC4592(青い馬頭星雲)にもトライしました。今回はその結果を紹介します。

撮影について

撮影したのは5月17日~18日です。機材はFMA135、ASI533MCP、Star Adventurer GTiです。

この日は空の透明度が悪く、鹿児島市街の光害の影響範囲(空が明るく見える範囲)が前回よりかなり広く感じました。
市街地は南から少し西側にズレているので、影響を避けるためには南中を少し過ぎたあたりで撮影を切り上げる必要があり、その分露光時間は長くできませんでした。最初に撮影した青い馬頭星雲は、露光時間1時間18分。アンタレス付近の露光時間は1時間10分です。

あと本題とは関係ありませんが、青い馬頭星雲の撮影ではオートガイドを行いました。FMA135がメイン鏡筒のときはいつもEVOGUDE 50EDをガイド鏡として使うのですが、以前からメインより口径が大きく焦点距離も長いものを使うことに疑問を感じていたので、この日は50mmのオールドレンズにバローレンズを付けたもの(Totalの焦点距離は82㎜)を即席のガイド鏡として試しました。しかしガイドが不安定だったので、アンタレス付近の撮影ではノータッチガイドとしました。そのため1フレームの露出時間は、青い馬頭星雲は120秒でアンタレス付近は60秒と異なっています。

結果

青い馬頭星雲

撮影した40フレーム中、オートガイドが不安定で流れているフレームが3つほどありました。そのうち流れの大きい1つだけを除外、39フレームをスタックしました。

IC4592(青い馬頭星雲):2026/5/17 22:57-24:13 @自宅近くの公園
FMA135, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
Temp.=0℃, Gain=200, Exp.=120s, 39frames (Total 1hr 18mn)
DSS, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

カブリ補正を行う前はかなり画面下側が明るかったので、思ったより市街地の光害の影響があったようです。背景の淡い部分に色ムラの様なものが見えるのは、被写体自体の分布以外に光害カブリの補正に伴うムラもかなり混ざっていると思います。

細かいことを言えばキリがありませんが、初めての撮影でこれだけ写れば満足です。

アンタレス付近

こちらは撮影した70フレーム全てをスタックしています。本当はもう少し撮影したかったのですが、前述の様に市街地の光害を避けるため撮影を早めに切り上げています。

アンタレス付近:2026/5/18 0:37-1:46 @自宅近くの公園
FMA135, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
Temp.=0℃, Gain=200, Exp.=60s, 70frames (Total 1hr 10mn)
DSS, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

こちらも青い馬頭星雲と同様、カブリ補正を行う前は画面下側が明るくなっていました。しかし、背景の淡い部分の色ムラは青い馬頭星雲より少ない気がします。こちらの方が被写体は明るいのでストレッチの割合が少なく、光害カブリの補正に伴うムラが少ないのかもしれません。

こちらも、今までで一番の出来です。

過去の撮影を振り返ってみる

アンタレス付近は過去何度か撮影していますが、過去のものと比べ今回は非常に良い出来でした。この差が空の暗さだけなのか少し振り返ってみました。というのも、3年前に1度だけ実家(鹿児島)で撮影していて、実家は今回撮影した所より更に空が暗く光害マップによるとBortle scale 4.3(SQM 21.30)なのです。

その時の結果は以下で、冒頭のXにポストした16分露光のものに比べてもかなり見劣りするものです。

過去の撮影結果:2023/8/13 21:37-22:29 @実家(鹿児島)
FMA135, ASI533MCP, CBP, スカイメモS
Temp.=0℃, Gain=250, Exposure=90s, 35frames (Total 52mn 30s)
DSS, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

これについては記事にしていて、この日は空が霞んでいて桜島の火山灰も降っていた様です。しかし、この記事を読み返すまで空の霞みの事はすっかり忘れていて、より暗い空でこんなに写りに差があるのはおかしいと思いこのデータを再処理してみました。

再処理結果

どうでしょう、かなり今回の結果に近づきました。再処理結果は空の霞みがあり多少眠い感じで、出来としては今回の結果に軍配は上がるとは思いますが、かなり善戦しているのではないでしょうか。

再処理でこうなったという事は、以前の結果が大きく劣っていたのは画像処理が原因の様です。

3年前の処理途中データを眺めてみると、デノイズ処理が今と違っています*1。詳しく書くと長くなるのでかなり簡単に言うと、2年ほど前から処理の前半でGraXpartのデノイズ*2を行う様になりました。これが加わったことで、以前よりも強めのストレッチが出来る様になった様です。なお、以前は主に処理の後半のみでデノイズを行っていて、処理ソフトはNeat Image やGIMPを使っています*3

まぁ、自分の画像処理技術が向上したわけではなく、画像処理ソフトが進化したということですね。

では鹿児島ではなく、以前住んでいた東京で撮ったものを再処理するとどうなるかもやってみました。

(左)以前の自宅で撮影・処理したもの (右)その再処理結果
撮影2022/6/26 23:55-24:58 @旧自宅(東京 多摩南部)
FMA135, ASI533MCP, CBP, スカイメモS
Temp.=0℃, Gain=250, Exposure=64s, 43frames (Total 45mn 52s)
DSS, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

やはり、大きく改善しました。露光時間を数時間レベルにまで増やせば、もしかすると今回のものに迫る結果が得られた可能性もあります。東京といっても都心から40km以上離れているので、実はそんなに悪い環境ではなかったのかもしれません。

また、今回と以前で使っているフィルターが違いますが(今回はUV/IR-Cutで以前はCBP)、再処理を行ったことでフィルターの影響も確認できました。どうやら、星雲の写りと全体の色バランスの違いとして出ている様です。
CBPはUV/IR-Cutに比べ赤い星雲の写りが良い代わりに、赤色がオレンジっぽくなり青も少し緑っぽくなる気がします。光害地からではこの手のバンドパスフィルタは必須ですが、カラーバランスはやはりブロードバンドの方が良いですね。

まとめ

今回、アンタレス付近と青い馬頭星雲を撮影し、何れも満足のいく結果となりました。
但し、その結果になったのは単に空が暗い場所で撮っただけではなく、画像処理ソフトの進化が大きく寄与したものでした。過去データの再処理でそれらの気付きがあったことは、それはそれで収穫だったかもしれません。

*1:もちろんデノイズ以外にも違いはありますが今回は割愛します

*2:現在はSirilのスクリプトSyQon-Prism.pyを使うことが多いです

*3:この後半のデノイズ処理は現在も行っています

低空の被写体にチャレンジ

ここの所ずっと天候が今一つで、雨の日や昼間晴れても夜は曇る日が続いていました。ゴールデンウイーク後の週末からようやく良い天気が続き、5月9日と10日に撮影を行いました。偶々2日とも低空の被写体を撮ったので、1つの記事にまとめて紹介したいと思います。

撮影した被写体

5月9日に撮影した被写体はみなみじゅうじ座のγ星(ガクルックス)です。十字を構成する星の中で最も北にある恒星で、以前住んでいた東京では南中時の高度がマイナスで見ることはできません。鹿児島に引っ越したらチャレンジするつもりでした。

5月10日撮影した被写体はC/2025 R3(パンスターズ彗星)です。4月中旬に明け方の姿を撮影しXにポストしました。5月に入って日没直後の西の空で見られるようになり、西側の見通しが良い自宅から撮れるのではないかと思いチャレンジしてみました。

ガクルックスの撮影

撮影準備

鹿児島だとガクルックスの南中高度は1.4度ほどです。自宅は西向で南側は見えないため、撮影場所を探すところから始めました。

近辺の公園を幾つかピックアップし、Google Earth Pro で南側の視界を確認したところ3か所ほどが候補に上がり、そのうち一番自宅に近い所を撮影場所としました。

Google Earth Pro の画面

上図はGoogle Earth Pro の画像で、公園から南に引いたライン(赤い直線)上の地形(断面プロファイル)が画面下に表示されています。公園の南方には薩摩半島の南端があり、断面プロファイルを見ると薩摩半島南端の一番標高が高い所(グラフ右側に距離・標高が表示されている地点)でも公園の標高(グラフ左端が公園)より僅かに低いので、数値上は高度0度まで見えるはずです。

確認のため撮影の3日ほど前に現地に行った所、木などに邪魔されず南側を見通せる場所もありました。ただ昼間に行ったのでこの時は外灯などが邪魔になるかまでは分かりませんでした。

そして撮影当日、夕方から所用があり自宅に帰ったのは夜9時過ぎ。急げばガクルックスの南中時刻(21:40頃)間に合うはずでしたが、なにせ今まで殆ど自宅ベランダで撮影してきたので遠征(近征)慣れしておらず、出発準備に手間り現地に着いたのは10時頃でした。
着いてみると公園の外灯が予想外に邪魔で、撮影場所を決めるまで15分程かかりました。南側をみると低空に薄雲があり肉眼では星は見えませんでしたが、薄雲越しに写ることを期待して撮影準備を始めました。

撮影

機材は50mmのオールドレンズにASI533MCPという組合せで広めの写野とし、架台はAZ-GTi(経緯台)です。ガクルックス導入してみると、大気差なのかアライメント誤差なのか画面中心にそれらしい星は見えません。どこを撮っているか分かる様に、視野を少し上に向けω星団も視野に入る構図にして撮影開始です。この時点で22:20を過ぎていて、この時のガクルックスの高度はStellarium によると1.05度でした。

以下の左が撮って出しの画像(ASIFitsでオートストレッチ)で、右はその画像にStellariumの星座線やキャプションを上書きしたものです(高度0を示す線を黄色で追記)。

γ Cru:First Frame

薄雲がある上に、左側は公園の外灯、右側は鹿児島市南部の街明かりで見づらいものの、右下にガクルックスが写っています。
ただ、撮影中はこのように画面上で星図と重ねることはできないので、この輝点がガクルックスかどうかは半信半疑でした。撮影中の画面を見ながらライブスタックで流れないので星であることが分かり、更に撮影画面を拡大表示しStellariumと何度も見比べて、撮影中盤でようやく間違いないと確信が持てました。

結果

撮影開始時点ではカメラの冷却がまだ不十分だったので、処理に使ったデータは22:28から撮影した32s×10フレームです。

γ Cru:処理結果 2026/5/9 22:28-22:33 @自宅近くの公園
OLYMPUS F.ZUIKO 50mm F1.8(F4で使用), ASI533MCP, UV/IR-cut, AZ-GTi
Temp.=0℃, Gain=200, Exp.=32s, 10frames (Total 5mn 20s)
DSS, Siril, AstroSurface, GIMP で処理

強調された薄雲や外灯・街明かりに負けず、思った以上に多くの星が写っていますね。画面下側1/3ほどは星が少ないためか、スタック時の位置合わせ精度が今一つで星が流れています。横方向に色ずれもあるので、大気による色分散と位置合わせ誤差が混ざっているのでしょうか。

カメラが少し傾いていたのもちょっと残念です。途中で気付いたのですが、撮り直すとガクルックスの高度がもっと下がるので続行しました。後処理で傾けるとせっかく写っている周囲の星を切り取ることになるので、そのままにしています。

画像の出来としては今一つですが、ガクルックスの撮影という目的は達成できました。

パンスターズ彗星の撮影

撮影

翌日5月10日の夕方、極低空は靄で霞んでいましたが雲は殆どありませんでした。Stellariumによると、空が暗くなり始める19:45頃の彗星の高度は7度。余裕をみて19時頃から準備を始めました。

機材はFMA135にASI533MCP、AZ-GTi(経緯台)です。実は3日前に一度撮影にチャレンジしていて、機材セッティング直後に雲が広がり撮影出来ずに撤収となりました(天文あるあるですね)。その時の記憶がまだ新しいので、機材の設置から撮影開始までは実にスムーズ。暗くなるのを30分近く待つ余裕がありました。

最初のフレームは以下になります(ASIFitsで手動ストレッチしたもので、右は同じ画像に彗星の位置をマークしたもの)。

C/2025 R3:First Frame

流石にまだ空が明るく、M42は分かるものの彗星は全く見えません。刻々と空の明るさが変わるので、露光時間を変えながら何度かライブスタックして、彗星らしきものが認識できたのは19:50を過ぎたあたりでした。しかし、尾は全く見えず核が薄っすらと分かる程度です。

20:00頃になると高度が下がったことで街灯起因と思われるゴーストが出てきたため(下図)、撮影を切り上げました。この時の彗星の高度は3.5度でした。

C/2025 R3:Last Frame

結果

彗星が見え始めた19:50以降の 8s×16フレーム+16s×24フレームをスタックして処理した結果が以下になります。

C/2025 R3:処理結果 2026/5/9 22:50-22:55 @自宅ベランダ
FMA135, ASI533MCP, UV/IR-cut, AZ-GTi
Temp.=0℃, Gain=100, Exp.=8s, 16frames
Temp.=0℃, Gain=100, Exp.=16s, 24frames (Total 8mn 32s)
彗星基準と恒星基準でスタックしたものを合成
DSS, Siril, GraXpert, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

画像処理にはかなり時間がかかりました。画面の上下で背景の明るさが大きく違うので、SirilのBackground Extractionで出来る限り背景がフラットになる様に補正しています。それでも、尾は炙り出せません。靄だけでなく薄雲もあった様でかなりコントラストが悪く、ストレッチするとノイズが盛大にでるのでデノイズやトーン調整を何度かやり直して何とかこの状態に仕上げました。

分かり難いので、彗星の部分を切り出したものも載せておきます(中央が彗星)。

C/2025 R3:トリミング画像

尾は分かりませんが核は彗星らしい色で写っているので、こちらも撮影するという目的は達成です。

まとめ

何れも低空の被写体ということで薄雲や靄に悩まされるだけでなく、ガクルックスは場所探し~機材設置、パンスターズ彗星は画像処理にかなり労力がかかりました。
それでもガクルックスは見かけの等級が1.64と明るい恒星なので、薄雲があってもしっかり写りました。一方パンスターズ彗星は空の明るさや薄雲に負けてしまい核がポツンと写るレベルでした。

2枚とも綺麗な画像にはなりませんでしたが、撮影するという目的は達成できたので良しとしましょう。

赤い星雲に浮かぶM41

引っ越しで天文活動を暫く休止していたことは前回の記事に書きましたが、その後も本格的な撮影はできていません。忙しいわけではないのですが何となく気忙しく腰を据えて撮影する気力が沸かず、週に2,3日月や夕日などを短時間で撮るという状況です。

大した活動をしていない日々が続いている為せめてブログでも書こうという事で、昨年中に撮影と処理が終えていたM41について紹介したいと思います。

前回の記事と今回の撮影

M41の撮影については、昨年11月に一度記事にしています。

昨年1月末頃にXのタイムラインで見た「赤い星雲を背景にしたM41」(以下のリンク:以降は”目標の作品”と記載)を撮りたいと思い、撮影してみところゴーストが出てしまい対策する必要があったという内容です。

ゴーストの詳細については記事を見て頂きたいのですが、原因は視野外のシリウスの光がL-Ultimateの枠で反射したためで、枠を真・黒色無双で塗り対策完了としていました。

この記事を書いた後、11/22~12/1にかけて5日間撮影を行いました。撮影時間は枠のゴースト対策をしたL-Ultimateを使い9時間20分、それに加えCBPを使い3時間42分の撮影してトータルで13時間2分の撮影となりました。

撮影日と撮影時間を表に纏めておきます。

また、機材の詳細は以下の通りです。

  • 光学系: Sky-Watcher EVOGUIDE 50ED + Flattener
  • カメラ: ZWO ASI533MCP(-10℃で使用)
  • 架台:Sky-Watcher Star Adventurer GTi

結果

以下が13時間という過去最長の露光時間をかけた結果になります。処理は、CBPで撮った画像とL-Ultimateで撮った画像をStarNet2で夫々星と背景(星雲)に分離し、CBPで撮った星とL-Ultimateで撮った背景(星雲)を合成しています。

M41
機材・撮影データは前述の通り、場所は旧自宅ベランダ
DSS, Siril, GraXpert, Starnet2, AstroSurface, Neat Image GIMP で処理

目標の作品と比べると、星の美しさや星雲の鮮やかさ・精細さがまだまだですね。しかし、過去に自分で撮ったM41の中では最も美しい画像になったと思います。

当然ながらゴーストは無くなっています。以下はL-Ultimateで撮影・スタックしたものをStarNet2で星を分離した後の背景画像で、左は以前の記事に載せた対策前のもの、右が今回撮影したものです。

ゴースト対策の結果
左:対策前、右:対策後

ゴーストがちゃんと対策されていることが分かると思います。

背景の赤い星雲ですが、CBPの撮影では4時間弱の露光時間をかけたので僅かに写るかもと予想したものの、実際は何も写っていませんでした。では9時間超露光したL-Ultimateでの撮影だとちゃんと写ったかというとそうではありません。以下はCBPとL-Ultimateのスタック結果を夫々ストレッチしたものです。

CBP(左)とL-Ultimate(右)のストレッチ画像

左がCBPの画像で赤い星雲は全く見えていません。そして右がL-Ultimateですが、相当淡くしか写っていないのが分かると思います。実際に処理してみてもノイズが多くザラザラで、思ったほど炙り出すことはできず発色もあまり良くありませんでした。デノイズを強めに行い且つトーンカーブや彩度を色々調整して何とか仕上げました。

一方、星についてはCBPで4時間弱も撮影したお陰で十分に写っており、赤い背景に負けない様にいつも以上に彩度を上げて仕上げています。ただ、光学系が屈折なので目標の作品の様な光条はありません。それに加え、処理技術の差なのか色の濃さももう1歩ですね。この辺が星の美しさが今一つな要因でしょうか。

まとめ

Xのタイムラインで見た美しいM41を自分でも撮りたいと思い、ゴースト対策を行ったあとにトータル13時間もの時間をかけて撮影を行いました。結果としては、かなりの長時間露光にもかかわらず、目標の作品ほどの美しさは引き出せませんでした。

特に背景の星雲は非常に淡く、光害地から撮るには少し難易度が高い被写体だった様です。しかし、他人との比較ではなく過去の自分の画像と比べると、過去一の仕上がりです。ともすると地味な仕上がりになってしまう散開星団を、ここまで派手に仕上げられたのでかなり満足しています。

DeepSkyStacker v4.2.6 日本語版公開と近況報告

昨年12月から2月末まで天文活動をお休みしていました。理由は、定年を機に引っ越しをしたためです。

引っ越し自体は1月末から2月初めでしたが、この機会に増え過ぎた家財を出来るだけ整理しようと2か月以上前から不用品の廃棄を始め、その作業スペース確保のため12月に入って早々に天文機材を段ボール詰めしてしまいました。
そして2月初めに新居に荷物が届いた当日に風邪を引き、2週間ほど寝込んでしまいました。生活に必要な最低限の荷物は開梱していましたが、天文機材を出したのは2月末になりました。

そんなこんなで活動休止期間が長引いたわけですが、風邪で寝込んでいる間に3年半前に書いた「DeepSkyStacker改造」の記事に日本語版を公開して欲しいとのコメントがありました(記事のリンク以下で、コメントがあった記事は2つ目)。

引っ越し後初の活動がこの対応となり、ここ2週間ほど色々と作業をしていました。

それ以外では、3月3日の皆既月食の撮影を行いました。全国的に天候が悪かった様ですが、引っ越し先が鹿児島だったので運良くほぼ快晴の中見ることが出来ました。撮影データの本格的な処理はまだまだこれからですが、幾つかの画像をX(旧Twitter)にポストしました。

以下、それぞれについて記載します。

DeepSkyStacker日本語版公開

DeepSkyStacker(以下DSS)は現在 v6.1.3(beta版は6.1.4)が公開されていて、WindowsだけでなくLinuxやMacにも対応し処理も速くなっていますが、私が以前日本語化したものは古いv4.2.6です。

私の勝手な認識ですが、現在の天文界隈では商用はPixInsightやステライメージ、フリーはSirilが主流になっている様です。更にDSSもバージョンアップしていることを考えると、DSS v4.2.6がベースだと3周遅れ位に感じてしまいます。しかし、最新のDSSはGUIがMicrosoftのMFCからQtに刷新されており、Qtに疎い私には改変のハードルが非常に高いため、今更ではありあますが改変済みの v4.2.6 を公開しました。

また、DSSはBSD 3-Clause Licenseなのでソース公開の義務はないのですが、一応ソースコードも公開しています。

公開はしたものの、インストーラーも含め自分のPC以外でちゃんと動くかどうか心配です。もちろん、どれくらいの人に使ってもらえるかも気になりますが、まぁ、そんなに使う人は居ないでしょうね。

公開に踏み切ったのは要望があったからだけではなく、GitHubの使い方は知っておきたいと以前から思っていたためです。ソフトの公開手段は色々あるようですが、ソースのバージョン管理も含めて使い方を知っておいて損はないと思っていたので、これを機会に普段使っているMicrosoftのVisual StudioとGitHubとを連携させ使ってみることにしました。到底マスターしたとは言えませんが、おかげさまで使い方を多少なりとも理解しました。

因みに2週間ほどかかったのは、GitHubの理解だけでなく、普段は作らないインストーラーを作ったり、改造版で使っていた他のオープンソースライブラリが一部テスト版だったものをリリース版にしたり、公開時の説明文の書き方を調べたりと、色々やることが多かったためです。

使い方から公開時の(ライセンスなども含めた)ルール的なものまで色々と検索しまくりでしたが、Geminiさんが結構丁寧に教えてくれて助かりました。間違った回答をすることもある様ですが、数年前と比べると調べものもだいぶ楽になりましたね。

3月3日の皆既月食

冒頭で書いた様に撮影データの本格的な処理はまだこれからで、終わったら後ほど記事にしたいと思います。今回は数枚の画像を載せその簡単コメントを記載する程度にしておきます。

因みに新居ですが、西向きで視界は非常に良いです。以下は部屋からの景色です。

OLYMPUS SH-1 Fl=4.5mm(35mm換算25 mm) ISO=125, Fno.=3, Exp.=1/60s

この景色が気に入って今の物件にしたのですが、ご存知の通り今回の月食は東側で起こるため自宅ベランダではなく近くの公園で撮影しました。

まずは、処理した画像から3枚を紹介します。

撮影日時: 2026/3/3 左から19:34, 20:23, 22:16 @自宅近くの公園
EVOGUIDE 50ED+Fattener+2.5xBarlow, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
左からGain=100, Exp.=15ms, Gain=350, Exp.=247ms, Gain=60, Exp.=5.5ms
100frames, 75%stack, AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

左の画像は最初に撮ったものです。
詳細は後ほどの記事に書くつもりですが、初めての場所というだけでなくベランダ以外での撮影は超久しぶりで準備に手間取った結果、この時間からの撮影となりました。

中央の皆既中の画像です。本当は食の最大のものを処理するつもりで間違って少し早い時間のものを処理しています。

右の画像は部分食が終わる少し前の画像です。この頃には気温が下がり寒さに震えながらの撮影でした。数日前まで最低気温が15度程の日が続き、さすが鹿児島は暖かいと高を括り寒さ対策が甘かった様です。幸い風邪は引かずに済みましたが、2月前半に風邪でダウンした後だっただけに体調を崩さなくてよかったです。

次に、眼視のイメージに近づけた画像です。

撮影日時: 2026/3/3 19:44 @自宅近くの公園
EVOGUIDE 50ED+Fattener+2.5xBarlow, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
左からGain=100, Exp.=50.2ms, 100frames, 75%stack
AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

露出長めで撮ったものをトーンカーブを調整して仕上げたただけなので、明部は飽和気味で暗部はノイズが多いです。いつもながら、眼で見た感じに近づけるのは本当に難しいです。

まとめ

引っ越しで3ヶ月ほど天文活動をお休みしていました。過去にも長期間ブログをサボったことはありますが今回は天文活動自体を休止していたので、単に「DSS日本語版の公開」だけでなく活動休止の理由も含め近況報告を記載しました。

DSSは画像処理部分の操作性や機能はイマイチなものの、スタックに関しては操作が直感的で凄く分かり易いです。結果の品質を問わなければ、単純にライトフレームをドラッグアンドドロップしスタックメニューで表示されるダイアログの[OK]ボタンを押せばスタック出来ます。
なので入門用としては良い選択肢だと思っていて、使いながら細かい設定などを理解したところで他の高機能なツールに移行していく感じでしょうか(因みに私は未だにスタックツールとして使っています)。その際GUIが日本語だとより分かり易いので、この日本語版が操作を覚える通過点になってくれれば良いと考えています。

あと、月食の撮影は行いましたが、未だに引っ越し後のゴタゴタ(家具等の配置や不用品廃棄などの諸々)があり、まだベランダからの撮影はできていません。
光害マップによると新居は Bortle scale 5.2(SQM 20.26)、旧居は Bortle 7.5(SQM 18.64)なので以前より空はかなり暗いはずです。早く新居で撮影を再開したいと思いながらも、この歳になると気持ち的にも体力的にもゴタゴタをテキパキとは片付けられないですね。無理せず進めようと思います。

M41を撮る前にひと仕事

今回は何かを撮影したというものではなく、撮影前の準備ができたという内容になります。以前の記事(月食や引き伸ばしレンズの記事)の続きを書くつもりでしたが、ここ1週間ほどで色々とやった事を覚えているうちに記事にしておきます。

M41の撮影

今年の1月末頃にXのタイムラインで、赤い星雲を背景にしたM41を見かけました。

非常に美しく自分でも撮ってみたいと思い、早速2月に撮影。背景の赤い星雲はかなり淡い様なので、光害地の自宅から狙うとなるとデュアルナローのL-Ultimateを使っての撮影です。
ところがいざ撮影してみると、ゴーストが映り込んでしまいます。以前似たようなゴーストが出た記憶があったので、近くにあるシリウスによるものと予想されたので、これを何とかしてから改めて撮り直しするつもりでいました。そして今シーズンになり、ゴーストのことをすっかり忘れてつい先日撮り増しをしてしまいました。

以下は処理途中でストレッチした状態の画像(右はその星無し画像)で、画面上側に同心円の円弧状のゴーストが写っているのが分かると思います。

M41とゴースト
撮影日時: 2025/2/10 22:14-23:59, 11/12 3:40-5:16 @自宅ベランダ
EVOGUIDE 50ED+Flattiner, ASI533MCP, SA-GTi, L-Ultimate
Temp.=-10℃, Gain=300, Exp.=300s ×61 frames (5hr 4mn 57s )
DSS, Siril, Starnet2, GIMP で処理

さすがに還暦ともなると9か月前のことをすっかり忘れるものですね。撮影がある程度進んだときにライブスタック画像を見てようやく思い出しました。その後も撮影を中断するのも勿体無いため、3時間ほど撮影し、2月の分と合わせてトータル5時間分をスタックしたものが上の画像です。

画像処理で何とかしようとしましたがどうしてもゴーストは消えないので、急遽原因確認と対策を行いました。

以前出たゴースト

このゴーストがシリウスによるものと思ったのは、以前レナード彗星(C/2021 A1)を撮影したときにそっくりなゴーストが出たのを記憶していたためです。その時に撮ったデータを動画にしてみました。

レナード彗星(C/2021 A1)撮影時に発生したゴースト

この画面の下側には幾つかあかるい街灯があり、彗星の高度が下がるとこの街灯が光源となって発生していた様です。当時は毎日の様に撮影していたので、被写体の高度がかなり低いときにしか出ないゴーストの原因を特定したり対策したりする時間がもったいないので、そのまま放置していました。

この時のフィルターはCBPで今回はL-Ultimateですが、これだけ似た形状とであれば原因も同じと考えられます。

ゴーストの再現

下図の様に、M41に対しシリウスは北に約4度離れています。

M41とシリウスの位置関係(Stellariumより)

これを再現しようと、シリウスに見立てた街灯が視野中心になる様に鏡筒を向け、少しずつ上方に鏡筒の向きを約5度まで変えて撮影した動画が以下になります。

L-Ulutimate装着時のゴースト発生の様子
街灯が視野中心(0度)に写る状態から鏡筒を上方に5度まで動かしたもの

街灯の左の明るいものは看板で、街灯の上下や斜めに見える光条は網戸と窓に埋め込まれた針金によるものです。寒いので窓を閉めたまま撮影しているため、以降の画像で光条の様なものが写っていてゴーストと紛らわしいですがご容赦ください。

街灯からある程度離れたところで、ゴーストが見えてくるのが分かると思います。街灯との離角が約4度で鏡筒を固定し撮影したものが以下の画像です。

M41撮影時と同等のゴーストが発生した様子
街灯との離角を4度にしたもの

光源(街灯)が下にあるので向きは逆ですが、M41を撮影したときと形状や色が良く似たゴーストが出ました。

では、フィルターをCBPにしたときはどうでしょう。上で作った動画と同じものを作ってみました。

CBP装着時のゴースト発生の様子

L-Ultimateと同じ様なゴーストの出方で、レナード彗星の動画で出ているゴーストともよく一致します。

こんな感じでゴーストを再現できたので、ゴーストの原因を見つける作業はそう大変ではありませんでした。
なお、CBPを付けた場合ですが、4年前のフィルターの取付け方から現在のフィルターの取付け方に変えるとこのゴーストは出なくなります。こういった現象も、原因を特定する材料になりました。

ゴーストの原因

今回のゴーストは、形状や輝点(街灯)の位置に対する動きなどから、鏡枠(又はレンズのコバ)あたりの反射で起こっていることは予想がつきました。あとは、殆どの場合「強い光を当てた時に光って見える場所」が原因という、当たり前といえば当たり前の経験則をもとに、原因箇所の特定を行います。

その際、いきなりL-Ultimateだと透過率が低く原因個所が見づらいため、フィルターはCBPとし、ゴーストが出た4年前の取付け方(下図)にして対物レンズの前からライトを照らしてみました。

4年前のCBPの取付け方

すると、延長筒の一部が非常に明るく光って見えます。多分の枠の反射が原因と思われます。

フラットナーを装着して像側から覗いた様子

現在のCBPの取り付けは、以前記事にしたフラットナーをプチ改造してフラットナー前面にねじ込んでいます。そのためこの延長筒は使わないので、ゴーストが出なくなるのも当然です。

現在のフィルターの取り付け方
左:プチ改造したフラットナー、右:上部にCBPを装着した様子

では、L-Ultimateは上図の(現在の)取り付け方なのにゴーストが出るのは何が原因でしょうか?

L-Ultimateを装着し今度は対物レンズ側から覗いてみると、L-Ultimateの枠が結構明るく光っています。

L-Ulutimateを装着して対物レンズ側から覗いた様子
対物レンズは外した状態、右は光っている部分の拡大

フィルターを取り出してCBPと比べてみると、L-Ultimateの方が枠の反射が非常に強いことが分かります。

左:L-Ulutimate、右:CBP

CBPは枠の反射が少ないため、L-Ultimateと同じフラットナー前面にねじ込んだときゴーストが出ていないと考えると辻褄が合います。

原因の特定

原因を取り違えて対策しても無駄になるので、本当にL-Ultimateの枠の反射が原因かを以下の様にフィルターに絞りを付けて確認してみました。こうすると、枠に光が当たらないのでゴーストは出ないはずです。

L-Ulutimateの前面に紙で作った絞りを貼り付け

以下は結果画像で、予想通りゴーストは発生しません。

L-Ulutimate前面に絞りを貼り街灯との離角を4度にしたもの

簡易的な確認ですが、この結果をもってL-Ultimateの枠の反射が原因と特定してよさそうです。

対策

対策としては以下の2つが考えられます(※原因の特定で作った絞りを付けるという手もありますが、光束が大きく蹴られるので除外しています)。

  • ①フィルターをセンサー直上につける
  • ②枠の反射を減らす

②は塗料を塗るか低反射のシートを貼ることになるので、追加投資が必要です。なので、まずは①を試してみました。

L-Ulutimateをカメラの前面に付け街灯との離角を4度にしたもの

確かにあのゴーストは出なくなります。但し、よく確認すると街灯との離角が3度程度で極薄く別のゴーストが出るようです。

L-Ulutimateをカメラの前面に付け街灯との離角を約3度にしたもの
(上の画像よりもゲインを上げ露光時間を延ばしている)

今回の撮影には影響しないレベルかもしれませんが、現在は出ていないものなのでできれば避けたいです。また、反射率の高いフィルターがセンサーに近くにあると、センサー表面も反射率が高く且つ散乱もあるので何かと迷光が発生します。(色々書きましたが、苦労してフラットナーをプチ改造し取り付けたフィルターネジを使わないのは勿体無いというのが本音です。)

そのため多少出費はありますが、②もやってみることにしました。購入したのは以下です。

左:真・黒色無双、右:カニ目レンチ

左の真・黒色無双は「世界最黒の塗料」という謳い文句の水性塗料で、天文界隈の方ならご存知かと思います。剥がれやすいという欠点もある様ですが、今回はあまり触る場所ではないのでこれにしました。

あと、右のカニ目レンチは今まで持っていませんでした。精密ドライバー1本で抑え枠を外そうとすると、お高いフィルターを傷つける可能性もあるので購入しました。実際フィルターを外してみると、抑え枠は緩く締められていたのでカニ目レンチは無くても良かったのですが、光学機器を扱っていると必ずどこかで使うことになるので特に買っても損はなかったと思います。

フィルターの枠に塗料を塗ったあと、CBPと比べてみました。

左:が真・黒色無双塗装済みのL-Ulutimate、右:CBP

いかがでしょうか。真・黒色無双の効果は絶大ですね。ほぼ反射光はなくなりました。写真は表側からの撮影なので見えませんが、裏側も同様に処理しています。そして、この状態のL-Ultimateを装着して撮った画像が以下になります。

塗装済みのL-Ulutimateを付け、街灯との離角を4度にしたもの

狙い通り、ゴーストが出なくなりました。

参考までに、CBPを以前の付け方で付けた時のゴーストに対しても確認してみました。
まず、ゴーストの原因となっている延長筒の塗装前と塗装後の画像です。

左:塗装前、右:塗装済

光の当たり具合が少し違うので同じ土俵での比較になっていませんが、塗装済みのものはほぼ反射光はありません。次にCBPをこの延長筒に付けたときの結果です。

左:塗装前、右:塗装済

こちらも、塗装後はゴーストが出ません。やはり枠の反射が原因で、塗装することでゴースト対策ができることが分かります。

長々と書きましたが、今後は②の対策を行った状態でM41の撮影に挑みたいと思います。

まとめ

L-Ultimateを使ってM41を撮影する際にシリウスによるゴーストが出てしまうことが分かり、今回その原因の特定と対策を行ってようやく撮影する準備が整いました。

ゴーストの原因特定と対策という様な作業は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、整理された状態で記録を残しておかないと、後で何かしら不具合が起きた際にどういう確認をしたかが振り返れなくて困ることが多々起きます。そのため、詳細を覚えているうちに記事にしました。実際の撮影はこれからですが、この記事をご覧になる皆さんにも何かの参考になればと思います。

最後に、冒頭に載せたゴーストありのデータを色々弄って仕上げた画像を載せておきます。

M41(ゴーストを軽減したあと通常行っている処理をしたもの)
撮影データは前述の通り
使用ソフトは前述の物に加え、AstroSurface, Neat Imageを使用

StaeNet2で星無し画像を作り、G-ch、B-chのデータをモノクロ化して引き算という処理で青緑のゴースは軽減させましたが、赤い星雲と同じ色のゴーストはそのままです。
今回の対策で、次はこのゴーストが無い画像が得られるはずです。また、星の色を出すためにはバンド幅の広いフィルターでの撮影も必要になります。果たして今シーズン中に満足のいく画像を撮ることができるでしょうか?楽しみです。

C/2025 A6(Lemmon彗星)の撮影

話題のLemmon彗星ですが、当地では天候が悪い日が続いており数少ない好天の日は自分の都合で撮影できないという状況で、なかなか撮影の機会が得られませんでした。
世間からはかなり乗り遅れましたが、10月終盤から11月初めにかけてようやく撮影することが出来ました。

10月29日

10月下旬は事情があり鹿児島の実家に帰省していました。10月最終週の九州南部は天候も良く撮影好機ではありましたが、何かと用事があり「撮影は東京に戻ってからだな…」と半ば諦めていました。

そんな中、10月29日の夕方に1時間ほど時間が取れたので、西側が開けた場所を探して撮影することにしました。撮影した場所は鹿児島市内某所で、空が暗い実家ではありませんが自宅に比べればかなり光害は少ない所です。しかし、いつもの機材は持ち帰っておらずコンデジでの固定撮影でした。

撮影日時: 2025/10/29 18:56-19:03 @鹿児島
OLYMPUS SH-1, 固定撮影
Fl=9.8mm, Fno.=11.6, ISO=640, Exp.=20s ×10 frames (1mn 40s)
DSS, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

画面中央やや上に小さく写っているのが分かるでしょうか?

いつも見ているXやブログなどでは雄大な尾を引いた彗星の写真が数多く出回っていたのでもう少しまともな結果を期待しましたが、思った以上に残念なものになりました。ISO感度を上げるとノイズが盛大に出るカメラなので仕方ないですね。この程度でも写っていて良かったと思うことにします。

11月1日

自宅に戻った翌日の11月1日は午後から晴れという予報。これは撮影せねばということで、帰省の疲れを押して17時ころから準備に取り掛かりました。

どの機材にするか少し悩んだ末、鏡筒はFMA135、架台はAZ-GTiです。FMA135+ASI533MCPだと彗星の尾がはみ出てしまいますが、これより焦点距離が短いものは50㎜のレンズしかもっておらずそれだと像が小さすぎるという判断でした。また、北極星が見えないベランダだと夕方の極軸合わせは難しいのでAZ-GTiの方が無難だと考えました。

撮影した結果が以下になります。

撮影日時: 2025/11/1 17:48-18:00 @自宅ベランダ
FMA135, ASI533MCP, CBP, AZ-GTi
Temp.=0℃, Gain=150, Exp.=24s×34frames (Total 13mn 36s) 
彗星基準でスタックしたものと恒星基準でスタックしたものを合成
DSS, Siril, GraXpert, Starnet, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

強めにストレッチしたので背景ムラ除去とデノイズに苦労しましたが、イオンテイルとダストテイルがちゃんと分かります。1枚目のコンデジ画像と比べると雲泥の差ですね。自宅での撮影でやっと満足のいく画像が撮れました。

少し分かり難いですが、画面の上の方ではイオンテイルが複雑な形状をしています。この画像と同様に、トータル15分前後の撮影をあと3セット撮影していたので、都合4枚の画像でタイムラプス動画にしてみました。左側は通常画像で、右側は尾の形状が分かり易い様にStarnetで星消しした画像を反転させたものになります。

前出の画像と以下の画像計4枚をタイムラプス動画にしたもの
 ・17:34-17:46, Exp.=26s, 45frames (Total 12min)
 ・18:03-18:19, Exp.=24s, 40frames (Total 16min)
 ・18:20-18:44, Exp.=24s, 40frames (Total 16min) 
機材は前出の画像と同じ、他の撮影条件は Temp.=0℃, Gain=150, 
DSS, Siril, GraXpert, Starnet, AstroSurface, Neat Image, GIMP, PIPPで処理

まるでお線香の煙が立ち昇る様にイオンテイルが変化しているのが分かります。この様な尾の時間変化が分かる画像を撮影できたのは初めてです。

11月3日

11月2日は夕方西側に雲が多く張り出し撮影が出来ず、翌日の11月3日に再度撮影ができました。11月1日の撮影では予想通り尾が画面からはみ出したので、少し像は小さくなりますが50㎜のカメラレンズで撮影してみました。また、焦点距離が短いので極軸がある程度ずれていても良かろうと考え、架台はStar Adventurer GTiとしました。

以下が結果画像です。

撮影日時: 2025/11/3 17:57-18:26 @自宅ベランダ
OLYMPUS F.ZUIKO 50mm(絞りF4), ASI533MCP, CBP, SA-GTi
Temp.=0℃, Gain=150, Exp.=60s×30frames (Total 30mn) 
彗星基準でスタックしたものと恒星基準でスタックしたものを合成
3008x3008 → 1920x1920にトリミング
DSS, Siril, GraXpert, Starnet, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

画角を広げたことで長い尾が写るのではと期待していましたが、尾が淡く思ったほど長くは写っていませんでした。この程度ならば、多少尾ははみ出してもFMA135で撮った方が良かったかもしれません。

それでも11月1日の画像と比較するとイオンテイルとダストテイルが少し離れたのも分かるので、記録画像としては十分ですね。

まとめ

昨年は紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)を楽しむことができましたが、まさかその1年後にまた彗星を楽しめるとは思ってもいませんでした。

昨年雲に何度も邪魔されたことを考えると、今回、撮影回数は少ないものの雲に悩まされることなくじっくり撮影出来たのは幸運でした。また、イオンテイルの複雑形状や時間変化まで捉えられて、かなり満足度の高い撮影となりました。

まだ暫くは楽しめそうなので、都合が付けば撮影したいと思います。