Sh2-308(ミルクポット星雲)を撮影

昨年9月末にOptolong のL-Ultimateを購入して以降、ここのところDSO撮影は全てL-Ultimateを使っています。今回はその中から、かなり時間をかけて撮影したSh2-308を紹介したいと思います。

過去の撮影結果

Sh2-308は、過去2回ほどトライして残念な結果に終わっています。そのときの画像はこんな感じです。

左: 2021/2/7 23:10-23:53, 2/16 21:48-22:32, 2/19 21:10-22:38 @自宅ベランダ
EVOGUIDE 50ED+Flattener, ASI533MCP, AZ-GTi, UHC+UV/IR-Cut
Temp.=-15℃~-18℃, Gain=300~350, Exp.=25~45s, 226frames (Total 2hr 18mn 33s)
右:2022/1/3 23:33-24:15 @実家(鹿児島)
FMA135, ASI533MCP, Astro R-77赤道儀, CBP 
Temp.=-10℃, Gain=400, Exp.=32s, 56frames (Total 29mn 52s)

左は2021年に自宅で撮影したものです。この頃は1つの被写体に対し露光時間30分程で撮影することが殆どでしたが、それでは全く露光不足だったので頑張って2時間以上撮影ました。結果はご覧の通りで、明るい部分が何とか写った程度でした。

右は、2022年に帰省中の実家で撮った画像です。この日は時間が取れず総露光時間は30分程です。実家だと空が暗いので短時間でも多少は写るかと期待していましたが、予想以上に薄くしか写りませんでした。

使ったフィルターは、前者はUHC+UV/IR-Cutで後者はCBPです。かなり淡い星雲なのでQBPを使って実家で長時間撮影すれば何とかなるかもと考えていましたが、実家では自宅で撮れない被写体を出来るだけ多く撮ることを優先してしまうので結局今まで撮影しないままでした。

今回の撮影

L-Ultimateを何度か使ってみて、自宅からでも実家の暗い空と同等の画像が撮れたという実績を踏まえ、今回 自宅からこの星雲を狙ってみることにしました。

Sh2-308は南天の低高度(当地では南中時の高度が30度ほど)の被写体です。東から南東方向は都心や横浜あたりの光害を受けるので、南中前後あたりから撮影を開始して高度20度くらいまで撮るとすると、1日で撮影できる時間は2時間半くらいです。

最初に撮影を行ったのは2024年11月25日で、南中の少し前から撮影を開始しました。以下の画像は撮影中の様子で、ライブスタックの画面上で星雲の形が分かります。画像は2時間経過時点ですが、3~4枚スタックされた状態でも形が分かったのでかなりワクワクしながら撮影していました。

撮影中のデスクトップ画面

高度が低くなり、撮影画像の背景が明るくなり始めたところで撮影を終了。総露光時間は2時間20分となりました。処理した結果が以下なります。

2024/11/25 2:12~4:32 @自宅ベランダ
EVOGUIDE 50ED+Flattener, ASI533MCP, SA-GTi, L-Ultimate
Temp.=-10℃, Gain=300, Exp.=300s×28frames (Total 2hr 20mn)
DSSでスタック, Siril, GraXpert, Neat Image, GIMPで処理

さすがナローバンド。以前の撮影結果との差は明らかで、Sh-308だけでなく背景の星雲も薄く写っています。ただ、やはり淡い星雲です。2時間半弱では露光不足の様で、もう少し強めに炙り出すとノイズが目立ち背景がザラザラします。もっと画質を上げたいと思い、1日撮り増し、また1日撮り増し…と撮影を続け、気が付けば以下の様に5日間撮り増しを行っていました。

11月29日 1:51~4:41 (34フレーム、露光時間2時間50分)
11月30日 1:46~4:36 (34フレーム、露光時間2時間50分)
12月1日 1:53~4:44 (34フレーム、露光時間2時間50分)
12月9日 2:01~4:06 (25フレーム、露光時間2時間5分)
12月28日 0:19~2:54 (31フレーム、露光時間2時間35分)
※カメラの冷却温度と露光時間は全て同じ、ゲインは11/29が350、それ以外は300。

トータルで186フレーム、総露光時間は15時間30分、今までで最長の撮影となりました。

終結

結果はこの様になりました。

Sh2-308最終結
機材、撮影日時、撮影条件などは上述の通り
DSSでスタック, Siril, GraXpert, Neat Image, AstroSurface, GIMPで処理

どうでしょう。Sh2-308本体がかなりはっきりしただけでなく、2時間台では薄くしか写っていなかった背景の星雲もかなり見えてきました。

実は11時間ほど露光した時点で一度処理し、Xにポストしています。その状態でも十分な結果でしたが、もっときれいに写したいと更に撮り増ししたものの、強く炙り出すとやはり背景のノイズが目立ってしまいます。変わった点といえば背景の星雲が少し濃くなったことくらいです。10時間を超える露光時間になると、4時間半ほど追加しても大きくは変わらないんですね。

そしてその背景の星雲ですが、正しく表現できているかはあまり自信がありません。フラット補正と傾斜補正は行っていますが、他の方の画像と比べるとなんだか微妙に違う気がします。ノイズが目立つだけでなくこの背景の自信の無さもあって、淡い部分は無理に炙り出さず控えめにしています。

まぁ、細かい点は色々とありますが、まともに写せなかった被写体をこれだけきちんと写せたので、かなり満足な結果になりました。

まとめ

今回、デュアルナローで16時間近い露光時間をかけ、以前上手く撮影できなかったSh2-308を撮影することができました。自宅からこれだけの画像が撮れたのですから、十分すぎる結果です。

ただこれだけちゃんと写ってくれると、贅沢な話ですが細かい点が気になりあら探しをしてしまいますね。上に記載したノイズや背景の星雲以外にも、解像感を上げたいとか色々と欲が出てきます。しかし、さすがにそろそろ次の天体を撮影したくなってきたので、今回の結果を完成版としておきます。後々やる気スイッチが入ったら、更に撮り増ししてみようと思います。