M27とM57

前回の記事に引き続き、Sky-Watcher MAK127にKenko クローズアップレンズNo.4とNo.5を2枚重ねてレデューサーとした構成で撮影した画像を紹介します。

r77-maabow.hatenablog.com

M8,M17を撮影したあと、他に面白そうな被写体はないかと選んだものが惑星状星雲のM27とM57です。惑星状星雲は視直径が小さく、特にM57は視直径が小さいので本当ならばMAK127の直焦点(FL=1,500mm)か、クローズアップレンズ1枚(No.5でFL=1,200mm)で撮った方が良かったかもしれません。しかし、この構成でどの程度写るか見てみようという事で撮影してみました。

M27

7月24に撮影して仕上げてみると、総露光時間は36分でしたがかなり良く写っていました。X(旧Twitter)に投稿して多くの「いいね」をもらえて気を良くしたので、更に周りの淡い部分が写らないかと思い、2日ほど撮り増しして総露光時間は2時間半弱となりました。

また、この撮影ではガイドがかなり乱れてしまい、星像が流れるフレームが多かったので、星が丸に近いフレームだけでスタックしたもの(総露光時間40分程度)から星だけの画像を作り、2時間半の星無し画像と合成しています。

M27:撮影2023/7/24 2:57, 7/29 2:32, 7/30 2:36 @自宅ベランダ
MAK127+ Kenko Close-up lens No.4&No.5, ASI533MCP, CBP, SA-GTi
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s (以下3日とも同じ)
7/24: 48frames, 7/29: 71frames, 7/30: 73frames, Total 192frames (2hr 24mn)
※恒星は上記より追尾誤差の少ない50フレームのスタック画像から抽出し合成
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

2時間超の露光時間は自分にとって長時間露光の部類なのですが、周囲の淡い羽の様な部分を出すには露光不足の様です。何となく存在は伺えますがまだまだですね。
ベランダの視界の関係で撮影時間の半分ほどが薄明後だったので、試しにそのフレームを除いたもので処理してみましたが結果は変わりませんでした。しかし、星雲の明るい部分は十分満足できる結果です。

星雲部分のみを抜き出して、以前撮影したものと並べてみたものが以下になります。

過去画像との比較(同じ領域をトリミングし同じ大きさになる様にリサイズ)
左:2019/10/8撮影、右:今回の画像

左は以前MAK127に笠井トレーディングの1.25” 0.5xレデューサーを付けて撮影したもので、焦点距離は1,100mmちょっとと今回の構成より少し長めです。総露光時間が約16分と短いので淡い部分が写ってないないのは当然ですが、星雲内の青い部分と赤い部分の境界がボケていてなんとなく平面的な感じがします。

一方今回の画像(右)は淡い部分が写っているだけでなく、青い部分の細かい濃淡も分かり、その中に赤や白い雲がモクモクとしている感じが良く見えて少し立体的に見えます。過去画像から大きく進歩したと言って良いと思います。

一応、今回の星無し画像も掲載しておきます。

今回の星無し画像(星雲部分のみをトリミング)

M57

こちらは、ベランダからだとメイン鏡筒からはギリギリ見えるのですがガイド鏡の視野が壁で見切れてしまいオートガイドできなかったため、ノータッチガイドとなりました。

ノータッチガイドでしかもガイドが少し荒れ気味だったので、露出10秒でも少し星が流れます。そこでいっそのことラッキーイメージングで撮影しようと露出2秒,ゲイン450としてみました。処理はDSSで全フレームスタックしたもの(総露光時間は20分)と、Autostakkertで上位50%スタックしたもの(総露光時間は10分)の両方を使って行っています。

M57: 撮影2023/7/29 1:51 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko Close-up lens No.4&No.5, 
ASI533MCP(ROIで1504×1504を切り出して使用), CBP, SA-GTi
Temp.=0℃, Gain=450, Exposure=2s, 601 frames (20mn)
DSS(改造版), Autostakkert, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

M57はやはり小さいですね。こちらも、星雲部分のみを抜き出して過去画像と比較してみます。

過去画像との比較(ほぼ同じ領域をトリミング)
左:2019/8/17撮影、右:今回の画像

左の過去画像もMAK127に笠井トレーディングの1.25” 0.5xレデューサーを付けて撮影したもので、焦点距離は980mmで今回とほぼ同じです。カメラが今回と異なりASI224MCで、ゲイン500, 露出8秒×91フレーム(総露光時間12分)です。特にラッキーイメージングのつもりではなく、視野回転とガイドの乱れを回避するため短時間露出で高ゲインでした。

そして今回の画像(右)ですが、過去画像に比べるとラッキーイメージングの効果なのか、細部の濃淡が表現できている様です。

ただ、せっかく短時間露出で多数枚撮ったので、何とか細部を出そうと無理やり強調処理をした感はあります。過去画像にはリングの右下に2つの恒星がはっきり写っていますが、今回の画像にはちゃんと写っていません。Starnet2で星雲と分離できた恒星については、AstroSurfaceのデコンボリューションで処理したので過去画像より少しはっきり見えていますが、Starnet2で分離できなかった星は星雲に埋もれてしまったのだと思います。

この辺は、ガイドがかなり乱れていたことが影響しているのかもしれません(あと、壁で少しケラれていたのかも)。そう考えると、全体的には過去画像よりボケていたのでしょう。細部の濃淡が表現できたのは、ラッキーイメージングの効果よりも、総露光時間が倍ほどあるので強めに強調処理が出来ただけなのかもしれませんね。とは言え、過去画像からはだいぶ進歩したのではないでしょうか。

まとめ

前回に引き続き、MAK127とクローズアップレンズNo.4&No.5という構成で撮った画像を紹介しました。

今回は惑星状星雲で、最初に書いた様に視直径が小さいのでクローズアップレンズ2枚重ねの必要はなかったのですが、焦点距離が短くなる分Fno.は多少明るくなるので、長時間露光するにしてもラッキーイメージングにしても、多少有利に働いたのではないかと思います。
この光学系構成の確認という意味合いで撮影しましたが、過去のベスト画像を更新できて満足のいく結果となりました。

なお、今回掲載した過去画像は以下の記事に掲載したもになります。撮影条件などはこちらをご覧ください。

r77-maabow.hatenablog.com

実は、今回の構成に至るまでに色々とレンズ構成を変えて撮影を行っていて、これまで記事に載せた被写体の他に球状星団を多数撮っています。次回以降、紹介できればと思っています。