ASI224MCのカバーガラス破損

前回の記事で少し触れましたが、9月27日にDSOの撮影後に木星を撮影しようとして、ガイド用に使っていたASI224MCを惑星撮影用に付け替える際にカバーガラスを割ってしまいました。同じような失敗をする人は居ないかと思いますが、自省の意味も含めその内容について記載します。

機材構成と当日の撮影状況

DSOを撮影する機材と惑星を撮影する機材で、共通に使っているものは三脚とASI224MCです。本題ではありませんが、持ち物紹介も兼ねて表にするとこんな感じです(太字が共通利用)。

そのため、DSO撮影後に惑星撮影となると、マウントと鏡筒を載せ替えてアライメントを行い、ASI224MCをバローレンズの後ろに付けてようやく撮影開始となります。

この日はシーイングも良く、木星は大赤斑がちょうど0時頃正面に来るため、23時くらいには惑星撮影を開始したいと思っていました。一方で、8月半ばから撮り増しをしようと思っていたNGC7293が悪天候続きで撮影できてなかったため、こちらの撮影も行いたいという状況でした。
そこで、最初にNGC7293を2時間近く撮影しそのあと直ぐに惑星撮影に切り替えようと、8時半を過ぎた頃から準備を始めました。ところがこの日は極軸合わせに手間取り、しかも撮影開始後に星が徐々にズレていくので一旦撮影を止めて極軸合わせをやり直しました。結局1時間ほどロスし、NGC7293を1時間程度撮影したところで0時を過ぎそうになったため、NGC7293の撮影を早めに切り上げ木星撮影のため慌てて機材を入れ替えました。

破損時の状況

架台と鏡筒を載せ替えてアライメントするのはそんなに時間はかかりません。カメラの付け替えも、単にM42→31.7スリーブアダプターからASI224MCを外してバローレンズを仕込んだ延長筒にねじ込むだけです。ただ、この日は慌てていたので、アダプターとカメラの部分を回して(外して)いるつもりだったのに、実際はカメラ本体の上部(蓋?)が回っていることに気付かず蓋が外れる直前まで回してしまいました(言葉では分かり難いので下の写真をご覧ください)。

購入してから4年ほど経っているためか、時々この位置から回ることはあったのですが、いつもは直ぐ気付くいてすぐ閉めていました。あと、アダプター側も、緩く締めているとケーブルを接続するときなどに緩んで回転することがあるため、この日は少しきつめに締めていたのも要因ではあります。そして慌てて外そうとしていただけでなく、確か片手には別の部品(延長筒かなにか)を持ったままアダプターを回していたので、本体上部が回っているか気付くのが遅れました。

蓋を外してしまうとゴミが入ってしまうので、気付いてすぐ元の位置までねじ込もうとするとなにか引っかかっている感じがしました。しかし、ベランダで暗い中での作業です。首掛け式のLEDライトを点けてはいたものの、外から見ても何が引っかかっているか分かりません。内部構造をあまり理解してなかったので、何かパッキンの様なゴム的なものがあるだろうからそれが引っかかっているのだろうと思い、そのままねじ込んでみると“ガリガリ”という本来しないはずの音がして、あれっ?と思った時には“パキッ”という音がしました。恐る恐る蓋を外してみると、カバーガラスが割れていました。

以下の写真は後日撮影したものですが、割れた直後は黒いゴムがズレていて、蓋を開けたときにカバーガラスとその破片がポロリと落ちてきました。きっと、ゴムと一緒にカバーガラスもズレて斜めになったところを無理にねじ込んだので、パキッといってしまったのでしょうね。

割れてしまったものは仕方がないので、カメラをASI533MCPに入れ替えて木星撮影に移ろうとも思いましたが、割った際に回路やセンサーを傷つけて利用不能になっているかもしれないと思い、その確認も兼ねてその場で一旦上の写真の左の状態にして蓋を締めて撮影してみました。
すると、ゴミだらけでしたがちゃんと写ったので一安心。幸い、割れた部分も視野外で撮影には影響なさそうです。一旦部屋に持ち込んでカバーガラスとセンサー部をブロワーで清掃してもう一度撮影してみたものが、前回の記事に載せた以下の木星です。大赤斑が中央に来る前に撮影したかったのですが、すでに中央を過ぎていました。

一応撮影できたものの、ブロワーでゴミを飛ばしただけなのであちこちにゴミが残っていて、ゴミが少ない場所に被写体を留めておくのが大変だったので、結局これ以降はカメラをASI533MCPに入れ替えて撮影しました。しかし皮肉なもので、処理してみるとこの画像が今まででベストの木星画像になりました。

仮修理

本来ならば、カバーガラスを購入して交換するところです(ZWO社のホームページを見ると、ASI224MC用のカバーガラスはARコートのD21で $16.00、2022/10/6時点では¥2,316)。しかし晴れたら撮影したいので、購入したものがいつ届くかを気にしながら天候と睨めっこしているのは精神衛生上よくありません。とりあえずすぐ使える状態にするため、ひとまずカバーガラスの欠けた部分を接着することにしました。

用意したものは以下の2点で、レンズクリーナーは家にあったので接着剤を100円ショップで購入しました。

 

まずは、カバーガラスの欠けた部分に接着剤を付け、破片を以下の様に接着します。

接着剤が硬化したところで、はみ出した接着剤をカッターナイフで落とします。視野から外れた部分なので多少の傷はやむなしですが、とりあえず傷は付かずに済みました。

そして、センサーの清掃です。表面にレンズクリーナーを数滴垂らして、眼鏡用のクロスで数回軽く拭き取ってゴミを取ります。以下はその直後の写真です。

外からで見る限りは、撮像面上のゴミは確認できませんでした。左側に傷がありますが、多分、カバーガラスが割れたときに付いたのだと思います(撮像面上でなくてラッキーでした)。カバーガラスも同様に清掃して組み込んだ状態が以下です。

撮影時の影響が少ない様に、欠けた部分が画面の長辺側に来るようにしました。見た感じでは、惑星撮影とガイド用であれば特に問題なさそうです。

組み込んだあと、カメラの前側にピンホールを付け窓に向けて撮影してゴミの状況を確認しました(その時キャプチャしたものが以下です)。

大きい影はブロワーで動くので、カバーガラスの手前側のものの様です。小さい影がセンサー上に残ったゴミの様で、分かるレベルのものが4か所ほどありました。センサー面を清掃しなおしても良いのですが、何度か開けているうちにカバーガラスの接着部が剥がれてしまうといけないので、一応これで仮修理終了としました。

その後

2日ほど惑星撮影を行ってみたところ、中央付近に1か所気になるゴミはありますがROIの場所を少しずらすことで、特に問題なく使えました。また、ガイド用としても使いましたが問題はありません。
そのためカバーガラスは購入せず、現時点はこのまま使っています。今後何か不都合があれば、カバーガラスを購入しようと思っています。

まとめ

なんとか使える状況に戻りましたが、センサー周りを破損して使えなくなる可能性も十分ありました。カバーガラスが割れただけで済み、割れた個所も(現用途の)撮影には影響しない場所だったのは不幸中の幸いでした。

慌てていたとはいえ、アダプターの接続部のすぐそばには基板やセンサーなど繊細なものが置かれているわけなので、取扱には十分注意する必要がありました。また、中の構造を知っていれば、少なくともカバーガラスを割るところまでにはならなかったと思います。反省点は色々ありますが、一度この様な経験をしたので以降は同じ失敗はしないはずだと思いたいです。
こんな失敗をする人は居ないと思いますが、この記事が何かの参考になれば幸いです。