Sky-Watcher Mak127で撮るディープスカイ
天候が悪い日が続いています。本日(8/27)午後は久々に青空が見えていますが束の間の晴れ間の様で、予報では夜から当面の間は曇りや雨のようです。
撮影できない状態が続いているので、だいぶ前に撮ったものですがMak127で撮影したDSO(Deep Sky Object)の画像と、その撮影に至る経緯もなどを紹介したいと思います。
Mak127の主な対象天体と撮影したDSO
Sky-WatcherのMak127はマクストフカセグレン式反射望遠鏡で、焦点距離は1500㎜、Fno. は11.8です。色収差もほとんど無く、眼視でも非常にシャープな像を楽しむことができます。ただし、長焦点で暗い光学系なので、観察・撮影の対象としては主に惑星や月、2重星などになるかと思います。以下は先日(8/22)撮影した惑星です。
一方DSOはというと、暗い光学系であるためにどうしても明るい天体に限られてしまいます。M42, M45, M13など、明るい星雲や球状星団などはある程度楽しめますが、惑星や月などの様に“よく見える”というわけではありません。
私が天文復帰して最初に購入したのがMak127とAZ-GTiのセットで、最初はもちろん惑星や月がメインでした。その後、試しに惑星状星雲を撮影してみるとそれなりに写せたので、それをきっかけに銀河なども撮影するようになりました。直近の撮影画像が以下なります。
以降に、Mak127でDSOを撮影するようになった経緯などを、撮影した画像を交えて記載します。
Mak127+ASI224MCによる撮影
Mak127購入直後は、手持ちの銀塩カメラレンズ(OLYMPUS ZUIKO AUTO-T 200mm F4)にASI224MCを付けてDSOを撮影していたのですが、惑星状星雲を撮影するとかなり明るく写ることが分かりました。そこで試しにMak127で撮影したのが以下の画像です。
直焦点なのでFno.11.8ですが、やはり惑星状星雲は明るく写ります。NGC3242の方は、周りに星が少なく、SharpCapのライブスタックもDSSでのスタックもできずにAutoStakkertを使うなど結構苦労しました。この頃の画像処理はGIMPで強調処理やガンマカーブを弄るだけだったので、かなり粗く星像も肥大した画像になっています。お見せする様な画像ではありませんが、長焦点で撮影した初めてのDSOだったので、このような画像でもすごく嬉しかったのを覚えています。
その後、低倍率で眼視しようと笠井トレーディングの0.5x 1.25インチレデューサーを購入しました。眼視では倍率は低くなるものの視野も狭くなるため結局使うことはなかったので、撮影で明るさを稼ぐためにこのレデューサーを使う様になりました。Mak127と組み合わせたときの倍率は約0.65x程度で、Fno.は7.7になります。この構成で撮影したものが以下のM57になります。
光学系が明るくなり視野も広がったためか、NGC3242やNGC2392と比べるとだいぶまともな画像になったと思います。
Mak127+ASI533MCPによる球状星団、惑星状星雲
その後EVOGUIDE 50EDを購入して星雲・銀河をASI224MCと組み合わせて撮影していましたが、もっと広い視野を撮影したいと思う様になりました。そこで、2020年の8月にコロナの定額給付金をつぎ込んでASI533MCPを購入。EVOGUIDE 50EDとの組み合わせでいろいろなDSOを撮影していました。しかし、球状星団や銀河など小さい天体は全く迫力のない画像となってしまいます。
せっかくの冷却カメラなのもっと大きく撮影したいと思い、Mak127とASI533MCPを組み合わせて撮影することにしました。そして、手始めに撮影したのは、やはり明るい球状星団や惑星状星雲でした。
実際に撮影してみると、ASI224MCでは問題にならなかった画面周辺の収差や減光がひどく出ます。そのため、レデューサーをセンサーに近づけることで倍率を0.65x から0.75xにすることで対応しました。Fno.は8.9となりますが、冷却カメラということもあり、ある程度の画像が得られました。ただ、露光時間が20分前後と短いためか、暗い星が写っておらず他の方々の画像やStellariumの画像と比べると一回り小さく見えます。明るい球状星団であっても、露光時間はある程度かける必要があるようです。
なお、この頃までは、SharpCapで数分間ライブスタックした画像を数枚保存して、それをDSSでスタックしていました。SharpCapは無料版を使っているので、ライブスタック画像には追尾誤差に伴うホットピクセルの軌跡が残ります。それをGIMPのスタンプツールで消していました。
ちょうどこの頃にFMA135を購入しています。FMA135は星像も細かいので以前より画質にも多少拘る様になってきました。それに加えASI533MCPは画素数も多くホットピクセルの跡をスタンプツールで消すという作業が面倒になり、ようやくrawのfitsファイルを保存しDSSでダーク減算してスタックする様になりました。その様に処理を変えてから撮影した画像が以下になります。
露光時間は16分弱と短いですが、それなりの画像処理を行う様になったためかだいぶいい感じの画像になったと思っています。
この様にちゃんと画像処理を行えば、明るい惑星状星雲や球状星団対してMak127は十分に使える鏡筒だと思います。
Mak127+ASI533MCPによる銀河・その他DSO
M27でいい感じの撮影ができたことで、もっと暗い天体もMak127で撮影できないかと思う様になりました。そしてTryしてみたのがNGC253です。銀河は惑星状星雲の様に明るくは写りません。しかし、露光時間を増やせば何とかなるのでは? と思い撮影してみました。
露光時間は30分弱と以前の撮影より時間はかけていてもやはりかなり暗く写るので、ノイズが目立たない様に少し暗めに仕上げています。ガイドエラーなどで星像の少し甘いですが、思っていた以上にそれらしい画像になりました。予想以上に迫力ある銀河を撮影できて非常に嬉しかったです。
ただ、レデューサーをセンサーに近づけたことによるゴーストが出てしまい、画像処理には非常に苦労しました。
前述のM2やM27でもゴーストは出ていましたが、暗い被写体だと目立ってしまい処理が大変です。それでも、小さい天体の迫力ある画像を撮りたいと思い、他にもいくつか撮影しました。その1つが以下のM1です。
M1はEVOGUIDE 50ED+ASI224MCでも撮影しましたが、やはり長焦点で撮影しただけあって迫力が全然違います。多少ノイジーなのは仕方がありませんが、これだけ写れば自分としては大満足でした。
レデューサーをKenkoクローズアップレンズに変更
DSOをいくつか撮影して8等級位の天体ならば行けそうだという感触を得たので、レデューサーによるゴーストを対策すべく、Kenkoのクローズアップレンズ(No.4とNo.5)を購入しました。Mak127と組み合わせたところゴーストは出ません。その分、周辺減光が大きくなる様ですが、小さい天体であれば画面中央がちゃんと写れば周辺は後処理でなんとか誤魔化せます。
ゴーストが出ないと分かったので、あとは最適と思われるバックフォーカスを決めるため、延長筒を組み替えながら何度か撮影しました。以下は、その時に撮影した画像です。
結果として、クローズアップNo.5を0.76倍(fl=1140mm Fno.9)で使用することにしました(※この時期は買ったばかりのFMA135での撮影やレナード彗星の撮影などで忙しく、数回の撮影で決めたのでこれがベストとは限りません)。
これでようやくMak127によるDSO撮影の光学系構成がFixでき、この構成で初めて1時間以上の露光時間をかけたのが、冒頭に掲載したM64の画像になります。
まとめ
以上の様に、Mak127である程度暗いDSOも撮影する様になりました。購入当初は想定していませんでしたが、思ったより守備範囲が広い鏡筒だと思います。
忘備録として、Mak127でDSOを撮影する際の光学系構成を掲載しておきます。
光学系側はこれでFixとしましたが、これだけでちゃんとした撮影ができる訳はありません。問題は架台です。
AZ-GTiを経緯台で使っているので、もともと長時間露出はできません。そしてそれ以前に焦点距離が1000mmを超えるのでAZ-GTiの追尾精度ではちょっと荷が重い様です。10秒前後の露出でも1フレーム撮るたび数ピクセルガイドズレが起きるので、せっかく長時間撮影しても捨てるフレームが結構あり、またガイドエラーの影響で星像も甘くなってしまいます。
とはいえ、高多数枚撮影して画像処理を頑張れば掲載した程度の画像にはなるので、当面は手持ち機材でなんとか撮影していきたいと思っています。