今シーズンの木星

ここ数か月はブログの更新をサボり気味で、今回も2か月弱空いてしまいました。その間、最も多く撮影していたのは、今月の初めに衝を迎えた木星です。10月終盤から数日前まで何度となく撮影し、処理が終わる前に次の撮影という状況でした。未処理のデータはあるものの、この週末で大方の処理が終わりました。木星の観測シーズンが終わった訳ではありませんが、一旦記事にしておきます。

今回の内容

今回の記事は、画像と動画を単に並べ簡単なコメントを記載するだけにしておきます。X(旧Twitter)にも投稿したものが殆どですが、その総集編という感じでまとめてみました。
撮影や処理で苦労した点やトラブルなどを交えた方が読まれる方の参考になるかと思いますが、長文になり時間もかかってしまうので、それらについては後ほど記事にしようと思います(決して書くのが面倒だから後回しという訳ではありません)

なお、今回の撮影は全て自宅ベランダからなので、掲載している画像や動画の説明に場所の記載は省略しています。

今シーズンベスト画像

最初は今シーズンのベスト画像です。

2023/10/23の木星:撮影時刻23:09
MAK127+Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut, AZ-GTi
Gain=350, Exposure=10ms 6000frames 50%stack(1.5x drizzle) ×7 を de-rotation
Autostakkert, AstroSurface, WinJUPOS, GIMP で処理

昨年のベストは大赤斑が写っていたものでしたが、今回のベストは大赤斑の無いこの画像です。シーイングが良い日の画像はどれも大差はないのですが、私の目で見てディテールが一番良く出ていたと思ったのはこの画像でした。
この日はシーイングも非常に良く、眼視でも良く見えて楽しめました。残念ながら翌日が仕事だったので、大赤斑が見える翌10/24の明け方の撮影は断念しました。

ただ大赤斑が無い画像だけでは寂しいので、次点として以下2枚の画像も掲載しておきます。

2023/11/3の木星(左), 11/15の木星(右)
MAK127+Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut, SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms 6000frames 50%stack(1.5x drizzle)
左:11/3 23:30撮影:9枚をde-rotation
右:11/15 23:01 撮影:7枚をde-rotation
Autostakkert, AstroSurface, WinJUPOS, GIMP で処理

左は衝の日(11/3)のもので、右は11/15に撮ったものです。何れもベスト画像とは僅差のためか、ブラウザ上で見ると(2枚まとめたので縮小表示されると)こちらの画像の方が良く見えます。大赤斑が写っていることもあり、こちらがベスト画像でも良かったかもしれません。

因みに右の画像ですが、細かい模様が写っている様に見えたのでパラメータを変えて数パターンの処理を試してみました。最終的にいつもより強調度合いをかなり落としてあっさりと仕上げたつもりでしたが、出来上がりを他の画像と並べてみるとそんなに違いは分かりません。
毎年1回はもっと上手くディテールを引き出せないかと思考錯誤するのですが、同じ人が処理すると結局似たような仕上がりになるみたいです。「1つのデータを複数の人で処理して比べる」みたいなことをやると、もっと上手い処理の仕方が見つかるかもしれませんね。

タイムラプス動画

昨年木星の動画を作成し、その面白さに味を占めました。

r77-maabow.hatenablog.com

今シーズンも幾つか動画を作ったので、その中から3本を掲載します。

木星の影に隠れるエウロパ

撮影 2023/10/30 1:46~1:57
MAK127+Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut, SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms 6000frames 40%stack(1.5x drizzle)
×11を85%縮小してアニメーションGIFに変換
Autostakkert, , AstroSurface, PIPP で処理

この日のシーイングはあまり良くなく、特にこの撮影を行った時間帯はかなり木星像が揺らいでいました。その影響でエウロパが写っている元画像8枚中6枚でエウロパの明るさが大きく変動していて、明るさを揃える為に強調度合いやトーンカーブを夫々調整したので、作成には結構時間がかかりました。時期的なものもありますが、際小刻みに変わるシーイングは動画化には難敵ですね。デローテーションにより各時刻の画像を作ってから動画にすると像が安定すると思いますが、この動画では試していません。

木星の手前を通過するガニメデ

撮影機材や撮影条件などは上の動画と同じで、撮影日時は2023/ 11/3 23:25~24:55です。50%stack(1.5x drizzle)した54枚の画像を強調処理した後、PPIPで動画にしXMediaRecodeというソフトでMP4に変換しました。

この日は出掛ける予定があり、ガニメデ通過開始には間に合わず既に木星に影を落としている状態からの動画になってしまいました。
また、昨年の反省を踏まえ出来るだけ同じ時間間隔で撮影を行っていましたが、途中から時間間隔が少し長くなっています。撮影しているノートPCのSSD残量が足らないことに気付いたためですが、出先から帰って急いで撮影を始めたのでSSDの空き容量を考える余裕がありませんでした。

木星の雲の動き

撮影機材や撮影条件などは上の動画と同じです。

この動画を作る前に、一度デローテーション無しの5枚の画像で動画を作成しXに投稿しました。その後、かなり日が空きましたが追加の撮影が出来たので、この動画は更に2枚加えた7枚で作り直しました。その際、WinJUPOSのシミュレーションを使って体系IIの経度(CM2)が同じになる時刻を調べ、その時刻の画像をデローテーションにより生成しました(但し、1枚だけ模様の位置ズレが大きいものがあったので、それだけ時刻を1分半ほど早いものにしています)。

下表が7枚の画像の日時などを一覧にしたものです。

「前の画像との間隔」の列は各画像間の時間間隔(右の列は木星の自転でいうと何回転分に相当するか)で、4枚目と最後の2枚の間隔がかなり空いていることが分かると思います。これだけ間隔が空いているのに、全体としては動きが繋がって見えるのは、南北の赤道縞などの動きが遅い領域が多いためです。コマ送りでよく見ると、赤道帯の動きは間が飛んで繋がっていません。

シーイングが良い日が続いて仕事もなければもっと繋がりの良い動画が作れるのですが、こればかりは無理な話ですね。

それにしても木星は色々と変化が大きいので、動画にすると本当に面白いです。

木星と衛星

上に掲載した中にも衛星が写っているものはありますが、以降は、カメラのROI(Region of Interest:撮影領域)を広げ衛星を入れて撮影したものです。

最初の画像は、上に掲載したガニメデ通過動画の最終フレームと同時刻のものです。右下にあるのはイオで、ガニメデ通過より前の11/3の18:30頃から20:30過ぎ位まで木星の手前を通過していました。今回の衝は、イオとガニメデが木星面を通過するという豪華なおまけ付きだった訳ですが、イオの通過の方は都合が悪くて見られず残念でした。

撮影 2023/11/4 0:54
MAK127+Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut, SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms 3800frames 50%stack(1.5x drizzle)×6
木星+ガニメデの部分のみ6枚のデローテーションし1枚処理のものと合成
Autostakkert, , AstroSurface, WinJPOS, GIMPで処理

次の画像は、左側に3つの衛星(ガニメデ、エウロパカリスト)が三角形の配置になったものです。もう少し早い時間だと、丁度正三角形だったらしく、事前に調べてなかったので惜しいことをしました。

撮影 2023/11/14 20:58
MAK127+Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut, SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms 3800frames 50%stack
Autostakkert, , AstroSurfaceで処理

参考ですが、上の画像の前日はこんな感じでした。

撮影 2023/11/13 22:01
MAK127, ASI224MC, UV/IR-cut, SA-GTi
Gain=200, Exposure=10ms 3800frames 50%stack
Autostakkert, ,AstroSurface, GIMPで処理
木星本体と衛星は個別にトーン調整

左の3つの衛星が翌日三角形になった訳ではなく、以下の様に移動しています。

2023/11/13 22:01~11/14 20:58までの木星の衛星の動き
Stellariumによるシミュレーション

まとめ

木星は惑星の中でも視直径が大きいため、惑星向けとしては比較的小口径のMAK127でも静止画・動画共に十分楽しめます(もちろん眼視も)。ただ、木星の撮影で毎回頭を悩ませるのは、撮影データを保存するストレージの容量です。特に動画用に撮影するとなると、容量がどんどん減ってしまいます。

今年はMAK127をDSO撮影でも多用し、特に新月期はDSO撮影の開始前や終了後に惑星を撮っていたので、昨年より撮影数が少ない状況でした。しかし、10月後半の満月期以降は木星の衝と重なり大量に撮影したため、昨年増設した4TBの外付けHDDが11月上旬には一杯になり、今回6TBの外付けHDDを購入してしまいました。

痛い出費ではありますが、例年であればシーイングが悪い日が多くなる時期に、今回11月を過ぎてもシーイングが良い日が多く大量に撮影出来たのは寧ろラッキーだったのでしょう。大容量のHDDも随分安くなったし、撮影も楽しめたので十分元は取れていると思います。

来年、木星の衝はもっと遅い時期になりますが、またストレージ容量で悩まされることになるのでしょうか?…