昨年末に撮影したDSOたち

昨年12月下旬に幾つかDSOを撮影し、一旦処理してTwitterにも投稿していました。しかし、今一つ色調に納得できず何度か手直ししているうちに年を越してしまいました。完全に納得出来た訳ではありませんが、ようやく最終版を作りましたので紹介します。

なお、今回は全て EVOGUIDE 50ED+フラットナー, ASI533MCP, スカイメモS による撮影で、FMA135+ASI224MC+PHD2 によるオートガイドです。

M45

12月19日と25日にM45を撮影しました。この日は以前撮影した馬頭星雲の撮り増しを考えていたのですが、撮影できる時期・時間帯が限られる天体が幾つかあるのを思い出しそちらを先に撮ることにしました。

その1つがM45です。M45は東側にある時は建物の影になり、天頂付近だと上階のベランダで見えず、西側で高度45度以下になってやっと撮影でき、その後2時間余りで西側の壁に隠れます。
この時期は0時頃から2時頃まで撮影可能で丁度馬頭星雲の撮り頃(南中前後)と重なり、両者を同じ日に撮影できないためM45を優先しました。

M45: 撮影日 2022/12/19, 12/25 @自宅ベランダ 
12/19 0:01: -15℃ Gain 200 128s×58 CBP使用
12/25 23:47: -15℃ Gain 200 180s×41 CBP使用
DSS(改造版), SiriL, Starnet2, GIMP で処理

19日の露光時間は2時間程で十分かと思っていました。しかし、処理するとどうしてもノイズが目立ったので、25日に2時間ほど追加しました。それでもまだノイズが目立つのですが、あまりM45ばかりに時間をかけてもいられないので、とりあえずこれで一旦完成としました。

仕上げるに当たっては、ノイズだけでなく色調についても少し苦労しました。私はSiriLで色補正を行ってからGIMPで好みの色に調整しています。SiriLで色補正した直後はかなり薄く白っぽくなったので、青成分をかなり盛って一旦Twitter上にアップしました。その後、よく見ると青以外の色合いも結構含まれているので、全体のバランスを見直しながら微調整しているうちに迷子になってしまいました。微妙に色が違う画像を幾つか作り、結果的に上の画像に落ち着きました(特に決め手があった訳でななく、感覚的なものですが…)。

M33

M33も撮影時期・時間帯が限られる天体の1つです。こちらはM45より撮れる時間帯が早く、この時期は22:00頃から23:30過ぎ位まで撮影出来ます。なので25日にM45を撮影する前に撮影し、29日に撮り増ししました。

M33: 撮影日 2022/12/25, 12/29 @自宅ベランダ 
12/25 0:01: -15℃ Gain 200 180s×6 CBP使用
12/29 22:22: -15℃ Gain 200 180s×26 CBP使用
DSS(改造版), SiriL, Starnet2, GIMP で処理

まだ露光不足の様で外側の腕の部分が炙り出せず、少し小さいM33になってしまいました。その後タイミングが合わず追加撮影できてないので一旦これで完成としています。できれば撮り増ししたいですが、他にも撮影したいものもあるので気付いたら時期を逃してしまっているかもしれません。

あと、この撮影では1つ失敗をしています。
25日は所用で22時過ぎから1時間半ほど外出する予定があり、出かける前に撮影を開始し戻ってきたら撮影を終了して次の(M45を)撮影.. というつもりでいました。
21時を過ぎた頃から準備を始めましたが、準備に手間取って出かける時間ギリギリになったので、PHD2のキャリブレーションが終わると同時にShapCapのLiveStackボタンを押して早々に出かけました。帰宅してみると1フレームしか保存されていません。その1フレームの画像が以下です。

私は、いつもライブスタック画像を見ながら撮影しています。その際、スタックできたフレームのみを保存する設定にしておいて、保存されたフレームを使って処理します。しかし、この時は1フレーム目が上の様に流れた画像になっていたため、以降のフレームが全てスタックエラーとなり保存されていませんでした。
露出時間が長いと、ライブスタック開始と露出間隔のタイミングによって1枚目にスタック開始直前の露光分が含まれてしまうのは経験していましたが、この日は急いでいてスタックがうまく行っているかの確認を怠っていました。スタック出来なくても保存する様に指定しておくか、スタック開始後にクリアボタンを押しておけば良かったのでしょうが後の祭りです。結局、25日は帰宅後からM45の撮影開始前の18分しか撮影できず、29日に追加撮影しました。

この様な失敗はあったものの、CBPの効果でしょうか「赤ポチ」が少し出ています。2年前に撮影した時は赤ポチが出なかったので、露光不足はありますがこれはこれで満足しています。

バラ星雲

12月25日にM45を撮影したあとバラ星雲を撮影しました。こちらは撮影時期・時間帯が限られている訳ではなく、単にフィルターを入れ替えたくなかったのでCBPでもそれなりに写るものということで選択しました。

バラ星雲: 撮影日 2022/12/26 2:13 @自宅ベランダ 
-15℃ Gain 200 180s×40 CBP使用
DSS(改造版), SiriL, Starnet2, GIMP で処理

そして、M45と同様に色調で悩みました。バラ星雲と言えば中央付近がマゼンタで周辺が赤という認識ですが、SiriLで色補正した状態だと全体的に結構濃い赤になります。なので、かなり青を盛ってそれらしい色合いにしたところで、一旦Twitterに投稿しました。しかし、それでも赤が濃い様に思えて何度か色調を変えました。最終的にはトーンカーブだけを弄るのではなく、彩度を少し落としてからトーンカーブで微調整して仕上げました。

IC434(馬頭星雲)

馬頭星雲は以前も記事にしています。

r77-maabow.hatenablog.com

2時間44分と長めの露光時間にもかかわらずノイズが目立っていたので、12月30日に撮り増しをしました。

馬頭星雲: 撮影日 2022/11/27, 12/4, 12/30@自宅ベランダ 
11/27 2:20: -10℃ Gain 250 128×41 QBP使用
12/4 2:39: -15℃ Gain 200 128×37 CBP使用
12/30 0:20: -15℃ Gain 200 180×36 QBP使用
DSS(改造版), SiriL, Starnet2, GIMP で処理

ぱっと見た感じでは、前回の結果と大きくは変わっていません。しかし、露光時間が伸びたことでノイズが減り、その分強めの強調処理を行ったので解像感が少し上がっていると思います。逆にノイズは前回より若干マシという程度に止まりました。増やした露光時間を、強調処理に使ったという感じでしょうか。

あと、こちらも色調についてはかなり悩みました。前回記事に書いた燃える木との色の差は、QBP, CBPを使用している以上仕方がないとしても、バラ星雲と同様にどうも全体的に赤が濃すぎる様に思えて何度もやり直しました。こちらも上述の様に、彩度を落としてトーンカーブ調整したものを完成版としました。

NGC 2264

12月30日に馬頭星雲を撮影した後、NGC 2264を撮影しました。

NGC 2264: 撮影日 2022/12/30 2:45 @自宅ベランダ 
-15℃ Gain 250 180s×32 QBP使用
DSS(改造版), SiriL, Starnet2, GIMP で処理

こちらも赤が結構濃くなり、更に少しくすんだ感じになります。なので、同様に彩度を少し落としたあとトーンカーブで調整してみました。本当はもっとマゼンタっぽく仕上げたかったのですが、バラ星雲や馬頭星雲の様にはいかずどうやっても思った色合いにはできません。大きくカラーバランスを変えるとかえっておかしな色になるので、この状態で一旦完成としています。

露光時間もまだ短い様でノイズも多いので、もう少し撮り増ししてから改めて色の調整もやってみたいと思っています。

まとめ

処理には多少苦労しますが、出来上がった画像はかなり満足できるものです。もちろん、他の方々の凄い画像を見るとまだまだですが、天体写真を撮り始めた中学生頃を考えると逆立ちしても撮れない画像です。センサの性能やデジタル処理などに加え、QBPやCBPなどのフィルターの効果も非常に大きいと思います。

QBP,CBPを使うと色の調整が難しくなります。波長帯域の制限からくるものでしょうから、これについてはやむを得ません。また、同じく波長帯域制限により光量も減るので、露光時間を延ばさないとノイズが目立ちます。
しかし、光害がある自宅ベランダからこれだけの画像が得られることを考えると、ノイズと色調整に悩みながらの処理はむしろ楽しい苦労と言えるかもしれませんね。