梅雨の晴れ間の撮影(その1) – MAK127で散光星雲 –

ここ2か月以上ブログを書くのをサボっていました。天文活動をしなかったということではなく、晴れた日にちょくちょく撮影を行っていました。主にテスト撮影を行っていたのでネタが無かった訳ではありませんが、その内容はまた別途記事にするとして、今回は6月16日の夜から18日明け方にかけて撮影した内容について記載します。

因みに、この日は梅雨の最中というのに新月期で週末に快晴というとても貴重な2日間でした。多くの地域で天候が良かった様で、Twitterでは「#天文なう」がトレンド入りするという珍事(?)もありました。

2日間の撮影で画像も10枚ほどあり、1つの記事にすると長くなるので数回に分けて記載したいと思います。今回は、6月18日未明にSky-Watcher MAK127で撮影したM20(三裂星雲)とM16(わし星雲)について紹介します。

M20(三裂星雲)

今までMAK127では、惑星状星雲や球状星団、系外銀河をメインに撮影していました。これはMAK127の焦点距離が長く(Kenkoクロースアップレンズとの組み合わせで1,200mm弱)、必然的に視直径が小さめの天体が被写体になるためです。
しかし、特に系外銀河などはかなり暗いので、Fno.が大きいMAK127での撮影は中々の難物です。貴重な梅雨の晴れ間なので、暗い被写体に時間をかけるよりも明るい被写体を1時間前後の露光時間で複数撮影した方が良さそうということで、明るめの散光星雲を被写体にしてみました。

M20は5月末に一度試し撮りしていて、露光時間は8分でしたが結構いい感じに撮れていたので、1時間程度の露光時間でかなりの画像になるのではないかという期待もありました。そして撮影した結果が以下の画像です。

M20: 撮影 2023/6/18 0:10 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi, 
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temperature=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 77frames(57.7min) 
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

結構良く撮れたのではないかと思っています。
明るい被写体だけあって、いつも画像処理に苦労する系外銀河などと比べると比較的楽に処理できました。また、若干の強調処理を入れても、ノイズが大きく目立つ様な事はありませんでした。
欲を言えば、もう少し青い部分を炙り出したかったのですが、流石にそうするにはちょっと露光時間が短かった様で、無理に炙り出すとザラザラになるのでこの位で止めておきました。

M16(わし星雲)

次に狙ったのはM16です。MAK127だと全体は収まりませんが、有名な「創造の柱」をクローズアップで撮ってみました。

M16: 撮影 2023/6/18 1:20 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi, 
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temperature=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 94frames (1hr 10min) 
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

こちらも、非常によく撮れたと思っています。
Hubbleの画像とはいかないまでも、もっとディテールを出してカリッと仕上げたいのはやまやまですが、強調処理を強めるとノイズが目立ってしまったのでこの程度に止めました。もっと露光時間を増やせば、もう少し強調処理を強くかけられるのでしょう。機会があれば撮り増ししてもいいかもしれません。
ただ、後述しますが架台がStar Adventurer GTiでこの焦点距離だと追尾精度が追い付かないので、解像感はあまり上がらない気がします。

光星雲撮影時の問題点

今回の結果には満足していますが、問題もあります。

1つは追尾精度です。これは散光星雲に限ったことではなく、以前にも記載した内容になります。
今回使用したStar Adventurer GTiに1000mmを超える鏡筒はそもそも無理があり、追尾誤差のため星像が若干肥大し星雲の細かい構造も少しボケてしまいます。
以前AZ-GTi(経緯台モードでノータッチガイド)を使っていた頃からすると、オートガイドもでき視野回転も無いため露出時間を長くすることが出来ます(とは言え、あまり露出時間を長くすると歩留まりがかなり悪くなるので、長くても1分弱といったところでしょうか)。
露出がかけられることでCBPフィルターなどを入れることも可能になり、明るい被写体であればその姿を良く捉えることが出来るようになりました。そういう意味では状況は良くなったのですが、露出を1分弱に抑えたとしても追尾誤差によるボケは避けられません。
もう少し画質を上げるには、追尾精度を上げるか焦点距離をもっと短くしないとダメでしょうね。予算や置き場所の関係で長焦点用の赤道儀を買うことは当面無いので、今の機材で何とか頑張っていくしかないですね。

もう1つはフラット処理です。これは、今回の散光星雲の処理で気になったところです。

私は以前からフラットは撮らず、カブリ補正で誤魔化していました(最近はSirilのBackground Extraction→RBFを使っています)。視直径が小さい被写体だとカブリ補正だけで何とか誤魔化せていましたし、MAK127以外の鏡筒(FMA135、EVOGUIDE 50ED)でも周辺減光は少なめで且つ強度の落ち方が素直だからだと思いますが、視直径が大きい被写体などでも何とかなっていました。
ところが、MAK127はクローズアップレンズを付けた時の周辺減光が大きいだけでなく、副鏡の遮蔽があるためか強度の落ち方が素直ではない様です。そのため、カブリ補正しても同心円状のムラが出ます。
視直径が小さい被写体だと強引にフラットにしてしまえばいいのですが、視直径が大きい被写体だと無理やりフラットにすると星雲の強度分布自体もフラットになってしまいます。カブリ補正のパラメータやサンプル点の位置を色々と調整して何とかそれらしく出来たとしても、それが本来の星雲の強度分布を再現できているか若干疑問が残ります。
どうやら、ちゃんとフラットを撮って処理する必要がありそうなので、対応を考えないといけません。

まとめ

過去に散光星雲を「Sky-Watcher MAK127+Kenkoクロースアップレンズ」で撮ったのはM42くらいで、バックフォーカスを決めるための試し撮りでした。今回本格的に撮影してみて、上記の問題点はあるものの思った以上の結果で満足しています。
もちろんFno.が暗いためある程度明るいものに限られるとは思いますが、MAK127でも散光星雲の撮影は結構楽しめますね。他の散光星雲についても撮影してみたいと思います。