M8とM17
気が付くと前回の記事から1ケ月以上経っていました。7月以降は晴れる日も増えて梅雨明け以降は快晴が続いたため、DSOや惑星・月など色々と撮影したので処理していないものもまだある状態です。
そんな状況ですが、今回は既に処理が終わっているものの中からM8とM17について記載します。以前の記事でMAK127+Kenko クローズアップレンズで撮影した散光星雲を紹介しましたが、その続きの様なものになります。
光学系の構成
以前の記事では、MAK127とKenkoクローズアップレンズNo.5を組合せて焦点距離約1,200mm弱での撮影でした。撮影したM20やM16は、思った以上の結果だったので、引き続き夏の代表的な散光星雲であるM8とM17を撮影したという訳です。ただ、もう少し焦点距離を短くできないかと考え、今回はクローズアップレンズNo.4とNo.5を重ねて使ってみました。
初めてこの構成で撮影したものをTwitter(現在は「X」ですが、以下の投稿時はTwitterだったのでここではTwitterと記載)に投稿したものが以下になります。
7/6~7に撮ったM8とM9です。
— R77-Maabow (@R77Maabow) 2023年7月8日
お試しで、MAK127のレデューサーとしてKenkoクローズアップレンズNo.4とNo.5を重ねてFL=970mmにしてみました。
Fno.7.6と明るくなるのは良いのですが、周辺は収差で星像が伸び中央も解像が若干落ちます。とは言え、等倍で見なければそこそこ使えるかも🤔 pic.twitter.com/2zqx94PAD8
上記投稿にはFL=970mmとありますが、最終的にはFL=994mm※,Fno.約7.8で使っています。(※焦点距離はplate solveの結果を記載)
クローズアップレンズ2枚重ねといっても、この様に焦点距離は1,000㎜弱あり、鏡筒を載せているStar Adventurer GTi には荷が重く追尾誤差によるボケが生じてしまいます。また上記投稿にもある様に、この構成だと結像性能の劣化も少し大きめで、追尾誤差以外の要因でも画質低下が生じています。(何時になるか分かりませんが、結像性能については別途記事にしたいと思います。)
この様に画質としては今一つですがPC画面上で普通に見る分には結構使えそうなので、ここ1ケ月ほどはこの構成で撮影をしていました。
M8
上記Twitterの画像を撮ったあと、更に2日ほど撮り増しして露光時間は3時間半となりました。
これだけの露光時間だと強めの強調処理を行ってもザラザラにならず、かなり星雲のモクモクした部分が表現できたと思います。
あと、参考までに以下2つの画像も載せておきます。
左の画像は見ての通り星無し画像で、星雲の構造というか濃淡やモクモク感が良く分かるため、時々この状態で眺めてみたりしています。
右の画像は色調が違うバージョンで、Sirilで色補正(Photometoric Color Calibration)を行った直後の色調を大きく変えずに処理したものです。こちらの方が本来の色合い(?)なのでしょうが、私の好みの色合いはもう少し赤~マゼンタ系なので、処理後の画像はこの状態から色合をだいぶ弄っています。Sirilの色補正後の色調と自分の好みの色調の違いが大きめだと、好みの色に変えてしまって良いものなのか何時も悩みます。
あと、M8は昨年EVOGUIDE 50EDで撮影しており、その画像から同じエリアを抜き出したものも掲載しておきます。
こちらの露光時間は50分ほどです。Fno.5なので計算上は今回の光学系で2時間ちょっとの露光時間に相当するでしょうか。1時間半ほど少ない露光という条件での比較にはなりますが、結構良く写っていると思います。
焦点距離が違うのでもちろん細かい部分までは写っていませんし、まだこの時はフラットナーのバックフォーカスを最適化できてない状態だったので星像が少し伸びていますが、口径の差を考えるとかなり健闘しているのではないでしょうか。
M17
こちらの露光時間は1時間程です。
M17も昨年EVOGUIDE 50EDで撮影しています。少し小さく写るので長めの焦点距離で撮りたいと思っていました。今回の焦点距離だと、M17の右側や周辺の淡い部分は切れてしまうものの左明るい領域が丁度いい感じに収まり、期待通り非常に迫力のある画像となりました。
欲を言えばもう少し撮り増しして星雲のウネウネやモクモクを強調したかったのですが、上記のM8やそれ以外を撮影しているうちに満月期になってしまいました。タイミングが合えばもう少し撮り増ししたいと思います。
フラットの適用
私は今までフラットを撮らずにカブリ補正で誤魔化していましたが、以前の記事に「MAK127とクローズアップレンズの組合せだと、光学系のフラット特性が素直ではないためフラット補正が必要」と記載しました。特に今回の様にクローズアップレンズ2枚重ねだとカブリ補正では全く歯が立たなかったので、今回はフラット補正を行いました。
但し、毎回フラットを撮るのは面倒ですしLEDパネルなど光源も用意する必要がるので、取り敢えずPCモニターに適当な明るさのグレーパッチを表示して撮ったものを使い回しています。フラット画像の使い回しだとゴミなどの動くものの映り込みには対応できませんが、基本ベランダで撮影しているので撮影中にゴミの写り込みを確認して、必要あれば撤収時に光学系とカメラを付けたまま部屋まで持ち込んでフラットを撮ればいいかなと思っています。
今回撮影したフラット画像がこちらです(強度分布が見易い様にかなり強調しています)。
こんな感じで同心円状に複雑な分布になっているので、カブリ補正だけでは手に負えないのも当然でしょうね。
まとめ
今回、MAK127とクローズアップレンズNo.4&No.5という構成で撮った画像を紹介しました。
冒頭に記載した様に、この構成だと追尾精度以外に結像性能面でも画質低下が生じます。しかし私にとって1,000m弱という焦点距離は、所有している EVOGUIDE 50ED (FL=約250㎜)とMAK127直焦点(約1,500mm)の間を埋める貴重な存在となります(250㎜とはだいぶ間が空きますが…)。今回お見せした程度の画像が撮れるのであれば、私としては十分楽しめる構成だと思っています。
他にもこの構成で撮影した画像がありますので、次回紹介したいと思います。