撮影した木星画像で動画を作って遊ぶ

10月初めに良い天気が続いたあと、10月の後半までは天気が悪い日が続いていました。月や惑星であれば何とか撮影出来そうな日もありましたが、実際に撮影できたのは10月10日の深夜前後で、珍しく霧が出ていたため望遠鏡での撮影は諦めてコンデジで月を撮影しました。

霧越しの月と木星: 2022/10/10 22:35@自宅ベランダ
OLYMPUS SH-1 8mm(フルサイズ換算45mm) Fno.3.8 2s ISO400

月: 2022/10/11 2:28@自宅ベランダ
OLYMPUS SH-1 75mm(フルサイズ換算420mm)
動画で(31秒間)撮影したものを非圧縮AVI(930フレーム)に変換
AutoStakkert3で50%スタック, AstroSurfaceでWavelet強調

しかし、これ以外は撮影を行うことができなかったので、専ら木星の動画を作って遊んでいました。今回は、その内容について記載したいと思います。Twitterに投稿済みのものもありますが、お付き合いください。

作成した動画の概要

9月26日から10月2日にかけて、晴れてシーイングも良い日が続いたので惑星の撮影を行いました。

r77-maabow.hatenablog.com

このときの画像を使って以下3つの動画を作りました。機材構成などについては、上記の記事をご覧ください。

  • 木星の自転シミュレーション
    少し前に、JAXA所属の惑星科学者の方が作成された自転する木星のリアルタイム動画が公開されました。それを見て、自分で撮影した画像でやってみたいと思い、9月初めから中旬にかけて撮影した画像で作った動画を以前Twitterに投稿しました。今回、その時より良い画像が撮影できたので、改めて動画を作り直しました。

  • 約1時間の木星の雲(模様)の動き

    これは以下のツイート見て衝撃を受け、自分が撮った画像で真似をしてみたものです。


    以前、約2週間の間に撮影した4枚の画像で模様の変化を動画にしたことはありましたが、このツイートの動画は1時間45分の雲の動きです。しかも高精細な画像なので雲の動きも良く分かります。こんなに短時間でも雲の動きがはっきり分かるという事に、本当に驚きました。
    私が撮影したものの中で、9月27日0時から1時のものが時間的に長くショット数も多く撮影していました。元々はこれを使って次に記載している「自転と衛星(イオ)の動き」の動画を作るつもりでいましたが、上記のTwitterを見てしまったので1時間と短いですがどうしても試してみたくなりました。

  • 木星の自転と衛星(イオ)の動き
    上記9月27日0時から1時に撮影したものには、イオも画面に入っていました。イオも含めて動画にすると面白いかなと思い作ってみました。

以降、それぞれの動画について紹介します。

木星の自転シミュレーション

作成手順としては、WinJUPOSの[分析]メニュー→[地図計算]機能を使ってマップを作り、そのマップを[ツール]メニュー→[天体暦]の画像質感(テクスチャ)に設定し、画像シーケンスの保存を行います。
マップ作成は、9月27日から10月1日にかけて撮影したものをベースに5から7ショットをデローテーションした6枚の画像で行いました。ただ、一部撮影できてないエリアがあったので、1枚だけ9月6日に撮影したものが含まれています。これだけ撮影日が違うと模様がつながらないと思ったのですが、MAK127だとあまり細かい模様までは写らないため、それが幸いして特に違和感の無いマップになりました。

このマップを使って、木星の自転一回分を約1分半にした動画が以下になります。

この動画は結構お気に入りで、時々音楽をかけながらこの動画をボーっと眺めています。JAXAの方が公開した動画とは比べ物にならない画質ですが、自分で撮影した画像というのが良いですね。木星の自転だけでなく、右下の時刻が動くところも気に入っています。※表示されている「地理経度と緯度」は東京駅付近です。

約1時間の木星の雲(模様)の動き

ショット数が少なかったので、デローテーションした画像ではなく1ショットの画像11枚を2秒ほどの動画にして、それだと短いので同じものを4回繰り返した8秒の動画にしてあります。

目を凝らして何度も見ると、雲が動いているのが何とか分かると思います。時間が短いというのもありますが、やはり解像が不足しているので分かり難いですね。途中、カメラを交換したり火星を撮影したりで、それぞれ9分間と30分間の抜けがあり、急に動く部分があるのも残念です。

せっかくなので、マップではなく木星表面上(球体上)での動きになる様に、前述の[ツール]メニュー→[天体暦]の画像質感(テクスチャ)に設定してみました。ただし、普通に設定すると木星の自転で分かりにくくなるので、[天体暦]の時間は固定したままマップ(テクスチャ)だけ入れ替えました。こうすると、疑似的に静止軌道上から木星を見た状態になるので、雲の動きが分かり易くになります。こちらの動画も2秒だと短いので4回繰り返して8秒の動画にしています。

マップの動画は前述した9分と30分の抜けがある状態ですが、こちらの動画は抜け前後の画像から補完した画像を間に入れ込んで、少し動きを滑らかにしてみました。もちろんこういう表示にしても、目を凝らして何度も見ないと雲の動きは分からないのですが、地球からは見られない視点の木星をシミュレート出来たということで、ヨシとしたいと思います。

木星自転と衛星(イオ)の動き

上記動画を作った際にWinJUPOSの画像測定ファイルがあるので、その値を元に1ショット分の画像11枚をGIMPを使って位置合わせしました。それらを順番に並べたものと逆順にしたもので往復させたものを作り、3回繰り返して20秒ほどの動画にしています。

こちらの動画は、前述した9分と30分の抜けがあるままです(動きがカクカクしますがご容赦を…)。

今回、最初の自転シミュレーション以外の動画作成にはPIPPを使用しました。以前はGIMPでアニメーションGIFにしていましたが、特に雲の動きを動画にしたものは画質が落ちて見づらかったためで、PIPPで一旦非圧縮AVIを作成したあとにXMediaRecodeというフリーソフトでMP4に変換しました。MP4変換で画質は落ちますが、アニメーションGIFよりも少し見やすい様に思います。

所感

今回の動画作成で思ったことは、「最初から動画を作るつもりで撮影しておけば良かった」という事と「色調や解像感を合わせるのが大変だった」ということです。

1点目ですが、どうしても木星だけでなく火星や土星、更にはDSOも撮影したいので抜けが生じてしまいます。ほぼ等間隔で長時間の画像や木星全面の画像を得るためには、他の被写体は諦めて計画的に撮影する必要があります。私の場合、DSO撮影と惑星撮影で共通に使用する機材があるので、せめてDSOと惑星を同時に撮影できる様に足らない機材を購入した方が良いのでしょうね。

2点目については、撮影中のシーイングの変化も影響がありますが、私はピントが合っているか心配で撮影途中で何度かピント合わせ直すことがあるのでその影響が大きかった様です。幾つかピントが甘いものが混ざっていて、Wavelet強調の度合いを画像ごとに変える必要がありました。今回は、トラブルがありカメラを途中交換したため仕方なかったのですが、最初にピントの状態を確認するためのテスト撮影を行ってあとはピントを変えないなど、やり方を考える必要がありそうです。
色調については、今回カメラを変えたことが大きく影響しましたが、同じカメラを使いW/Bの設定を変えないように注意しておけば大丈夫でしょう。

その他、雲の動きなどは1ショットの画像で動画を作ったため位置合わせも大変でした。デローテーションする場合は、オプションで「画像測定の最適化」が指定できますが、当然ながら1ショット画像だとこの最適化はありません。
また、1ショット画像をそのまま動画にしてみて分かりましたが、「画像測定」で指定した位置・回転調整が結構ズレたものがありました。鏡筒がMAK127で撮影画像が小さいためだと思いますが、ほんの少し設定値がズレただけでマップにした際にかなりズレが目立ちます。やはりデローテーションを行った画像で動画を作った方が良さそうです。

まとめ

動画の作成は、通常の画像(写真)を得た後の副産物的な感じでやっていました。しかし、画像だけでなく動画も面白い表現の1つだと思う様になりました。DSOに比べると惑星は短時間で動くものなので、動画にすると面白いのも当然かもしれません。
今回、雲の動きや自転と衛星の動きなどは満足のいくものではなかったので「良い練習ができた」ことにして、次の機会(来シーズン?)にはちゃんと計画的に撮影したいと思います。また、木星以外についても動画を作ってみたいですね。