Kenko スカイメモS 購入

5月末に購入したスカイメモSについて記載します。長文ですがお時間のある方はご覧ください。

購入の背景

天文の趣味を再開して初の機材が、Sky-Watcher AZ-GTi+Mak127だったので、以降はAZ-GTiを経緯台モードで撮影しています。自動導入でプレートソルブも使えて天体の導入は非常に楽で、今まで知らなかった天体も色々撮影してきました。

しかし、経緯台は視野回転が起きます。更に、撮影の条件や個体差(?)で追尾精度がかなり悪い場合があり、1フレームの露出時間は通常8秒~16秒、Maxでも30秒にしています。そのためTotal30分の撮影でも100フレームを超え、私の貧弱なPCではSSDがすぐ一杯になりバックアップ用HDDもどんどん空き容量が減っていきます。
AZ-GTiは赤道儀モードにもできますが、経緯台モードの簡便さは捨て難く経緯台としては使い続けたい。ところが赤道儀対応のファームにすると、経緯台モードにしたときMak127のファインダー位置が逆になり非常に使いづらくなります。そんなこんなで、数年前から赤道儀が欲しいと思っていました。

購入検討

購入にあたり自動導入できるものも考えたのですが、とにかく値段が高いです。スカイメモSもオプションを含めるといい値段になりますが、アウトレットなどの活用で結構安く買える様です。載せる鏡筒も焦点距離250㎜までを考えていたので、買うならスカイメモSと決めていました。ただ、不安材料もありました。

  • 自宅ベランダでは北の空が見えないので、極軸合わせがうまくできるか?
  • 自動導入に慣れ切ったため、手動導入の難しさで使わなくならないか?

という点です。そこで、正月に帰省した際FMA135+ASI533MCPを持ち帰り、Astro R77(屈折赤道儀)にFMA135を載せて感触を掴むべく撮影をしてみました。

まず、極軸合わせはスマホの方位磁針アプリなどで適当に合わせ、数分撮影して星のズレと極軸の関係を頭の中で浮かべながら適当に調整した程度です(ドリフト法をちゃんと理解してなかったので適当です)。次に、天体の導入は近くの明るめの星を目視導入し、StellariumとSharpCapのライブビューを見比べながら目立つ星々を次々に辿ることで比較的容易に導入できました。

そうやって撮影した画像が、最初の記事に投稿した画像です。64秒露出で歩留まりは15/30と低かったものの、適当な極軸合わせとメンテしてない古い赤道儀なのでこんなものでしょう。他にもいくつか撮影してみて、まあ、大丈夫だろうという感触を得ました。その後、NINAのプラグインに Three Point Polar Alignmentというものがあることを知り、極軸合わせもきっと大丈夫と思い、購入を決意しました。

購入

その後、5月末に ケンコー・トキナーオンラインショップアウトレット店 のセールで、アウトレット品がさらに20%OFFになっていたので、ここぞとばかりに購入(有り難いことに、会員登録初回特典でさらに割引がありました)。ウェイトなどをSky-Watcher EQM用とすることで。総額で諭吉さん4人ちょいで買えてしまいました。

6月1日には全て納品。「傷あり」となっていたスカイメモSもよーく見ないとわからない程度の傷で、他の付属品、説明書も揃っていて何の問題もありませんでした。

購入したスカイメモS

ファーストライト

機材が揃った翌日、若干薄雲はありましたが早速使ってみました。鏡筒は上の写真とは違いますがFMA135、カメラはASI533MCPです。

極軸合わせは、最初NINAのThree Point Polar Alignmentにトライしましたが、予習不足でぶっつけ本番だったためかうまくいかず、この日はドリフト法で合わせました。(翌日、改めてやってみると上手くいきました。原因不明ですがうまくいったので良しとしています。)
次にM8&M20を導入しましたが、思ったより分かりにくいです。それでも周囲にある程度明るい星がある領域なので、あまり苦労せず導入できました。ただ、翌日M17~M16 辺りを撮った時は、結構手間取りました。どうも実家で試したとき楽にできたのは、天の川が肉眼で十分見えるレベルの暗い空だったための様で、自宅のベランダでは対象によってかなり難しいものもありそうです。これついては、ちょっと想定外でした。30分ちょっと撮影しましたが、歩留まりも60秒露出で23/31と実家で試した時よりはだいぶ良かったです。ガイドなしなのでこんなもんなんでしょうね。

結果画像

ファーストライトは動作確認がメインだったので、6/26から27にもう少し時間かけて撮影した画像を掲載します。

FMA135, スカイメモS, ASI533MCP 5°C Gain200 64s×41, Comet BPフィルター使用
DSS, SiriL, Starnet++, GIMPなどで処理。2022/6/26@自宅ベランダ

FMA135, スカイメモS, ASI533MCP 0°C Gain250 64s×37, Comet BPフィルター使用
DSS, SiriL, Starnet++, GIMPなどで処理。2022/6/27@自宅ベランダ

何れも、自分の中では非常に良く撮れたと思います。当然ですが視野回転もなく、Total 40分程度の露光でもフレーム数は少ないです。極軸合わせも慣れたせいか、この日は歩留まりも8割を超えました。

スカイメモSの追尾精度

上記撮影の際、ライブスタックした画像も保存していました。私の場合はSharpCapを無料ライセンスで使っているのでダーク減算無しです。そのため、ホットピクセルの軌跡が残っているので、これを元に追尾誤差を求めてみました。

ホットピクセルの軌跡(左:M8+M20撮影画像の一部、右:M16+M17撮影画像の一部)

この軌跡が、ピリオディックモーション起因のSin成分と極軸エラー起因の移動&回転成分の合成と考え、Sin成分をスカイメモSの追尾精度としました。上の写真だと右の画像がSin成分を取り出し易そうなので、そこからホットピクセルの画素位置を頑張って読み取ってExcelでグラフ化し、まずはExcel多項式近似で移動&回転成分相当を求めてみました。

移動・回転成分(極軸エラー成分)相当の推定

そして、その値を引き算したものをSin成分と仮定し、Excelのソルバーを使って y=A*Sin(x*B - C) というSinカーブで近似した結果が以下のグラフです。

Sin成分とSinカーブ近似

ソルバーにより求まった近似式の A(振幅)の値は、は3.65画素となりました。1画素相当の角度は対物の焦点距離から求めても良いのですが、この対物+センサの組合せでASTAPを使いプレートソルブした結果に1画素相当の角度が出力されているので、その値(0.001563°)を使います。あと、撮影したエリアの赤緯が大体-15°付近なのでそれも考慮すると、Sin成分の誤差は ±21.2″ となりました。これは平均値で、上のグラフの最大振幅でみると約6画素(±34″)くらいなので、この個体は大まかに言って20″~35″程度というところでしょうか。この値がピリオディックモーションそのものという訳ではないと思いますが、大体の大きさは表していると思います。

参考までに、AZ-GTiで撮影した際のホットピクセルの軌跡を掲載します。

AZ-GTiのホットピクセルの軌跡(左:16s×66,右:16s×79)

経緯台モードのため視野回転があるので、どちらも回転中心付近をクロップしたものです。経緯台だと対象の高度や赤緯/赤経などにより得意不得意はある様ですが、左右の画像を見て分かるようにかなり大きく違います。冒頭にも記載しましたが、右の様にいきなり大きく動いてしまう時があるので、単に対象の位置による得意不得意だけではなく個体差によるものだろうと思っています。
いずれにしても、スカイメモS購入により視野回転もなく1フレームの長時間露出も可能になったので、嬉しい限りです。

課題

課題は天体導入の簡略化です。これについては、Three Point Auto Polar Alignmentの様に撮影とプレートソルブを繰り返して目標の方向など表示出来ればいいなと思い、そんなソフトを作ってみました。作るのには苦労しましたが、試しに使ったところ結構使えそうです。これについては次回記事にしたいと思います。

まとめ

スカイメモSを購入して当初の目的も達成でき、課題も何とかなりそうです。しかもかなりお安く入手させてもらい、本当に大満足です。1軸ですがオートガイドもできることを考えると、スカイメモSを持っておられる方が多いのも頷けます。今後は、AZ-GTiと共に主力機材として活用していきたいと思います。