今更ながら11月8日の皆既月食の反省点など

11月8日の皆既月食から既に1ケ月以上過ぎてしまいましたが、当日の反省点を忘れてしまう前にまとめておこうと思います。また、月食後の記事掲載時点でまだ処理していなかった画像も少しだけ紹介します。

なお、前回記事はこちら↓です。

r77-maabow.hatenablog.com

前回記事以降に処理した画像

反省点はどちらかというと自分向けの内容でもあり文字が多くなるので、最初に画像の紹介から行いたいと思います。

地球の影から出た直後の地形クローズアップ

影から出たばかりの地形をクローズアップして撮影していました。以下の左がその画像で、右は比較用として満月(12月9日 3:15撮影)の画像から切り出したものです(※記載した時刻は左の画像を撮影した時のもの、左画像はMAK127, ASI224MC, UV/IR-cut、右画像はMAK127, ASI533MCP, UV/IR-cutにて撮影)。

アリスタルコス付近 20:55:39撮影

プラトープラトン)付近 20:59:23撮影

コペルニクス付近 21:05:46撮影

通常の満月と何か違いがあるかなと思って撮影したのですが、そう大きな違いは無い様です。強いて言えば、立体感が少ない感じがしてツルンとして見える気がします。

HDRっぽい合成

今回の月食では眼視も並行して行い、眼視だと画像と違って非常に色彩豊かなこと驚きました。その印象を画像にできないかと思い、明るい部分/暗い部分に合わせて撮影した2枚の画像を合成してみました。

露出とゲインが違う2枚画像の合成

結果的に、眼視の印象がなかなか表現しきれずちょっと残念です。眼視では地球の影の境界がもっとはっきり見え、皆既部分の色はもっと複雑で鮮やかだった様に記憶しています。ちょっと違うかもしれませんが、皆既部分はゴッホの自画像(リンク先はWikipedia)の様に、色んな色合いが混ざった様な印象を受けました。

単純にマスクを使った2枚画像の合成なので「HDRっぽい合成」と書きましたが、露出を変えた画像をもっと増やしてHDR合成するともっと見た目に近づくのでしょうか。

45枚の画像でタイムラプス動画

前回は26枚のタイムラプス動画でした。今回は未処理分を追加して45枚です。

それほど枚数が増えたわけではありませんし、時間間隔が等間隔でないのは同じなのであまり代わり映えしませんが、せっかく作ったので掲載します。以下の反省にも記載していますが、結構苦労しました。

反省点

次に反省点です。箇条書きにしてみると以下の7点になります。

  • 撮影画像の使い道
  • 極軸合わせ
  • 撮影時間間隔,撮影枚数
  • 露出&ゲイン設定
  • ピントズレ
  • 同時撮影
  • 掩蔽の時間(前回記事に記載済)

全部詳細に記載すると長文になってしまうので、幾つかは簡単に記載します。また、最後の項目は前回記事に記載済みなので省略します。

撮影画像の使い道

おそらく、これが最大の反省点です。多くの画像を撮影してそれらをどうまとめるか?をあまり考えずに撮影していました。もちろん、特定の(「皆既開始/終了」や「食の最大」、「天王星食の潜入/出現)などの)タイミングで撮影した画像は、各々1枚だけでも楽しめます。しかしそれら以外は、特にあてもなく適当な時間間隔で撮影をしました。

後日、他の方のブログやTwitterを見ながら「こんな画像や動画を作ってみよう」と思い、後になって「こうやっておけばよかった」という反省点が多々出てきました。
特に前掲のタイムラプス動画は、後述の極軸合わせの影響で処理が大変だったり、撮影時間が不等間隔でいまいちなものになったりしました。最初からこの手の動画を作るというつもりであれば、対応は変わっていた様に思えます。目的があってその次に手段というのが定石なのでしょうが、今回は目的(どういう画像/動画にしたいか)が不明確で、手段(撮影)が目的にすり替わっていた様です。

とは言え、今回の月食は天文復帰後初めてまともに撮影ができたので、この経験を次に活かせればと思います。

極軸合わせ

前回の記事に記載しましたが、月全体の撮影はEVOGUIDE 50EDをスカイメモSに載せて行いました。極軸合わせは前日に適当に合わせておいて当日同じ位置に三脚を設置するという簡易的なものとしました。そうしたのは、極軸が多少ズレていて追尾誤差が出ても、赤道儀なので視野回転は起こらないだろうから鏡筒を動かして画面中央に戻して撮影すればいいや.. と思っていたためです。

当日撮影していると、赤緯方向だけでなく赤経方向にも月がズレていきます。赤緯より赤経のズレの方が大きく月追尾になってないのかな?と思う程だったので、実際はかなり極軸がズレていたようです。その影響で、撮影した画像を見てみると(しっかり?)視野回転していました。
あるレベルまでは極軸を合わせておかないと、赤道儀でも視野回転することが身をもって理解できました。

視野回転があると、タイムラプス動画を作ったり、今回掲載できませんでしたが地球の影を示すような画像を作ったりする場合に問題となります。元々縦横のズレはやむなしと考えていましたが、視野回転の補正は面倒なので特にタイムラプスにする際は手間が激増します。しかも、前回記事のとき画像は25枚ありました。これをGIMPで1枚1枚位置合わせするのはかなりの苦行です。

途方に暮れていましたが、以前自作したスタッキングソフトに追加機能として実装したモザイク合成処理で回転も含めた位置合わせが出来ました。以下は参考ですが、そのソフトで位置合わせした際のズレ量を表示した出力の一部を掲載します。

左画像: 22:29:56撮影(リファレンス),右画像21:38:54撮影

ソフトの画面出力: リファレンスに対する各画像のシフト/スケール/回転角を表示
下線部が右画像の情報で、赤字部分が回転角

リファレンスとした左側の画像に対して、右の画像は視野回転が-1.4度あったことを示しています。
皆既中などは色も違うし皆既直前の大きく欠けた月がうまく位置合わせ出来ないかと思っていましたが、モザイク合成の処理で行っている位置合わせのアルゴがうまく働いた様です。

前回は上記の数値を使って手動で位置合わせをしました。今回は45枚もあるのでそれも面倒です。このソフトにデバッグ用として位置合わせ後の途中画像保存処理を入れていたことを思い出したので、その画像を使って比較的簡単に動画を作ることが出来ました。このソフトが使えなかったらと思うとゾッとします。

なお、スタッキングソフトに関する記事は以下になります。

r77-maabow.hatenablog.com

ただ、多少誤差が残っていて数枚は補正処理を行う必要があったので、やはり元画像に視野回転が生じない様に極軸はしっかり合わせておくべきでした。

撮影時間間隔,撮影枚数

これはタイムラプス動画を作るに当たっての反省点です。

当然ですが時間間隔がバラバラだと、タイムラプスにした際に動きがカクカクしてしまいます。また、枚数が少ないとスムースさに欠けた動画になるので、どの程度の時間間隔にするかは重要な項目です。
撮影の時はそもそもタイムラプスにしようとも思ってなかったので、適当に撮影したのは仕方がありません。しかし、動画にしないならもっと枚数は少なくても良かった訳ですし、惑星の動画作成で同じような反省をしていたので、深く考えずに多くの画像を漫然と撮影していた自分を振り返ると我ながら残念です。

露出&ゲイン設定

こちらはタイムラプスに限らず、複数枚の撮影を行う際の反省といった方が良いと思います。

今回の撮影では、いつも月を1枚撮りするのと同じ様にヒストグラムを見て大体これくらいという感じで露出とゲインを決めて撮影していました。そのため、1枚ごとに明るさが違い後処理のパラメータを画像ごとに変える必要があったので、これを多数行うのは大変でした。
またタイムラプスを作ってみて、皆既中の影にも多少の濃淡がありそれが動いて見えるのが面白いと思いました。しかし、露出とゲインが画像ごとに違うため、処理後の画像がその変化を正しく表現できているとは言えません。

動画/静止画に限らず、複数の画像を比べるような撮影は、露出とゲインは揃えておかないとダメですね。月食だと明るい部分/暗い部分に合わせた2種の露出&ゲインを決めて撮影するという感じでしょうか。

ピントズレ

ピント合わせは撮影開始前に行いました。途中からピントがずれていた様で、食の終了頃にピントがずれていることに気が付きました。以下3枚の画像は、夫々 撮影開始時、ピントズレに気付いた時、ピント合わせ直した時 の画像です。

出来るだけ差が無いように中央の画像は強めの処理をしているので分かり難いですが、よく見ると分かると思います。

EVOGUIDE 50ED でDSOを撮影するときにはあまり気にしたことがなかったのですが、夜になると急に冷える時期でしたしバローレンズを付けた撮影でもあるので、気温変化の影響が大きかったのでしょう。
ピントズレがあると強調パラメータも変わります。徐々にピントが変化した多数枚の画像は一括処理できなくて大変です。月食だと撮影間隔の時間でピント合わせし直すことも可能だと思うので、次回はちゃんとピントの状態も確認しながら撮影したいと思います。

同時撮影

今回は天王星食もあったので、並行してMAK127+ASI224MCで撮影し、SharpCapを1つ立ち上げ2台のカメラを切り替えていました。しかし、2台のカメラを同時にという手もあったはずで、そうするとタイムラプス用に時間間隔を固定した撮影をしながら別鏡筒でクローズアップ撮影もできたと思います。
そうしなかったのは、カメラ2台で同時撮影したときノートPCのバッテリーやCPU負荷などに問題ないかを事前確認しておらずぶっつけ本番を避けたためで、冒頭の拡大撮影をしたときや天王星食の撮影をしているときは、タイムラプス用の撮影は中断という形になりました。タイムラプス動画の皆既終了以降にフレーム抜けが多いのはこのためです。

これに関しては、最初の「撮影画像の使い道」もありますが、まぁ、単に事前準備不足ですね。

まとめ

前述しましたが、撮影画像の使い道をちゃんと考えてなかったことが最大の反省点と思っています。目的(どういう画像/動画をつくるか)を決めて手段(どう撮影するか)を考えていけば、必然的に、撮影枚数や撮影間隔、露出・ゲイン、などなども決まっていき、更にはPCの負荷やバッテリー,HDDの容量に問題ないかなども事前に把握できたはずです。
お堅い言い方をすれば「目的を明確にしてから目標を立て、それを計画に落として実行」ってことでしょうね。それって、以前仕事していた時によく言われたし自分も言っていたことです。

ただ、天文は趣味なので仕事みたいに考えるのではなく、気負わずに失敗や無理・無駄なども楽しみながらやりたいですね。仕事であれば失敗を繰り返さない様に「しっかりと振り返って次に反映」ですが、そもそもこの記事を次回読むかも怪しいので、ゆるーく反省して次回に望めればいいかなと思っています。

現在処理中の画像/動画

実は月食画像の処理はまだ続けていて、撮影した画像を使って地球の影を示す画像と地球の影を固定したタイムラプス動画を作ろうとしています。
やっていることは、Stellariumから月と太陽の座標を取得、地球の影の座標を求め座標変換などを行い、地球の影を原点とした月の座標を求めて撮影画像を配置する というものです。座標変換など試行錯誤しながらなので時間がかかっていてまだちゃんとできていません。計算法がクリアになればStellariumからの座標取得や、赤道座標系を画像上の位置に換算する処理などは以前作った以下のソフトで一度やっているので、多分自動化が可能だと思います。

r77-maabow.hatenablog.com

結局上手くいかないかもしれませんが、一通り終わったらまた記事にします。