慌ただしい惑星撮影

ここ数日、昼は青空が広がるものの、夕方から雲が増えて撮影するか迷ってしまう…という天気が続いています。7/30も同じような天気で星の撮影は難しそうな感じでした。しかしStellariumで確認すると、翌7/31の1:00頃から木星の大赤斑が見える様です。大赤斑が見えるとなると俄然やる気が出てきます。多少雲があっても頑張って撮影することにしました。

機材の構成

前回撮影したときは今シーズン初の惑星撮影で、昨シーズンどのような機材構成で撮影していたかをすっかり忘れていました。今回、忘備録として記載してこうと思います。

惑星撮影の際は、Sky-Watcher MAK127に フリップミラー、笠井トレーディング2.5倍バロー、UV/IRカットフィルター、ASI224MCを以下の様に接続しています。

バローレンズは、レンズ部分だけをEVOGUIDE 50EDに付属していた延長筒に取り付けています(下図左)。これをZWOのM42延長筒21mmを介してASI224MCに接続。延長筒の中にアメリカンサイズのUV/IRカットフィルターを42mm-31.7mmアダプターに付けてねじ込んでいます(下図右)。

UV/IRカットフィルターをこの位置に付けているのは、バローレンズの位置が撮影のたびに変わらない様にするためで、バローレンズをUV/IRカットフィルターに突き当ててからねじ止めする様にしています。この状態だとバローレンズからセンサーまでの距離が通常より近くなり、拡大率はおよそ2倍になります。
本来の2.5倍で使っていないのは、あまり拡大しない方がすっきり見える気がしているためです。単なる縮小効果かもしれませんが、2.5倍で撮影した画像と、拡大率を落として撮影した画像を(デジタル的に)拡大したものを見比べても、そう大きな違いは感じません。
多分、MAK127はFno.が11.8で、2.5倍にするとFno.は29.5とかなり大きくなってしまうので、いくらスタッキングして強い強調処理をするといってもFno.が20を超えると強調できる最大周波数は変わらないのかもしれません。(もしかすると、画像処理のやり方が悪いだけかもしれませんが…)
また、拡大率を上げると像が暗くなるので、フレーム数が稼げなくなるか又はゲインを上げてノイズが増えるかどちらかになります。特に土星を撮影する場合は、この影響が大きいというのもあります。以下は、拡大率をいろいろと試していた時の画像です。

ただ、火星の場合は明るさもそこそこあり、大きく写した方が処理も楽なので2.5倍で撮影することもあります。今回は、まだ視直径も小さくまだ模様もよく見えないので、火星の撮影は構成を変えずに2倍の状態で行いました。

撮影結果

前置きが長くなりましたが。今回の撮影結果です。

木星:2022/7/31 1:22@自宅ベランダ
Sky-Watcher Mak127+笠井2.5xバロー+ASI224MC, AZ-GTi, UV/IRカットフィルター使用
Gain 300~400, 露出 28ms~9ms, 2000~6000frameを13セット撮影, 50%をスタック 
AutoStakkert3, WinJUPOS, AstroSurface, GIMP で処理

この日のシーイングは良かったようです。しかし、雲が完全にないという状態は殆どなく、撮影中は雲の動きに伴って被写体の明るさが変動する場面が多々ありました。なかなか雲がない状態で撮影できないので、特に木星は何度も取り直しをして気が付いたら13セットも撮っていました。ただ、処理をしてみると皆同じ様な写りだったので、デローテーションには全数使ってみました。結構良く写っていると思います。

土星:2022/7/31 1:26@自宅ベランダ
機材は同じ, Gain 400, 露出 28ms~24ms, 8000frameを4セット撮影, 50%をスタック
AutoStakkert3, AstroSurface, 自作ソフト, GIMP で処理

土星は雲の通過の影響で5セット中1セットだけかなりボケてしまったものがありました。残りの4セットを加算平均して合成しました。出来としては、前回と同じくらいの感じでしょうか。

火星:2022/7/31 1:48@自宅ベランダ
機材は同じ, Gain 300~350, 露出 20ms~12ms, 8000frameを4セット撮影, 50%をスタック
AutoStakkert3, AstroSurface, 自作ソフト, GIMP で処理

火星も雲の通過の影響で4セット中2セットはいまいちな画像でしたが、もともと小さくしか写っておらず模様の見え方も大差はないので、4セットを全部を加算平均し合成しました。こちらは前回の方がよく写っていますね。

雲に邪魔をされて、土星、火星はそこそこでしたが、好シーイングのおかげで目的であった「大赤斑のある木星の撮影」は上手くいったと思います。

撮影は慌ただしかった

今回の撮影は雲が行き交う中の撮影となりました。余裕がなく、撮影中の空の様子は撮影していませんが、撤収後に空の様子を撮影してみました(木星と火星が写っています)。撮影を終了した直後くらいから、こんな感じで雲が減ってきました。撮影中にこうなってくれればいいのですが、天気には勝てません。

撮影しているときは、例えば、木星を撮影していると雲の厚い部分がかかってきて撮影を中断、横をみると土星付近は雲が少ないので即座に撮影対象を木星に切り替える... という様に、気まぐれな雲に翻弄され木星/土星/火星を行ったり来たりする必要がありました。
ただでさえ、AZ-GTiの追尾精度では惑星の撮影はノータッチと言うわけにはいかず、画面から対象が外れない様に常に監視して、かなり頻繁にSynScanで補正をしなければなりません。今回はそれに加えて撮影対象の入れ替えが何度もあり、本当に慌ただしい撮影でした。

やはり、雲に悩まされることのない快晴の夜に、落ち着いて撮影したいものです。