お盆休みの撮影(1日目)

8月11日から14日まで、実家に帰省していました。

昨年は満月期だったので撮影機材は持ち帰らず双眼鏡で眺めるだけでしたが、今回は新月期ということで機材を持ち帰ることにしました。九州・沖縄に長居していた台風6号も数日前に通り過ぎ、帰省期間中の天気はまずまずで12日と13日の夜に撮影を行うことが出来ました。

その時に撮った画像を2回に分けて紹介したいと思います。

持ち帰った機材

今回持ち帰った機材です。

  • 鏡筒:FMA135,カメラ:ASI533MCP,フィルター:CBP, UV/IR-Cut
  • 架台:スカイメモS+赤緯体 (微動台座&アリガタプレート)
  • その他: ACアダプタ(冷却用),モバイルバッテリー(スカイメモ用) ・・・など

あと、天体撮影のためという訳ではなく、ノートPC(+ACアダプター)とコンデジは毎回持ち帰っています。今回の撮影で使ったので一応記載しておきます。

実家は鹿児島(の大隅半島側)で、飛行機に乗っている時間は1.5時間ほどです。しかし、その前後の移動が夫々1.5時間ほどかかり、待ち時間などもあるのでトータルで片道8時間以上かかります。時間が長いだけでなく、途中乗り換えも多いので荷物が重いとかなり疲れます。

そのため50代終盤に入ってきたここ数年は、持ち帰る鏡筒は一番軽いFMA135で、架台は持ち帰らず実家にあるアストロ光学のR-77屈折赤道儀に載せて撮影していました。
しかし、この赤道儀は古くてメンテナンスもしてないためか追尾精度が悪く、撮影時の歩留まりは1/3を切るレベルです(オートガイドは出来ません)。今回は帰省の期間が短いので、この歩留まりではせっかくの暗い空なのに実質の露光時間が稼げないと思い、頑張ってスカイメモSも持ち帰ることにしました。

但し、重くなるので微動雲台とバランスウェイトは除外し、ウェイト代わりに赤緯体のアリガタについている3/8”ネジを1/4”ネジに取り換えてコンデジを取り付けることにしました。コンデジが軽いのでバランスは取りきれませんが、問題なく使えました。もちろん、三脚も荷物が重くなるので実家にあるカメラ用のものを使い、ガイド用の鏡筒やカメラも持ち帰らずノータッチガイドです。

また、モバイルバッテリーはスカイメモS用だけにして、ASI533MCPの冷却用には屋外コンセントがあるのでACアダプタのみを持ち帰りました。

機材構成の写真です。

持ち帰った機材
※自宅で撮影したもの。実際の撮影では実家の三脚を使用。

本当は双眼鏡も持ち帰りたかったのですが、出来る限り軽量化ということで今回は諦めました。

この様に最小限にしたつもりでも、実際に帰省してみると結構重かったです。自宅に戻る時は、上記機材の半分(と着替えやお土産など)は宅急便で送りました。

1日目の撮影

移動日(11日)の夜は疲れていたので撮影はせず、12日の夜が撮影初日でした。
ただ、この日は夜8時頃まで結構雲が出ていたので撮影は諦めていて、翌日何を撮ろうかと考えていた状態でした。ところが、10時頃に外に出てみると雲が全く快晴でした。そして流石に暗い空です。星が輝いて天の川もしっかり見えていました。美しい星空に見とれていると撮影時間が短くなるので、早速機材設置に取り掛かります。

庭のどこに置くかしばし悩んで、北極星が見えて、且つお向かいさんの外灯の光が生垣に隠れる場所にしました。ただし、その場所だと屋外コンセントからいつも使っている延長コードでは届かず、そのままでは冷却が出来ません。冷却用のモバイルバッテリーを持ち帰っていれば良かったのですが、前述の様に今回は荷物の軽量化優先で持ち帰っていません。家の中から使えそうな追加の延長コードを探す時間ももったいないということで、結局1日目は冷却なしで撮影することにしました。この辺は急遽撮影することにしたので、準備不足でしたね。

極軸合わせですが、普段自宅では北極星が見えないベランダで撮影をしているので、今回初めて極軸望遠鏡を使いました。しかし、初めて使うということで慣れておらず、明視野照明装置を持って帰るのをすっかり忘れていました。しかたなく、スマホのライトで何とか凌ぎました。
それよりも、微動雲台を持ち帰らなかったのが痛かったです。ただでさえ古い(中学の頃に買った)三脚で、雲台の動きがカクカクして合わせにくくてしようがありません。少し手こずって10分以上格闘したでしょうか、若干の妥協はありますが何とかセッティングできました。

被写体の導入については、以前自作したソフトを使いました(以下の記事参照)。

r77-maabow.hatenablog.com

最近はStar Adventurer GTiばかり使っていて自動導入に慣れきっていたので多少手間取りましたが、だんだん勘を取り戻してきて数分で導入は出来ます。
ただ、微調整は難しいですね。赤緯体は微動がありますが、赤経方向はスカイメモ本体に微動ボタンがあります(12x速らしいです)が、いまいち動き量が少なく強く押さないと動かない場合もあり、何度か操作しているうちに極軸がズレてしまうことがあるのであまり使っていません。やはり、赤経方向にも赤緯体と同じ様な微動装置が欲しいところです。

持ち帰るのを忘れた視野照明装置 と 赤経方向の微動ボタン

そんなこんなで、1日目に撮ったのは2対象のみでした。何時頃から快晴になっていたのか分かりませんが、撮影開始が遅く翌日も出かける予定があったので仕方ありません。

撮影結果

前置きが長くなりましたが、撮影した画像です。
最初に撮ったのは、はくちょう座のサドル付近で三日月星雲(NGC6888)も入れてみました。

はくちょう座サドル付近:撮影2023/8/12 22:28 @実家(鹿児島)
FMA135, ASI533MCP(冷却OFF), CBP,  スカイメモS(ノータッチガイド)
Gain=250, Exposure=90s, 40frames (1hr)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

もう1つ撮影したものが、定番の北アメリカ星雲(NGC7000)とペリカン星雲(IC5070)です。

アメリカ星雲&ペリカン星雲:撮影2023/8/13 0:37 @実家(鹿児島)
FMA135, ASI533MCP(冷却OFF), CBP スカイメモS(ノータッチガイド)
Gain=250, Exposure=90s, 41frames (1hr 1.5min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

何れも一昨年に自宅で撮影したことがありますが、やはり暗い空だと星雲の濃さが違いますね。気を良くして強調処理をやや強めに掛けてしまいちょっとザラザラした画像になってしまいましたが、自分の中では非常に満足のいく画像になりました。

撮影の様子

今回は、普段撮らない撮影風景を撮ってみました(スマホの性能が悪く、粗い画像で申し訳ありません)。ちょうど2枚目の画像を撮り始めたころのものです。

右側が実家で、同じく帰省していた姉が起きていたので窓から光が漏れています。この窓にはカーテンが無いんですよね。雨戸を閉めるのも面倒だったのでこのままにしていました。

また、実家の壁が明るく照らされているのは窓からの明かりだけではなく、お向かいさん(写真の向きとは逆の右後方にある家)の外灯の明かりです。これが結構強烈でかなり眩しいです。写真右の木やBSアンテナの影が壁に映っているので、部屋から漏れた光よりかなり明るいことが分かるでしょうか。また、この時間はお隣さん(左側の家)も就寝前の様で窓から光が漏れていて、これも結構明るいです。

こんな感じで、周囲の明るさに関しては自宅ベランダより環境は良くないのですが、空自体の暗さは段違いなので多少周りが明るくても、目が慣れてくると天の川が肉眼でちゃんと見えます。そして、写真の奥の方に行くと周囲の明かりが届かないので、射手座付近の天の川の濃淡が肉眼で十分楽しめます。

自宅では決して見られない暗い空なので、撮影中は庭のあちこちに移動しながら美しい星空を肉眼で堪能しました。双眼鏡を持って帰っていれば、もっと楽しめたでしょうね。因みに、この日はペルセウス座流星群の極大前でしたが、見た流星は2つだけでした。ただ、その1つはかなり明るい火球だったので、まあ満足といったところです。

参考までに、撮影中のSharpCapのキャプチャ画像を載せておきます。

25分ほどスタックした状態ですが、これで完成でも良いんじゃないかと思いながら撮影していました。周囲がいくら明るくても、空が暗いとここまで写るんですね。

翌日にダークを作成… そして次回につづく

1日目は非冷却での撮影でした。本来なら撤収前にダークを撮っておきたかったのですが、翌日予定があり早々に撤収したので、翌日所用が終わった後にダークをとりました。撮影時のセンサー温度は28~29℃。エアコンの効いた部屋であればそれくらいの温度になりそうということでダークを撮とってみたところ、ほぼ狙い通りにセンサー温度が29℃ちょっとのダークを取得できました。確認のため簡単に処理してみると、ホットピクセルもちゃんと消えてノイズも思ったほど酷くはなく一安心。

その後、1日目の反省を踏まえてちゃんと冷却して撮影できる様に、機材設置場所や電源の延長コードの長さ確認し、追加の延長コードの準備などを事前に行っておきました。2日目の撮影については、次の記事に記載したいと思います。

4月から7月にかけて撮った球状星団たち

ここ数回の記事で、Sky-Watcher MAK127にKenko クローズアップレンズを組み合わせて撮影した画像を紹介してきました。それらの撮影を行う中で、手持ちのクローズアップレンズ(No.4とNo.5)のどちら(または両方)を使った方が良いかや、バックフォーカスをどれくらいにするか(組み合わせる延長筒をどうするか)を検討するため、色々と構成を変えて試していました。

前回までに掲載した被写体以外に、小さな星が密集した球状星団であれば結像性能の確認になると思い数多く撮影したので、今回はその画像を紹介したいと思います。
なお、最終的にレンズと延長筒をどの様に組合せることにしたか等はいずれ記事にすることにして、今回は撮影した画像の紹介をメインにしたいと思います。

撮影した球状星団

球状星団は4月から7月にかけて撮影しており、数えてみると全部で11個(撮影回数は15回)でした。撮影日とレンズ構成、その時の合成焦点距離、撮影条件などを一覧にしたものが下表です。このうちM55とM53が7月2日の記事に掲載したものになります。

上表の合成焦点距離は、ASTAPでプレートソルブした時の画角から求めた値です。また、灰色の行は2回撮影したうち画像を掲載してないもので、黄色の行は2回分のRAWを処理した画像を掲載しています。その他※印を付けたものについては以下をご覧ください。

  • ※1) 5/5撮影のM10, M19はライブスタック画像を処理
  • ※2) Close-up Lens No.5の後にジャンク品のレンズ(古いカメラから取出したレンズ)を組合せて使用
  • ※3) Close-up Lens No.4を裏返しにして使用

結像性能の確認が目的と書きましたが、そうであれば被写体は同じものの方が良いはずです。しかし、元々そんなに厳密に確認するつもりはなかったこともあり、むしろ今まで撮ったことのない被写体を撮ろうというのが目的としては大きかったというのが実情です。
その結果、以前からメシエ天体を全制覇しようと撮影したものを表に貼り付けているのですが、その表が9個埋まりました。

撮影した画像

個別の画像はなく、今回は1つにまとめた画像を掲載します。以下、若干補足です。

  • 各画像は光学系の合成焦点距離が違うため、同一焦点距離相当になる様に個々の画像を拡大または縮小しています。
  • 各画像をトリミング(ASI533MCPフル画面3008x3008から1504x1504を抽出)して、それを4x3に配列して1つの画像にまとめたあと、更に全体を1920x1440にリサイズしています。
  • 11個の画像を4x3に配列すると1マス空くので、最後の枠(右下)には散開星団のM26を載せました(おまけです)。

11個の球状星団とM26
鏡筒MAK127, カメラASI533MCP, 架台SA-GTi
その他撮影条件などは前出の表を参照
(M26は前出の表のM14と同じで、撮影フレーム数は37)

こうして並べてみると、夫々に個性があることが分かって面白いです。ただ、そうは言ってもどれか1つを見せられてその名前が答えられるかというと、私には無理ですね。

各画像を見比べる際の注意

ここで注意ですが、夫々の大きさの違いがこの画像で正しく表現できているとは言えません。合成Fno.や露光時間など撮影条件の違いから元画像の明るさやS/Nが各画像で異なっており、それに伴いストレッチの度合が違うため、結果的に見かけの大きさが同じレベルで再現できてないと思います。

また、色合いについても、被写体の高度や方角の違による大気や光害の影響もあるでしょうし、処理した日も違うので色バランスもその日の気分で多少変わっていると思います。そのため、大きさや色合いなどは横並びで比較はできませんので、ご注意下さい。

参考までに、大きさについてステラリウムで表示される画像と比較したものをお見せしたいと思います。

以下はM3の比較です。

M3: 左:ステラリウムの画像、 右:4/29に撮影したもの

こちらについては、大きさはステラリウムの画像とほぼ同じになっています。
因みに、今回掲載した以外にも過去に球状星団は撮影していますが、殆どは露光不足のためか小さく見えるのですが、ほぼ同じ様な大きさで撮影できたのはこのM3が初めてかもしれません。

次にM5の比較です。

M5: 左:ステラリウムの画像、 右:5/3と5/26に撮影したもの

こちらは明らかにステラリウムの画像の方が大きいです。撮影画像の総露光時間はM3よりM5の方が長いのですが、M5はまだまだ露光時間が足らないのでしょうか。それともM5の方が周辺に微光星が多く、それが収差や追尾誤差でボケてしまい背景とノイズに埋もれてしまっているのでしょうか。

まぁ、その原因はさておき、今回の撮影画像が夫々の大きさの違いを正しく表現できていると言えないと書いたのは、こういうことです。尤も、ステラリウムの画像が大きさを正しく表現できているとは言い切れないでしょうね。

あと、色については、M3もM5もステラリウムの方が少し緑っぽい感じです。
色に直接関係する画像処理としてはSirilのフォトメトリック色補正を行っていて、そのままカラーバランスを大きく変えずに処理するとステラリウムに近い色合いになるのですが、何となく好みで少しカラーバランスを変えてしまうのでこの様な差になっているのだと思います。ただ、以下のM14の様に、ステラリウムの画像が全体的に黄色っぽいものもあります。

M14: 左:ステラリウムの画像、 右:7/24に撮影したもの

なので、私の処理が一概に特定の色(色相)にシフトしているという訳でもなさそうです。もちろん、色についてもステラリウムの画像が正しく表現されているとも限らないと思っています。

まとめ

ここ3か月に撮った11個の球状星団と、おまけでM26(散開星団)の画像を紹介しました。1つ1つ画像を見るのではなく、今回の様に並べて見るのも面白いと思いました。しかも、自分で撮った画像ですから、見ていて満足感もあります。

因みに、最初の方に記載したメシエ天体の表は、現時点ではこんな感じです(適当にExcelに貼っているだけなので、並べ方や体裁は気にしないで下さい)。

進捗としては75/110で68.2%といったところです。今回の球状星団撮影でだいぶ進みましたが、短焦点(FMA135や50mmのオールドレンズ)で撮影して画面の端にたまたま写っていたプアーな画像も含めていますし、撮影時期が天文復帰後で処理が拙い画像もあったりして、それらの撮り直しも結構やっているのでなかなか進みません。

後々この表の球状星団が全部埋まったら、それらを1つにまとめた画像を作ってみたいですね。まだまだ先の話だと思いますが。

M27とM57

前回の記事に引き続き、Sky-Watcher MAK127にKenko クローズアップレンズNo.4とNo.5を2枚重ねてレデューサーとした構成で撮影した画像を紹介します。

r77-maabow.hatenablog.com

M8,M17を撮影したあと、他に面白そうな被写体はないかと選んだものが惑星状星雲のM27とM57です。惑星状星雲は視直径が小さく、特にM57は視直径が小さいので本当ならばMAK127の直焦点(FL=1,500mm)か、クローズアップレンズ1枚(No.5でFL=1,200mm)で撮った方が良かったかもしれません。しかし、この構成でどの程度写るか見てみようという事で撮影してみました。

M27

7月24に撮影して仕上げてみると、総露光時間は36分でしたがかなり良く写っていました。X(旧Twitter)に投稿して多くの「いいね」をもらえて気を良くしたので、更に周りの淡い部分が写らないかと思い、2日ほど撮り増しして総露光時間は2時間半弱となりました。

また、この撮影ではガイドがかなり乱れてしまい、星像が流れるフレームが多かったので、星が丸に近いフレームだけでスタックしたもの(総露光時間40分程度)から星だけの画像を作り、2時間半の星無し画像と合成しています。

M27:撮影2023/7/24 2:57, 7/29 2:32, 7/30 2:36 @自宅ベランダ
MAK127+ Kenko Close-up lens No.4&No.5, ASI533MCP, CBP, SA-GTi
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s (以下3日とも同じ)
7/24: 48frames, 7/29: 71frames, 7/30: 73frames, Total 192frames (2hr 24mn)
※恒星は上記より追尾誤差の少ない50フレームのスタック画像から抽出し合成
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

2時間超の露光時間は自分にとって長時間露光の部類なのですが、周囲の淡い羽の様な部分を出すには露光不足の様です。何となく存在は伺えますがまだまだですね。
ベランダの視界の関係で撮影時間の半分ほどが薄明後だったので、試しにそのフレームを除いたもので処理してみましたが結果は変わりませんでした。しかし、星雲の明るい部分は十分満足できる結果です。

星雲部分のみを抜き出して、以前撮影したものと並べてみたものが以下になります。

過去画像との比較(同じ領域をトリミングし同じ大きさになる様にリサイズ)
左:2019/10/8撮影、右:今回の画像

左は以前MAK127に笠井トレーディングの1.25” 0.5xレデューサーを付けて撮影したもので、焦点距離は1,100mmちょっとと今回の構成より少し長めです。総露光時間が約16分と短いので淡い部分が写ってないないのは当然ですが、星雲内の青い部分と赤い部分の境界がボケていてなんとなく平面的な感じがします。

一方今回の画像(右)は淡い部分が写っているだけでなく、青い部分の細かい濃淡も分かり、その中に赤や白い雲がモクモクとしている感じが良く見えて少し立体的に見えます。過去画像から大きく進歩したと言って良いと思います。

一応、今回の星無し画像も掲載しておきます。

今回の星無し画像(星雲部分のみをトリミング)

M57

こちらは、ベランダからだとメイン鏡筒からはギリギリ見えるのですがガイド鏡の視野が壁で見切れてしまいオートガイドできなかったため、ノータッチガイドとなりました。

ノータッチガイドでしかもガイドが少し荒れ気味だったので、露出10秒でも少し星が流れます。そこでいっそのことラッキーイメージングで撮影しようと露出2秒,ゲイン450としてみました。処理はDSSで全フレームスタックしたもの(総露光時間は20分)と、Autostakkertで上位50%スタックしたもの(総露光時間は10分)の両方を使って行っています。

M57: 撮影2023/7/29 1:51 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko Close-up lens No.4&No.5, 
ASI533MCP(ROIで1504×1504を切り出して使用), CBP, SA-GTi
Temp.=0℃, Gain=450, Exposure=2s, 601 frames (20mn)
DSS(改造版), Autostakkert, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

M57はやはり小さいですね。こちらも、星雲部分のみを抜き出して過去画像と比較してみます。

過去画像との比較(ほぼ同じ領域をトリミング)
左:2019/8/17撮影、右:今回の画像

左の過去画像もMAK127に笠井トレーディングの1.25” 0.5xレデューサーを付けて撮影したもので、焦点距離は980mmで今回とほぼ同じです。カメラが今回と異なりASI224MCで、ゲイン500, 露出8秒×91フレーム(総露光時間12分)です。特にラッキーイメージングのつもりではなく、視野回転とガイドの乱れを回避するため短時間露出で高ゲインでした。

そして今回の画像(右)ですが、過去画像に比べるとラッキーイメージングの効果なのか、細部の濃淡が表現できている様です。

ただ、せっかく短時間露出で多数枚撮ったので、何とか細部を出そうと無理やり強調処理をした感はあります。過去画像にはリングの右下に2つの恒星がはっきり写っていますが、今回の画像にはちゃんと写っていません。Starnet2で星雲と分離できた恒星については、AstroSurfaceのデコンボリューションで処理したので過去画像より少しはっきり見えていますが、Starnet2で分離できなかった星は星雲に埋もれてしまったのだと思います。

この辺は、ガイドがかなり乱れていたことが影響しているのかもしれません(あと、壁で少しケラれていたのかも)。そう考えると、全体的には過去画像よりボケていたのでしょう。細部の濃淡が表現できたのは、ラッキーイメージングの効果よりも、総露光時間が倍ほどあるので強めに強調処理が出来ただけなのかもしれませんね。とは言え、過去画像からはだいぶ進歩したのではないでしょうか。

まとめ

前回に引き続き、MAK127とクローズアップレンズNo.4&No.5という構成で撮った画像を紹介しました。

今回は惑星状星雲で、最初に書いた様に視直径が小さいのでクローズアップレンズ2枚重ねの必要はなかったのですが、焦点距離が短くなる分Fno.は多少明るくなるので、長時間露光するにしてもラッキーイメージングにしても、多少有利に働いたのではないかと思います。
この光学系構成の確認という意味合いで撮影しましたが、過去のベスト画像を更新できて満足のいく結果となりました。

なお、今回掲載した過去画像は以下の記事に掲載したもになります。撮影条件などはこちらをご覧ください。

r77-maabow.hatenablog.com

実は、今回の構成に至るまでに色々とレンズ構成を変えて撮影を行っていて、これまで記事に載せた被写体の他に球状星団を多数撮っています。次回以降、紹介できればと思っています。

M8とM17

気が付くと前回の記事から1ケ月以上経っていました。7月以降は晴れる日も増えて梅雨明け以降は快晴が続いたため、DSOや惑星・月など色々と撮影したので処理していないものもまだある状態です。

そんな状況ですが、今回は既に処理が終わっているものの中からM8とM17について記載します。以前の記事でMAK127+Kenko クローズアップレンズで撮影した散光星雲を紹介しましたが、その続きの様なものになります。

r77-maabow.hatenablog.com

光学系の構成

以前の記事では、MAK127とKenkoクローズアップレンズNo.5を組合せて焦点距離約1,200mm弱での撮影でした。撮影したM20やM16は、思った以上の結果だったので、引き続き夏の代表的な散光星雲であるM8とM17を撮影したという訳です。ただ、もう少し焦点距離を短くできないかと考え、今回はクローズアップレンズNo.4とNo.5を重ねて使ってみました。

初めてこの構成で撮影したものをTwitter(現在は「X」ですが、以下の投稿時はTwitterだったのでここではTwitterと記載)に投稿したものが以下になります。

上記投稿にはFL=970mmとありますが、最終的にはFL=994mm※,Fno.約7.8で使っています。(※焦点距離はplate solveの結果を記載)

クローズアップレンズ2枚重ねといっても、この様に焦点距離は1,000㎜弱あり、鏡筒を載せているStar Adventurer GTi には荷が重く追尾誤差によるボケが生じてしまいます。また上記投稿にもある様に、この構成だと結像性能の劣化も少し大きめで、追尾誤差以外の要因でも画質低下が生じています。(何時になるか分かりませんが、結像性能については別途記事にしたいと思います。)

この様に画質としては今一つですがPC画面上で普通に見る分には結構使えそうなので、ここ1ケ月ほどはこの構成で撮影をしていました。

M8

上記Twitterの画像を撮ったあと、更に2日ほど撮り増しして露光時間は3時間半となりました。

M8:撮影2023/7/6 23:24, 7/24 21:53, 7/25 23:19 @自宅ベランダ
MAK127+ Reducer(以下に記載), ASI533MCP, SA-GTi
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s (以下3日とも同じ)
・7/6 : Reducer=Kenko Close-up lens No.5&No.4, Filter=CBP, 55frames(41mn)
・7/24: Reducer=Kenko Close-up lens No.4&No.5, Filter=CBP, 126frames(1hr 34.5mn)
・7/25: Reducer=Kenko Close-up lens No.4&No.5, Filter=QBP, 100frames(1hr 15mn)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

これだけの露光時間だと強めの強調処理を行ってもザラザラにならず、かなり星雲のモクモクした部分が表現できたと思います。

あと、参考までに以下2つの画像も載せておきます。

M8:(左)星無し画像,(右)色調違いバージョン

左の画像は見ての通り星無し画像で、星雲の構造というか濃淡やモクモク感が良く分かるため、時々この状態で眺めてみたりしています。

右の画像は色調が違うバージョンで、Sirilで色補正(Photometoric Color Calibration)を行った直後の色調を大きく変えずに処理したものです。こちらの方が本来の色合い(?)なのでしょうが、私の好みの色合いはもう少し赤~マゼンタ系なので、処理後の画像はこの状態から色合をだいぶ弄っています。Sirilの色補正後の色調と自分の好みの色調の違いが大きめだと、好みの色に変えてしまって良いものなのか何時も悩みます。

あと、M8は昨年EVOGUIDE 50EDで撮影しており、その画像から同じエリアを抜き出したものも掲載しておきます。

昨年撮影したM8(撮影画像からM8部分のみトリミング)

こちらの露光時間は50分ほどです。Fno.5なので計算上は今回の光学系で2時間ちょっとの露光時間に相当するでしょうか。1時間半ほど少ない露光という条件での比較にはなりますが、結構良く写っていると思います。
焦点距離が違うのでもちろん細かい部分までは写っていませんし、まだこの時はフラットナーのバックフォーカスを最適化できてない状態だったので星像が少し伸びていますが、口径の差を考えるとかなり健闘しているのではないでしょうか。

M17

こちらの露光時間は1時間程です。

M17: 撮影2023/7/17 0:07 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko Close-up lens No.5&No.4, ASI533MCP, CBP, SA-GTi
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 92frames(1hr 9mn)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

M17も昨年EVOGUIDE 50EDで撮影しています。少し小さく写るので長めの焦点距離で撮りたいと思っていました。今回の焦点距離だと、M17の右側や周辺の淡い部分は切れてしまうものの左明るい領域が丁度いい感じに収まり、期待通り非常に迫力のある画像となりました。

欲を言えばもう少し撮り増しして星雲のウネウネやモクモクを強調したかったのですが、上記のM8やそれ以外を撮影しているうちに満月期になってしまいました。タイミングが合えばもう少し撮り増ししたいと思います。

フラットの適用

私は今までフラットを撮らずにカブリ補正で誤魔化していましたが、以前の記事に「MAK127とクローズアップレンズの組合せだと、光学系のフラット特性が素直ではないためフラット補正が必要」と記載しました。特に今回の様にクローズアップレンズ2枚重ねだとカブリ補正では全く歯が立たなかったので、今回はフラット補正を行いました。

但し、毎回フラットを撮るのは面倒ですしLEDパネルなど光源も用意する必要がるので、取り敢えずPCモニターに適当な明るさのグレーパッチを表示して撮ったものを使い回しています。フラット画像の使い回しだとゴミなどの動くものの映り込みには対応できませんが、基本ベランダで撮影しているので撮影中にゴミの写り込みを確認して、必要あれば撤収時に光学系とカメラを付けたまま部屋まで持ち込んでフラットを撮ればいいかなと思っています。

今回撮影したフラット画像がこちらです(強度分布が見易い様にかなり強調しています)。

MAK127+Kenko Close-up lens No.4&No.5のフラット画像

こんな感じで同心円状に複雑な分布になっているので、カブリ補正だけでは手に負えないのも当然でしょうね。

まとめ

今回、MAK127とクローズアップレンズNo.4&No.5という構成で撮った画像を紹介しました。

冒頭に記載した様に、この構成だと追尾精度以外に結像性能面でも画質低下が生じます。しかし私にとって1,000m弱という焦点距離は、所有している EVOGUIDE 50ED (FL=約250㎜)とMAK127直焦点(約1,500mm)の間を埋める貴重な存在となります(250㎜とはだいぶ間が空きますが…)。今回お見せした程度の画像が撮れるのであれば、私としては十分楽しめる構成だと思っています。

他にもこの構成で撮影した画像がありますので、次回紹介したいと思います。

梅雨の晴れ間の撮影(その3) - MAK127で球状星団など -

前々回・前回の記事の続きで、今回が最後です。

r77-maabow.hatenablog.com

r77-maabow.hatenablog.com

今回は、MAK127で撮影した球状星団や惑星について紹介します。

M55、M53

まずは球状星団です。

この時期に球状星団と言えば、ヘルクレス座のM13を撮影される方が多いのではないでしょうか。しかし、自宅のベランダからは高度が高く上の階のベランダに隠れてしまい、撮影対象とはなりません。そのため、ベランダから見える過去に撮影していないものを選びました。

M55: 撮影2023/6/17 2:26 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi
 FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=64s, 36frames (38min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

M53: 撮影2023/6/17 23:06 @自宅ベランダ
MAK127 + Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi
 FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 62frames (46.5min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

巷では、針で突いた様な微細な星が密集している球状星団の素晴らしい作品を見かけますが、その様な作品とは程遠く星像が肥大してしまっています。前回も記載した様に Star Adventurer GTiには荷が重い超焦点撮影という事に加え、今回は高度も低くシーイングの影響も加わっているかもしれません。いずれにしても手持ちの機材では高精細な球状星団は望めませんが、遠目に見ればそれらしく見えるので球状星団はお気に入りの被写体です。今後もちょくちょく撮影したいと思っています。

あと、この2つの球状星団の大きさが全然違うので、その旨を以前ツイートしました。

ツイッターだと文字制限があるのでここで補足ですが、この2つの画像は僅かに表示倍率が違います。後々記事にするかと思いますが、実は2月ころからMAK127とクロースアップレンズを組合せに対して、バックフォーカスの最適化を行っている最中です。この2つの撮影の間でバックフォーカスを少し変えたので焦点距離が僅かに変動していて、プレートソルブの情報からすると倍率はM55の画像が3%ほど大きい様です。星団の大きさの差からすると誤差レベルですが、一応記載しておきます。

M83

M83は2月と4月にも撮影していて、今回は3回目です。

2月の撮影は、短い露光時間にも関わらず透明度が高かったためか結構淡い部分まで写ったものの、シーイングがかなり悪かった上にピントも少しボケていてボテボテの画像でした。そのリベンジとして4月に撮影したのですが、この日も露光時間が十分取れず且つ霞んだ空で周辺の淡い腕が殆ど写りませんでした。
今回の撮影ではCBPフィルターを付けて撮影したため4月よりはだいぶマシにはなったものの、やはり露光時間が短くて今一つ淡い部分が出ません。

露光時間が短いのは、機材のセットアップ(主に極軸合わせ)に時間がかかったり、ちょっとした機材トラブルなどが起きたりしたためです。そこは今後改善しようとは思いますが、なにせ南天で高度が低い天体なので今回が撮影できる最後の時期でした。今シーズンはこれ以上撮り増しできないため、とりあえずの成果物としてこの3回の撮影結果を使って仕上げたものが以下になります。

M83: 撮影2023/2/26, 2023/4/29, 2023/6/16 @自宅ベランダ
・2023/2/26 3:31 MAK127+close-up lens No.4, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
Temp.=-10℃, Gain=350, Exposure=30s, 52frames (26min) 
・2023/4/29 01:01 MAK127+close-up lens No.5, ASI533MCP, UV/IR-cut, SA-GTi
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=-5℃, Gain=250, Exposure=32s, 55frames (29.3min) 
・2023/6/16 21:56 MAK127+close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP, SA-GTi
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=0℃, Gain=350, Exposure=32s, 54frames (28.8min)
DSS(改造版), 自作スタックソフト, Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

上述した様に、バックフォーカスの最適化を行っているため撮影日によって焦点距離が違うので、全てのRAW画像をDSSで一度にスタックすることが出来ません。そのため3者をDSSで個別にスタックしておいて、4月分と6月分を自作スタックソフトで更にスタックして通常処理。その処理画像に、2月分を星無し画像にしてGIMPで手動位置合わせしてブレンドしてみました。

そうすることで、星はボケていない状態で淡い部分もそれなりに炙り出せた画像になったと思います。露光時間はトータル1時間半程度になりますが、それだけの画像になっているかは疑問です。しかし、色々小細工してこの位の画像にはなったので、そこそこ満足しています。

金星、木星土星

最後に惑星です。元々MAK127は1,500mmという長焦点の鏡筒なので、本来の被写体と言って良いかもしれません。

金星: 撮影2023/6/16 20:15 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=150, Exposure=4ms, 6500frames 50% Stack×3を加重平均
AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

金星は4月頃から時々撮影していますが、模様が出ないのでいつもこんな処理で良いのか?と疑問を持ちながら処理しています。

木星: 撮影2023/6/17 03:58 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=350, Exposure=10ms, 4000frames 50% Stack×4をデローテーション
AutoStakkert, AstroSurface, WinJUPOS, GIMP で処理

木星は今回が今シーズン初撮影です。

まだこの時期は、薄明が始まる頃になっても家のベランダからだと建物に隠れてまだ見えません。しかし、貴重な晴れ間なのでどうしても見たくて薄明開始から一時間ほど待ってやっと見ることができました。空はだいぶ明るくなっていたのですが、大赤斑が見えたので撮影も行ったという訳です。
明るくなってからの撮影という事もあり、細かいディテールまでは出てないのは仕方ありません。シーズン初撮影で大赤斑が見えているのでヨシとしましょう。

土星: 撮影2023/6/18 03:03 @自宅ベランダ
MAK127 + Kasai 2.5x barlow, ASI224MC, UV/IR-cut SA-GTi
Gain=400, Exposure=40ms, 8000frames 50% Stack と
Gain=470, Exposure=25ms, 8000frames 50% Stack を加算平均
AutoStakkert, AstroSurface, GIMP で処理

土星は先月今シーズン初撮影を行ったとき、輪の傾きがかなり浅くなっていてびっくりしました。今回は17日と18日の2回撮影し、シーイングが少し良かった18日のものを掲載しています。

まとめ

この撮影以降、この記事を書いている7月2日より前はずっと天気が悪くまともな撮影ができていません。梅雨なので当たり前なのですが、その梅雨の最中に2日間も快晴が続きそれが新月期且つ週末だったという事を考えると、この2日間は奇跡の晴天といっても良いかもしれません。おかげで、DSOを2つの鏡筒で撮影するだけでなく、惑星の撮影や眼視も楽しむことができました。

記事を書き始めた先週時点では撮影後の画像処理もあって結構お腹いっぱいだったのに、1週間たった現時点ではまたお腹が空いてきました。奇跡の晴天がまた来て欲しいというのは無理だとしても、できるだけ早く梅雨明けして欲しいものです。

梅雨の晴れ間の撮影(その2) - 久しぶりにFMA135で撮影 -

前回記事の続きです。

r77-maabow.hatenablog.com

今回は、タイトルに記載した通り久々にAskar FMA135をメイン鏡筒として撮影した画像について紹介します。

FMA135の使用状況と今回の被写体

FMA135は、昨年5月にスカイメモSを購入した直後にメイン鏡筒として2度ほど使って以降、惑星などが○○と接近したときや彗星など何等かのイベントがあった時に数回撮影した以外は、ほぼガイド鏡として使っていました。
非常に良い鏡筒なのにちょっともったいない状況が続いていたので、そろそろFMA135をメインで使おうと考えていたところに、いい具合に今回梅雨の晴れ間が訪れてくれました。

今回狙ったのは、さそり座のアンタレス付近といて座のスタークラウドにあるバンビの横顔です。どちらも人気があり、夏の天の川が撮影出来る頃になると皆さん撮影されるのではないでしょうか。

FMA135を購入する以前は、焦点距離が短い鏡筒はEVOGUIDE 50EDしかなく、これらの被写体に対しては焦点距離が長すぎるので撮影していませんでした。50mmのオールドレンズ(OLYMPUS F.ZUIKO 50mm F1.8)でトライしたことはあって、アンタレス付近についてはカラフルな星雲は全く写らず撃沈。バンビの横顔はそれなりに写すことは出来ましたが、50mmだとどうしても視野が広いためもう少しクローズアップした撮影がしたいと思っていました。

FMA135を購入して以降は、昨年の同じ時期にアンタレス付近を撮影し、何とかその姿を捉えたものの露光時間が短かくかなりノイジーだったので、今年は必ず撮り増ししようと決めていました。そしてバンビの横顔は、撮るタイミングがないままになっていました。

前置きが長くなりましたが、やっとこれらの撮影が出来るということで、6月16日から日付が変わった翌17日にかけて撮影を行いました。以降、それぞれについて記載します。

アンタレス付近

昨年は30分ほどしか露光時間が取れなかったので、今回1時間半ほど撮影してみました。ただ、今回分だけで処理してみると、昨年よりも写りが悪かったのが残念でした。どうも透明度が昨年より悪かった様です。それでも、昨年分と合わせるとトータルで2時間ほどの露光時間にはなるので、昨年分と合わせて処理してみました。

結果は以下の様の通りです。

アンタレス付近: 撮影2022/6/26, 2023/6/16 @自宅ベランダ
・2022/6/26 23:55 FMA135, ASI533MCP, CBP スカイメモS
Temp.=5℃, Gain=250, Exposure=64s, 30frames (32min)
・2023/6/16 23:07 - FMA135, ASI533MCP, CBP SA-GTi, 
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=0℃, Gain=150, Exposure=128s, 43frames (1hr 31min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

そこそこ写ってはいるのですが、2時間露光でもまだノイジーで色も何となくくすんだ感じがします。Twitterやブログなどで美しい画像を見慣れているせいか、自分としては不満が残る結果でした。そうは言っても、光害地でこれだけ写れば良い方かもしれません。まだ撮影のチャンスはあるので、今シーズンもう少し撮り増ししてみたいと思います。

バンビの横顔

撮影開始時点ではバンビの横顔を画面中央にしていたのですが、M17の一部が画面に入ったのでM17全体が入る様に少し画面を北にずらした構図に急遽変更しました。ちょうどバンビがM17を見つめているというイメージです。

バンビの横顔とM17: 撮影2023/6/17 0:59 @自宅ベランダ
FMA135, ASI533MCP, CBP, SA-GTi, 
EVOBUIDE 50ED+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
 Temp.=0℃, Gain=150, Exposure=180s, 15frames (45min)
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

もう少し明るく仕上げた方が、バンビの横顔が際立った様な気もしていますが、概ね狙い通りと言ったところでしょうか。

参考までに、50㎜のオールドレンズで撮影した画像も掲載しておきます。

いて座スタークラウド付近: 撮影 2021/6/11 0:07 @自宅ベランダ
OLYMPUS F.ZUIKO F1.8 (F4で使用), ASI533MCP(冷却OFF), 
OPTOLONG UHC + UV/IR-cut, AZ-GTi (経緯台モード),
Gain=300, Exp.=16s, 20framesのライブスタック×2をDSSでスタック (6min 40sec)
DSS, Starnet++, GIMP で処理

撮影したのは一昨年で、これはこれで気に入っています(※上記の撮影条件はちょっと怪しいかもしれません)。このように広い範囲の画像もいいですが、今回の様にクローズアップで撮るのも良いですね。

それにしても、天の川の中心付近は処理が難しいです。明るさだけでなく色合いなども含めてもう少し何とかしたい気もするのですが、どうすればいいのか今一つ方向性が分からないので今回はこの状態で一旦完成としています。後々、他の方々の作品を参考にして見直してみるかもしれません。

まとめ

今回久しぶりに、FMA135をメイン鏡筒として人気の被写体を狙ってみました。結果に対しては「満足した」とは言い切れないところはあります。今後撮り増しや再処理など行ったらまた記事にすることにして、今回は「これだけ写れば上出来」ということにしておこうと思います。

あと、今回初めてEVOGUIDE 50EDをガイド鏡として使いました。購入以来メイン鏡筒として使うことが多く、更には月の撮影や眼視でも活躍してもらっていますが、やっと本分であるガイド鏡としても活躍してもらいました。もちろん、ちゃんとガイド出来ました。特記するような事ではないのですが、一応初めての出来事なので文字にして残しておきます。

梅雨の晴れ間の撮影(その1) – MAK127で散光星雲 –

ここ2か月以上ブログを書くのをサボっていました。天文活動をしなかったということではなく、晴れた日にちょくちょく撮影を行っていました。主にテスト撮影を行っていたのでネタが無かった訳ではありませんが、その内容はまた別途記事にするとして、今回は6月16日の夜から18日明け方にかけて撮影した内容について記載します。

因みに、この日は梅雨の最中というのに新月期で週末に快晴というとても貴重な2日間でした。多くの地域で天候が良かった様で、Twitterでは「#天文なう」がトレンド入りするという珍事(?)もありました。

2日間の撮影で画像も10枚ほどあり、1つの記事にすると長くなるので数回に分けて記載したいと思います。今回は、6月18日未明にSky-Watcher MAK127で撮影したM20(三裂星雲)とM16(わし星雲)について紹介します。

M20(三裂星雲)

今までMAK127では、惑星状星雲や球状星団、系外銀河をメインに撮影していました。これはMAK127の焦点距離が長く(Kenkoクロースアップレンズとの組み合わせで1,200mm弱)、必然的に視直径が小さめの天体が被写体になるためです。
しかし、特に系外銀河などはかなり暗いので、Fno.が大きいMAK127での撮影は中々の難物です。貴重な梅雨の晴れ間なので、暗い被写体に時間をかけるよりも明るい被写体を1時間前後の露光時間で複数撮影した方が良さそうということで、明るめの散光星雲を被写体にしてみました。

M20は5月末に一度試し撮りしていて、露光時間は8分でしたが結構いい感じに撮れていたので、1時間程度の露光時間でかなりの画像になるのではないかという期待もありました。そして撮影した結果が以下の画像です。

M20: 撮影 2023/6/18 0:10 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi, 
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temperature=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 77frames(57.7min) 
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

結構良く撮れたのではないかと思っています。
明るい被写体だけあって、いつも画像処理に苦労する系外銀河などと比べると比較的楽に処理できました。また、若干の強調処理を入れても、ノイズが大きく目立つ様な事はありませんでした。
欲を言えば、もう少し青い部分を炙り出したかったのですが、流石にそうするにはちょっと露光時間が短かった様で、無理に炙り出すとザラザラになるのでこの位で止めておきました。

M16(わし星雲)

次に狙ったのはM16です。MAK127だと全体は収まりませんが、有名な「創造の柱」をクローズアップで撮ってみました。

M16: 撮影 2023/6/18 1:20 @自宅ベランダ
MAK127+Kenko close-up lens No.5, ASI533MCP, CBP SA-GTi, 
FMA135+ASI224MC, PHD2によるオートガイド
Temperature=0℃, Gain=350, Exposure=45s, 94frames (1hr 10min) 
DSS(改造版), Siril, Starnet2, AstroSurface, Neat Image, GIMP で処理

こちらも、非常によく撮れたと思っています。
Hubbleの画像とはいかないまでも、もっとディテールを出してカリッと仕上げたいのはやまやまですが、強調処理を強めるとノイズが目立ってしまったのでこの程度に止めました。もっと露光時間を増やせば、もう少し強調処理を強くかけられるのでしょう。機会があれば撮り増ししてもいいかもしれません。
ただ、後述しますが架台がStar Adventurer GTiでこの焦点距離だと追尾精度が追い付かないので、解像感はあまり上がらない気がします。

光星雲撮影時の問題点

今回の結果には満足していますが、問題もあります。

1つは追尾精度です。これは散光星雲に限ったことではなく、以前にも記載した内容になります。
今回使用したStar Adventurer GTiに1000mmを超える鏡筒はそもそも無理があり、追尾誤差のため星像が若干肥大し星雲の細かい構造も少しボケてしまいます。
以前AZ-GTi(経緯台モードでノータッチガイド)を使っていた頃からすると、オートガイドもでき視野回転も無いため露出時間を長くすることが出来ます(とは言え、あまり露出時間を長くすると歩留まりがかなり悪くなるので、長くても1分弱といったところでしょうか)。
露出がかけられることでCBPフィルターなどを入れることも可能になり、明るい被写体であればその姿を良く捉えることが出来るようになりました。そういう意味では状況は良くなったのですが、露出を1分弱に抑えたとしても追尾誤差によるボケは避けられません。
もう少し画質を上げるには、追尾精度を上げるか焦点距離をもっと短くしないとダメでしょうね。予算や置き場所の関係で長焦点用の赤道儀を買うことは当面無いので、今の機材で何とか頑張っていくしかないですね。

もう1つはフラット処理です。これは、今回の散光星雲の処理で気になったところです。

私は以前からフラットは撮らず、カブリ補正で誤魔化していました(最近はSirilのBackground Extraction→RBFを使っています)。視直径が小さい被写体だとカブリ補正だけで何とか誤魔化せていましたし、MAK127以外の鏡筒(FMA135、EVOGUIDE 50ED)でも周辺減光は少なめで且つ強度の落ち方が素直だからだと思いますが、視直径が大きい被写体などでも何とかなっていました。
ところが、MAK127はクローズアップレンズを付けた時の周辺減光が大きいだけでなく、副鏡の遮蔽があるためか強度の落ち方が素直ではない様です。そのため、カブリ補正しても同心円状のムラが出ます。
視直径が小さい被写体だと強引にフラットにしてしまえばいいのですが、視直径が大きい被写体だと無理やりフラットにすると星雲の強度分布自体もフラットになってしまいます。カブリ補正のパラメータやサンプル点の位置を色々と調整して何とかそれらしく出来たとしても、それが本来の星雲の強度分布を再現できているか若干疑問が残ります。
どうやら、ちゃんとフラットを撮って処理する必要がありそうなので、対応を考えないといけません。

まとめ

過去に散光星雲を「Sky-Watcher MAK127+Kenkoクロースアップレンズ」で撮ったのはM42くらいで、バックフォーカスを決めるための試し撮りでした。今回本格的に撮影してみて、上記の問題点はあるものの思った以上の結果で満足しています。
もちろんFno.が暗いためある程度明るいものに限られるとは思いますが、MAK127でも散光星雲の撮影は結構楽しめますね。他の散光星雲についても撮影してみたいと思います。